ニュー・アイドル・シネマ・パラダイス 『ヴィジット』

架空のラジオ番組の特別エピソードという体でやっております。



奏「あら? 今週のお題? 今から収録するの? ……ま、いいわ。
 お題は『自分の名前で韻を踏んでください』ですって」

涼「ライムってことでいいんだよね。 『藪から棒に松永涼』でいいか?」
梅「わ。はやい」
奏「そんなにすんなり出来るものなの? ええっと……ちょっと待って。ううーん……。
 『鏡合わせの速水奏』どうかしら」

涼「お。お洒落だね」
梅「え、そ、それじゃあ……
 『白坂小梅がきたからおいで。いますぐここへ、手の鳴る方へ
 ……な、なんちゃって」

奏「あら、素敵」
涼「おおー。いいね。いいじゃん」
奏「流石はヒップホップユニットの経験者ね」
梅「えへへ……照れちゃう……」

奏「それで、お題が映画とあまり関係ないような気がするんだけど、これから観る映画にちなんでるってことでいいのかしら」
梅「あ、うん。そう、だね」
涼「よっし。せっかくスタジオで観るんだし音量大きくしようぜ」
梅「じゃあ、明かりも、ちょっと落とすね?」
奏「……好きにしてちょうだい。あなたたちと映画観ると、いつも受け身になっちゃうわね」



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いまどきの13才。




梅「に、『ニュー・アイドル・シネマ・パラダイス』へようこそー。
 この番組、は、映画好きなアイドル三人が、好きな映画、を、好き勝手に語る番組です。
 映画好きなひとも、映画好きじゃないひとも、ひとじゃないひとも、聞いてくれたら嬉しい……です。
 そ、それで、今月は、私の好きに選んだ大好きな映画、を、テーマに語ってます。あ、わ、私っていうのは、私、白坂小梅、と」

涼「松永涼と」
奏「速水奏の」
梅「三人でお送りしてます。それで……えっと……?」
奏「……あ、そうね。ええと……今週は’、小梅のおすすめの映画を収録直前に観て、その理由が……じゃあないわね。その、今週のテーマは」
涼「ダメだ。奏が進行力をなくしている
奏「……いいわよもう進行とか。そうね。ちょっとだけおさらいが必要なのだけど、先週の放送で私と涼がそれぞれにちょっと個人的な感想を言ってるのだけど」
涼「ああ、うん。そうだね」
奏「涼は自分がなんて言ったか、覚えてるかしら?」
涼「……おばあさんが敵だとなんだか怖くなる気がするって。奏は?」
奏「……子供が被害者になると余計に怖くなる気がするって」
梅「えへへ……」
奏「ハイ。そんな感想を漏らした私たちにオススメと、小梅が今週のテーマに選んでくれたのが、老夫妻がとっても怖い、子供達が酷い目にあうホラー映画『ヴィジット』ね」



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涼「ほんとに、イイ趣味してるよなあ。小梅。本当に」
奏「定期的に『そういえばこういうコだった』て思い出させてくれるわよね……」
梅「えへへへ」
奏「えっと、説明しておかないとリスナーの皆には状況がわかりづらいかしら。
 順に話すと、先週の収録が終わったときに、『おばあさんだと怖くない』『子供が被害者だと怖い』という感想を聞いた小梅が、ぜひとも次のテーマにしたい映画があると提案をしたんだけど、私と涼はそれを観てなかったのね。
 ところが今週はお互いに予定があって観る時間を用意できそうになかった。そこで、この収録前に三人で一緒に観ることにした……という展開よ」

涼「つまり鑑賞したてホヤホヤなわけだ。奏がグロッキー入ってた理由、わかってもらえたかな?」
奏「あなただって見終わった直後は相当だったじゃない」
涼「だってさあ。私がおばあさんが敵だと怖くないっていった理由がさ……おっと。ネタバレはいけないね」
梅「ひ、秘密は守らないとダメって……ブルース・ウィリスさんと約束も、したしね……」
奏「それは別のシャマラン監督作品じゃない? まあ、ある意味じゃシャマラン作品という時点でネタバレみたいなものかしら」
涼「あの監督さん、もう偽名で作品撮った方がよくないか? 言い過ぎだろうけどさ」
梅「ふふ。た、楽しんでもらえたみたいで、嬉しい、な……」
奏「貴重な体験をさせてもらえたのは事実ね」


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「出たがり」でもちょっと有名なシャマランさん。



涼「そういや、あらすじの紹介が終わってないね?」
奏「もう。本当に進行がめちゃくちゃじゃない。

 『ヴィジット』は2015年制作のホラー映画。『シックス・センス』で華々しいハリウッドデビューを果たし、続く作品でも精緻な伏線とサプライズに溢れたシナリオ、何よりも美しい映像で熱狂的なファンを得ているM・ナイト・シャマランの監督作品。その一方で、最低映画賞とも称されるゴールデンラズベリー賞の常連にもなっていた同監督の、その汚名を雪ぐ原点回帰的作品とも讃えられる一品。
 とのこと」

涼「ストーリーの方は……まあもう、じいさんとばあさんがすごく怖い、子供たちが怖い目にあうホラーでいいような気もするけどさ。えーっと。

 主人公は15才の姉と13才の弟。学校の休みを前に祖父母からこっちで過ごさないかと提案を受ける。最初に早速言及されるんだけど、母親がこの祖父母の元から駆け落ちという形で喧嘩別れをしてて、ずっと交流がなかったんだよね。そこで、映画監督志望なお姉ちゃんが、両者の中を取り持つためにも祖父母の元で一週間の休暇を過ごすと決めて、その様子をドキュメンタリーとして仕立てることを決める、と」

梅「い、いいこ、だよね……」
涼「だね。優しいし、行動力があるのもいいよな。お話的にいえば、えっと、POVだっけ? あの、ブレアウィッチプロジェクトとか、クローバーフィールドとか」
梅「パラノーマル・アクティビティとか、ノロイとか……」
奏「Point of Viewね。ハンディカムやスマートフォンで撮影した風をよそおう……要するに撮影する登場人物の視界でお話が進むタイプの撮影方式、かな」
涼「そうそれ。ああいう感じの撮り方をする理由にもなってるしさ」
奏「正直なところPOV形式の映画には食傷気味な気もするのだけど、ヴィジットの場合はいい感じにPOVの効果がちゃんと効いてた感じね」
梅「えっと、こ、怖くても、ドキュメンタリーを撮る、って動機があるから、自分から怖いものに近付かないといけないところ……とか?」
奏「それもだけど、今回の場合は、怖いという体験がとても主観的だからかしら。なんて言えばいいのかな……お話の核が『おじいちゃんとおばあちゃんの奇妙な行動が、老人性痴呆からきてるのか、それとも何か別の理由があるのかわからなくて不気味』というところにあるじゃない?」
涼「ああ、そうだな。超少子高齢社会を迎える日本にとっても他人事でない話だ」
奏「ニュースで聞いたそのまんまみたいなコメントね」
涼「ニュースで聞いたそのまんまを言ってるからな」
奏「私たちにとっては身近な問題かも知れないけど、少なくとも、それまで祖父母と交流のなかった15才と13才にとってはそうじゃないみたいよ。
 ご高齢の方と一緒に暮らしているひとにとっては『ああ、おじいさん、耳が遠くなっちゃってるから……』で済ませてしまうような『おじいちゃん! って大きな声で呼びかけているのに、まるでこちらを無視したように小屋の中に入ってしまう』という行動が、なんだかとても意味深で不気味なものに映っちゃう」

梅「うん。うん……どのあたりまで、もうおじいちゃんだからなのか、どのあたりまで、なんだかおかしいひとなのか……なんだかわからない感じの怖さで、ずっと不安、だよね」
涼「そういえば、アタシももっとずっと小さかった頃はおじいちゃんおばあちゃんってちょっとだけ怖い存在だったな。優しくしてくれたはずなのにさ」


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祖母と祖父を持たない人間はいまんとこいない。


涼「先に言っておきたいけどさ。この映画って割と人を選ぶところがあるよな。好みが分かれるっていうか」
梅「え、あ……うーん。そう、かな」
涼「ああ、アタシは割と好きだけどさ」
奏「私も好きな方よ? まあ、人に勧められるかどうかっていったら別の話だけど」
梅「そ、そう? それなら、良かった、です。えへ」
涼「アレだぞ小梅ー。今さら一緒に観た映画が好みじゃなかったからって感想言うのを遠慮するような仲でもないだろー?」
奏「それに、元々小梅の誕生日のためこういう企画してるんだから。誕生日のおんなのこなんてこの世で最もわがままが許される存在よ?」
梅「え、えへへ……あ、ありがとう……」


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誕生日ケーキではないけれど。


涼「で。話を戻すと、この映画って割と好みが分かれそうだよな」
梅「え。うーん、そう、かな」
涼「小梅はホラー映画全肯定とかいうすごいメンタル持ってるからアレだけど。
 なんていうか、見終わった直後はさ、じいちゃんばあちゃんのキャラクターがなんか途中から変わってるような気がしたんだよな。そんな性格だったか? って」

奏「それは私も少し感じたわね。でも、改めて考えると……」
涼「そうなんだよな。変わっていく理由がちらほら思い当たる。伏線ってやつだよね」
奏「シャマラン監督はもともと『後から思うと、そういえば』みたいな伏線が特徴にある監督だけど、今作の場合は、理由がある、ということがなんだかリアリティに繋がってる気がするのよね」
涼「リアリティ……リアリティかー。あるような、ないような。ちょっとピンとこないんだけど」
梅「り、理由があるってことは、本当に起こるかもしれない……みたい、な?」
奏「そうね。そんな感じかしら。POVで撮影した由縁もそこにあるのかなって勝手に思ってるんだけど、現実にギリギリ起こりえるリアリティ、が、制作上の中心にある気がしない?」
涼「うーん。そう言われれば納得できる部分が色々あるかな。
 でもそのへんって難しいよな。頭ではわかってても感覚で理解できない部分とか、後から思い返して理解できても、後からじゃ遅いんだよー映画を観ている真っ最中に理解できてないと意味ないんだよーみたいなさ」

奏「私はそういう映画、割と好きなんだけど」
涼「そう。だから趣味が分かれそうってね」
奏「後は、現実であり得そうだから、お話そのものが小作りってところもあるのかな」
涼「そこは……まあ、それぞれかな? いやだって、怖いだろ。どこまでおかしいのかわからないじいさんばあさんが、だんだん、もっとおかしくなってくような気がするのに同じ屋根の下だぜ?」
奏「うーん。それはそうね。実際怖かったし」
梅「怖かった、ね」


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無謀な好奇心も子供の特権かしら


梅「……不思議かなってちょっと思うのは.……他人とそうでないひとって、どうやって区別が付くんだろう。
 おじいちゃんとおばあちゃんって、血、は繋がってるけど……でも、この映画みたい、に、初めて出会ったひとだと、血は繋がってても、それでも、他人とあんまりかわりない、よね?
 でも、すぐに仲良くなれたけど……でも、なんだかどんどん……変だな、怖いなってことが重なって……日が進んでいくごとにまた他人みたいにみえてきて、他人っぽくみえればみえるほど怖い存在になっていっちゃう」

奏「そう。そういう話よね。確かに不思議な気もするわね。私たちは『おじいちゃんとおばあちゃんなら安全だろう。孫たちに危害を加えないだろう』っていう前提を、知らず知らずのうちにもってこの映画を観ているのだけど、この前提ってどこまで信頼できるものだったのかしら。
 この映画の本当の怖さってそこなのかも知れないわね……『肉親なら大丈夫、という神話』がどれだけただの思い込みなのかを突き付けられるような」

梅「……うん。怖い……このひとといたら、ほっとできる……って思ってたひとが、本当は大丈夫じゃなかったらなんて、本当に起きたら……足下から壊れちゃうみたいな怖さだと、思う……」


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お互い信じ頼りあうと書いて信頼関係。



涼「あんまり茶化したくないけど、だいぶマジなトーンになってきたね」
奏「そういう映画といえばそういう映画だし、まあちょっと考えすぎな気もするかな」
涼「そうだな。でも、割とそういう感じの映画ってことでいいと思うぜ。
 アレなんだよな。アタシは小梅と奏よりちょっとだけ人生のセンパイだからさ、他人とそうでない人間の区別の仕方、わかってるつもりだぜ?」

梅「え、涼さん、すごい」
奏「興味深いわね。拝聴しましょうか」
涼「簡単だって。結局、自分の為に体張ってくれるかどうかさ。どれだけ付き合いが短くったって、血が繋がってたってそこのところ次第だよ。
 この映画でも、お姉ちゃんがさ、おばあさんがどれだけ他人にみえても、母さんのことを今どう思ってるかってインタビューを撮ろうとこだわっただろ? アレもなんていうか、奏風にいえば『愛』のために体張ってたわけだ」

梅「あいー」
奏「ちょっと待ってそれ私風なの?
 まあ、それはいいとして。確かにあのインタビューシーンは二人の立場をくっきり分けているような気がするわね」

梅「そういう意味、なら……あの、おじいちゃんおばあちゃんも、お互いの為はずっと思い合ってた……よね。お孫さんを呼んだのも、完璧な休日にするためだって」
奏「あれは愛と言うよりもエゴのようにも感じるけど……でも、そこを区別するのは野暮かしら。
 祖父母と母との愛、母と姉弟との愛、姉弟と祖父母との愛。あるいは、離婚していった父親との? それぞれの関係性も確かに、そこかしこで強調されているようには感じるかな」

涼「アタシとしては、お姉ちゃんと弟くんの姉弟愛も忘れたくないね」
梅「あいー」
奏「なんだかこの番組って、結論が『やっぱり愛』てところに落ち着きがちじゃない?」
涼「映画という娯楽がヒトを映す作品である以上、それは普遍のことさ。すごい適当に言ったけど」
奏「なかなかのご高説ね。
 でもまあ……それなら、お母さんが最後に言った言葉も、結びの結論として言っておかなければならないことだったんだなって感じるわね」

涼「潔癖症も治ったしね」


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愛ゆえに。愛あらば。


奏「さて。今宵のニューアイドルシネマパラダイスもエンドロールの時間ね」
涼「小梅誕生日特集も次で最後かー。ま、また来週な」
梅「やっつぃー!」

ニュー・アイドルシネマ・パラダイス 『死霊館』

架空のラジオ番組の特別エピソードという体でやっております。


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スピンオフの多さもアメリカンホラーらしい?




梅「え、え……と、今週のお題は……『200分越えの映画で、最初に思いついたもの』
 ええ……? えっと……い、一回パスで……」

涼「一番好きなもの、じゃなくて、最初に思いついたモノってあたりに配慮を感じるね」
奏「まあ、そうかもね。一番好きなのは何かって訊かれたら、簡単には答えられないもの。
 それじゃあ私は……『愛のむきだし』かな」

涼「んー。そうだなあ。アタシは『ベン・ハー』で」
梅「えええ……? えっと……『グリーンマイル』って200分あった……かな?」


涼「ところで、ニューシネマパラダイスって誰か言わなくていいのか?」
奏「アレは特別完全版じゃなきゃ200分越えてなくなかった? まあ、私はそっちの方が好きなんだけど」
涼「おっと、それはともかく。そんなわけでニュー・アイドル・シネマ・パラダイスのお時間です、と。
 この番組は、松永涼と」

奏「速水奏と」
梅「白坂、小梅の」
涼「三人の映画好きアイドルが、好きな映画を、好き勝手に語るっていう番組なんで、リスナーも好きに聞いてくれれば嬉しいな。
 で、今月は小梅誕生日おめでとー!

梅「わーい」
涼「まあ28日なんでまだ先だけど。おめでとー記念として、今月は小梅特選のホラー映画特集でお送りしてるぜ」
奏「それで、第二週にあたる今夜のテーマは?」
梅「え、えっと、ジェームズ・ワン監督の死霊館、です」


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奏「死霊館は2013年にアメリカで公開されたホラームービーね。『ソウ』で一躍有名を馳せたジェームズ・ワン監督が新たに手がけるシリーズの第一作。実在する超常現象研究家のウォーレン夫妻が、実体験ながらもあまりにも邪悪でありこれまで他言をしていなかったエピソードの映画化、と、かなり大きく振りかぶった感じの宣伝文句ね?」

涼「片田舎の一軒家を購入した一家。引っ越した直後から愛犬の突然死、妻に浮かび上がる謎の痣、娘は夢遊病を発症し、末妹は何もないところに話しかけ、時計の針は毎晩同じ時間に止まり……順々に異様な現象が起こり始める。と」


梅「あらすじ、で、聞いてみると……お話そのもの、は、割とよくある……感じ、かな?」
奏「そうね。ある意味では王道なんじゃないかな。悪魔憑きものという意味でもアメリカの古典になるのかしら」
梅「あ、うん。たぶん、そうだと思う……アメリカのホラーって、根っこに『エクソシスト』があるって……きいたことがある、ような……」
涼「大流行したんだっけ? なんか、宇宙人の目撃報告が『未知との遭遇』の流行後に激増したーみたいな話を思い出すね」
奏「それだけマスの力が強い国とも解釈できるし、アメリカという国にとって映画がどれだけ文化の中央にあるか……という話にも感じるかしら」
涼「まあでも、歴史的ーとか文化的ーとかにはあまり迂闊に触れたくないな。印象だけで語っちゃうと専門家サンに失礼かも知れないしさ」
奏「『専門家』と書いて『うるさい方々』と読むのかしら?」
涼「言ってない言ってない。読まなくていいから」
奏「ともかく、あらすじは古典的、という部分は覚えておきたいわね」


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エクソシスト』の最も有名なシーン(といって選ぶのに相応しいかどうか)



涼「それで、映画そのものの感想なんだけどさ」
奏「ええ」
梅「うん」
涼「一言でいうと」
奏「一言でいうと?」
涼「怖い
奏「そうね。怖い
梅「……えへへ」
涼「すっげー怖い
奏「本当に怖い
梅「……えへへへ」
涼「このやろー小梅ー! なんか嬉しそうだなー!」
梅「きゃー! でも、えへへ。ほ、ホラー映画の、感想が、『ちゃんと怖い』って、やっぱりいいよね。よね?」
奏「そうでしょうね。制作側にとっても何よりの褒め言葉だと思う」
涼「そういや、アタシは小梅に勧められた時にそのまんま一緒にみたんだけどさ。奏はこの収録の為に一人で観たんだろ?」
奏「まあ、そうね」
涼「……平気だったか?」
奏「……それは、まあ。映画はみんなで観る面白さもあるけど、本来は一人で観るものだって思ってるもの。映画館が素敵な空間である理由の一つはそれよ? 同じホールのなかで並んで座って一つのスクリーンをみつめてる。けれど、誰も言葉を交わさず、暗闇のなかに孤独でいる。一人一人がそれぞれの感想や感動を抱きながら。素敵なことだと思わない?」
涼「んー。んん。言いたいことはだいたい分かるけどさ」
奏「告白すると、休憩をはさみながらみたわ」
涼「……完走しきっただけでも偉いよ」
梅「えへへ」



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画像は『ニューシネマパラダイス』より。



涼「ま、怖い怖いばっかり言ってても話が進まないね。具体的に、どんな風に怖かったか、ってところから話していこうか」
梅「どんな風に……? え、ええと……」
涼「うーんそうだな。脚本が怖い、演出が怖い、カメラワークも怖い。話の糸口がちょっと見付からないね」
奏「そうね……話のきっかけになるかどうかはわからないけど。個人的な感想なら」
梅「どうぞどうぞ」
涼「なんか躊躇いがちじゃないか?」
奏「んん。個人的な感想というよりも、個人的な感傷だからかしら。公共の場で言うのはなんとなく恥ずかしいのよね」
涼「お、勿体ぶるね」
奏「こんなところで焦らしたりしないわよ。でも、まあ……この映画で気が付いたんだけど、私って、子供が危ない目にあう映画ってそれだけで苦手みたい」
涼「あー」
梅「あー」
奏「元々怖い映画だけど、なんだか余計に、ね。五人姉妹のお話ってわかったところからなんだか気が重かったわ」
涼「わかるわかる。ちっさい子が標的にされたりすると観ててツラいよなー」
梅「で、でも……小さいコ、と、ホラーの組み合わせ……割と、多い……よね……?」
涼「色々タイトルが思いつくな」

奏「そうなのよね。子供って、基本的に自分が愛されていると疑ってないから……というより、他者の害意というものにまだ気が付けてなくて、無頓着で無防備じゃない? だから無邪気で。だから好奇心に対しても正直で。行動そのものが危なっかしいところがあって……無垢っていえばいいのかな。それが理由で傷付くのをみるのも、それを予感するのも、なんだか余計に怖くって」

涼「うん。うん」
奏「でも、ホラーで子供の出番が多いっていうのは、割とみんなそんな風に感じてるってことなのかしら」
涼「うん……あー。アタシはアレだな。もうちょっと単純に『子供だとバケモノに反撃しづらいしなあ』くらいの視点」
梅「あ。シンプル」
奏「……シンプルね。でもそうね。ホラーの出演機会に多いのはそんなところなのかも」
梅「というか……えっと、奏さん、こ、子供自体、苦手だよ、ね?」

奏「…………

奏「あら? そう思う?」
梅「あ、その、ま、まちがってたら、ごめんなさい……えっと、一緒にお仕事するようになる前まではずっと、『小梅ちゃん』って……ちゃん付けで呼んでたけど、けど、たぶん意識して、『小梅』って、呼び捨てにしてくれてるのかな……って」
涼「よく観察してるなあ、小梅」
梅「あの、そうやって、私のことが苦手、でも、一緒にお仕事する仲間として? き、距離を近付けようとしてくれてるのかな、って、な、なんだか、嬉しいなって……思ってました」
奏「……鋭いわね。それとも私が未熟ってことかしら」
涼「それは照れてる? 焦ってる?」
奏「たぶん両方。まあ、そうね。ちょっとまって。この話は、もっと後でゆっくりしましょう?」
梅「うん。ゆっくり、ね」



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母と姉妹(スタッフロールがまたかっこいいのよ)



奏「ハイ。仕切り直しましょう。といってもどう仕切り直すべきかしら。好きなシーンからあげていく?」
梅「あ……それなら、好きなシーンなら……えっとね……あの、お母さんと目隠し鬼のシーン」
奏「ああ.。あのシーンは良かったわね。怖かったし、この『死霊館』がどんな風に怖いのかがよく表れている場面だと思うわ」
涼「具体的に言い過ぎるとネタバレになるかな? ま、予告編みたいに思ってくれればいいか。えーと……。

 父親は仕事へ、上のお姉ちゃん達は学校へ。家に残ったのは母親と末妹の二人だけ。
 一緒に遊んでと母にせがむ娘が提案したのは目隠し鬼。鬼は目隠しをして家のどこかに隠れた子を探さなきゃならないんだけど、3回だけ相手に手拍子をおねがいできる。

『どこー? つかまえちゃうわよー?』

 まだ馴れない家だからかところどころに足をぶつけたりしながら、危なっかしく娘を探す母。手探りで娘達の部屋に入ると……そこにある古びたクローゼットが少し音をきしませながら開いた。
 それを聞きつけたお母さんは、笑顔になって『見付けたわよー。さあ、手拍子をおねがーい』
 ……するとクローゼットのなかから異様なほどに細く、青白い手が静かに伸びてきて


(パン、パン、パン)


涼「と、手拍子をした。
 母は笑いながらクローゼットに向かっていく……


奏「ハイ、ストップ」
梅「……怖い、ね」
涼「怖い」
奏「本当に。脚本の妙とでもいうべき怖さよね」
梅「ふ、雰囲気も、大好きなシーン……大きなおうちで、静かにお母さんと女の子が遊んで居居るっていうだけなのに……なんだか、怖いの」
奏「そうね。技巧的な話をしちゃうとちょっと野暮だけど、このシーンだけを切り取っても、『目隠しをしているから無防備にそちらへ近付いてしまう』という演出が素晴らしいし、それに、このクローゼットが何かおかしいという点は伏線としてちょっと触れられているのよね」
涼「そうだね。夢遊病にかかっているコが、このクローゼットに向かって延々、ゆるく頭をごつんごつんって打ち付けたりしてる」
奏「伏線とその回収。脚本術っていえばいいのかな。超常現象を描いたお話なのに基礎の部分が合理的なのはちょっと面白いわね」


涼「……ところでさ。さっきの『パンパンパン』て手拍子、誰のだったか聞いていいか?」
奏「あら? 小梅じゃないの?」
涼「小梅はいつもの手が全部隠れる服だからさ。あんなきれいな手拍子は……いや! やっぱ聞かなかったことにする!」



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こわい。


涼「で! えーと! 合理的って話だったっけ?」
梅「うん。うん。合理的って言葉、それっぽいと思う。なんていうか……この監督さんの撮るホラーって、割と、今風? 近代的? みたいな感じも……するっていうか」
涼「ああ、そうだよな。ジェームズ・ワン監督は『ソウ』も『インシディアス』も撮ってるんだよな。あれもどっちも怖い」
梅「インシディアス、も、この死霊館と、似た部分が色々あるお話で……えっと、引っ越した先で、怖いことがおきちゃう話、なんだけど、『このお家、なんだか変なことが起きて怖いの』『じゃあ引っ越そうか』て、ほんとに引っ越しちゃう……」
涼「そうだな。アレは観ててちょっと驚いた。普通なら引っ越したいけどそうできない理由があったりで、逃げ場のない怖さみたいな撮り方が多いよな」
梅「でも……逃げられない……」
奏「今なんだか楽しそうに言ったわね。でも、一度逃がして、でも逃げられないと確かめさせるのがまた怖い演出に繋がる、と」
涼「家が変だから引っ越せばいいという判断も今風だし、あの、ベビーベッドのそばにマイクを置いてたよな? おかあさんが離れてても声を聞けるように。アレをホラーの仕掛けとして使ったりとかも現代風て言っていいかな。そのへんの細かさが……なんていうのかな」
奏「リアリティ?」
涼「それね。ウォーレンさんは本職のエクソシストじゃないから教会から来てもらわないといけないとか、派遣してもらうにしても依頼された家族はクリスチャンじゃないから余計に手間がかかるかもーとかいうじれったさもさ」
梅「い、インシディアスでもそうだけど……幽霊の、正体を確かめようとする、えっと、カメラとか、紫外線とか、熱探知とか、用意することが……ほっとするようなんだけど、でも、やっぱり怖いことに繋がるんだよね」
涼「そうそう。それを感じる。こっちを怖がらせることに細かいアイディアがある」
梅「う、嬉しいよね……すごく
涼「嬉しいか? まあ嬉しい、か?」
奏「サービス精神に溢れているっていえばいいんじゃない? 超常現象は文字通り、常識を逸脱した出来事だからそれを表現する為に飛躍したアイディアが必要になる。けれど、突飛すぎるとリアリティがなくなっちゃって怖くなくなってしまう。そんなところじゃないかしら」
涼「お。なかなかざっくりまとめたね」


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心霊科学調査というのもどこか時代がかってるよね。


涼「サービス精神っていえばさ、この監督のホラー作品全般にいえることな気がするんだけど……ええっと。あー、ネタバレなしに話進めるの苦手だな。アタシ」
奏「あら。とりあえず言ってみれば? ネタバレ禁止のラインは小梅に判断してもらいましょ」
梅「え、わ、私?」
涼「そうだね。小梅に任せるとして。えーっと……。途中まではむちゃくちゃ怖いんだけどさ。敵がおばあさんの姿だとさ、なんか『あ、なんか勝てそう』ってなって、ちょっと安心しない?」
梅「え……ええー……?」
奏「勝てそう。って」
涼「いや殴ったり蹴ったりで解決する話じゃないのはわかってるよ? でもさ、幽霊とか、あのあたりが怖い理由って『勝ちようがないから』じゃないか?」
奏「それならまあ、わかるかな。抵抗手段がないってことよね」
梅「あれ……でも、それって……死霊館でも、インシディアスでも、どっちでも言える……?」
涼「あー。そうかもな」

奏「死霊館は?」
涼「最初はすげー怖いけど、おばあさんが出てきたら『あ、勝てそう』って思った」
奏「インシディアスは?」
涼「最初はすげー怖いけど、おばあさんが出てきたら『あ、勝てそう』って思った」
梅「ええー……?」
奏「死霊館2は?」
涼「この悪魔、『マリリン・マンソンにちょっと似てるな』って思った」
梅「あ、それは私も思った」

奏「でも、そのあたりはいわゆる和製ホラーが、黒髪の女性にばっかり幽霊役をやらせがちなところから来てるんじゃないかしら」
梅「そ、そうでないのも、あるよ……?」
涼「そんな気もする。海外のひとからみると女の幽霊の方が『あ、勝てそう』って思ったりもするのかもね。アメリカホラーだと悪魔とか怪人とか魔女だもんな」
梅「そ、そうでないのも、あるのに……」
奏「そうね。一般的な偏見をあんまり広げすぎるのもどうかとは思うけど」


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『幽霊』の画像検索結果。


奏「ちょっとお話を戻すと、サービス精神というのもこの映画、というよりも、ジェームズ・ワン監督作品を読み解く鍵になりそうじゃない?」
梅「鍵?」
奏「特に死霊館の続編のエンフィールド事件だと分かりやすい気がするんだけど、こんなに、あれだけ怖いのになんだかデートムービーにも最適っぽいところがない?」
梅「うん?」
涼「小梅はちみどろスプラッターでもデートムービーに選べるからその例えはいまいちかも知れないぞ。というのはおいといて、エクソシストものなら悪魔払いも当然あって、そのシーンもまた怖いといえば怖いんだけど、ホラーとはちょっとタイプの違う怖さになってるよな? なんていうか、アクション映画のカースタントみたいな緊張感」
奏「スピードとスリルね」
涼「あとはアイディアかな」
奏「そういえば、ジェームズ・ワン監督はワイルドスピードも撮ってるのよね。その緊張感から解放されたあとには大団円がある、と」
涼「そうだね。ずっとじっとり後味の悪さが残り続けて帰り道まで憂鬱になるホラーもいいけどさ、こうやって、映画が終わることで、『あー! 終わったー!!』ってなる映画も嫌いじゃないね。このへんも、脚本術、近代的、サービス精神のどれにも繋がる話だと思う」
奏「そのあたりは、小梅的にはどうなのかしら」
梅「え? うーんと……うん……どう怖いか、とか、どこまで怖いか、とかは、ひとそれぞれだし……で、でもね? あの、ホラーって、怖くて、映画のなかのひともすごく怖い思いをしてドキドキするけど、そのドキドキが伝わってくれば伝わってくるほど、いいホラー映画だから……」
涼「そうだね。臨場感というか、感情移入というか」

梅「そう。感情移入……助かってほしいとか、死なないでほしいとか、逃げてほしいとか……そうやって、緊張してみちゃうから、それだけ、あの……家族を守る、とか、恋人を助けるとか……そういうドラマも、怖ければ怖いほど、観てるこっちも真剣に観ちゃうと思うから」

奏「ホラー映画には、ホラー映画だからこそ描けるドラマがあるってことかしら」
梅「うん。そう思う……あの、死霊館のエンフィールド事件の方なんだけど……『信じてくれる味方が一人でもいれば、奇跡は起こる』みたいな台詞が……すごく、好き」
涼「確かに。あのセリフは良かった。ほんとに」
梅「だから、やっぱり、死霊館って、いいホラー映画で、好き」
涼「そうだなー。家族と一緒にとか、恋人と一緒にって進められるホラー映画もなかなかないよな。特にエンフィールド事件のほうはさ」
奏「とはいえ、誘うならパートナーの趣味をちゃんと押さえたうえでどうぞ、といったところかしら」



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やっぱ愛ですよ。愛。



涼「さて! 収録時間いっぱいだね。今宵のニューアイドルシネマパラダイスはこのあたりでクランクアップ!」
梅「あ、じ、じゃあそろそろ、さっきのお話の続きしても、いい?」
奏「あら? さっきのって?」
梅「か、奏さんが、私のこと苦手だったって、話、だよ?」
奏「……そうね。その……収録には使わないって約束をしてくれるなら……」
涼「おー。イイ笑顔だね、小梅」


>>お次は『ヴィジット』
tehihi.hatenablog.com

小梅ちゃん誕生日記念ニュー・アイドルシネマ・パラダイス 『ショーン・オブ・ザ・デッド』

架空のラジオ番組の特別エピソードという体でやっております。

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ゆんでに花束、めてにクリケットバット(Rom Zom Com



奏「今日のお題は……『好きな英語のことわざ』ですって。
 これ、アドリブでやるには難しいお題じゃない? そうね、私は……Beauty is in the eye of the beholder かな?」

涼「最初に浮かんだヤツでいいなら Same Shit Different Day とか」
梅「え、えっと……dogs can't look up……?」


奏「さて。ニュー・アイドル・シネマパラダイスへようこそ。
 この番組は、私、速水奏と」

涼「松永涼と」
梅「白坂小梅、の」
奏「三人の映画を愛するアイドルが、愛する映画を、愛らしく語るトーク番組です」
涼「そんな番組の冒頭で、Sから始まる4文字の言葉を言っちゃったんだけど、不味かったな?」
奏「アドリブはこういう事があるのよね……そんな愛らしい当番組の、今月の特集は『ホラー映画』」
梅「……わーい。愛らしいー」
奏「なんでホラー特集かというと、みんなもう気付いてくれているかしら? 今月28日は小梅の誕生日なの。この特集は、私たちやリスナーからのささやかなプレゼントね」
梅「わーい」
涼「要するに、今月のテーマ映画は全て小梅の選択、と。なかなかハードな一ヶ月になりそうだね」
梅「えへへ……ゾンビは可愛いし、番組的、にも、いいよね……? いいよね?」
奏「んー。そうねー。愛する映画を語る小梅の愛らしい姿を愛でる。という具合に一月過ごしていこうかしら」
涼「ハードな一ヶ月になりそうだね」
奏(……この企画の発案はアナタだからね?)
涼(思いついたときは名案だと思ったんだよ……小梅が喜ぶなーって)



涼「ハイ。それで小梅、今週のテーマはなんだっけ?」
梅「あ、うん。えっと、ショーン・オブ・ザ・デッド……です」
奏「『ショーン・オブ・ザ・デッド』は2004年にイギリスで公開されたホラームービーね。
 監督エドラー・ライト、主演はサイモン・ペグ。パロディながらも、ゾンビ映画の原典と称されるロメロ監督の『ゾンビ』を下敷きにした展開はホラーの定石をしっかりと踏まえて、多くのホラーフリークのハートを射止めたそうよ。
 日本では劇場未公開ながらも、そこはそれ。蛇の道は蛇的に、ゾンビ愛好家の必須教養みたいな知名度を勝ち得ているフィルム。とのこと」


youtu.be


涼「そこそこの仕事と、ダメ人間だけど親友のルームメイトと、恋人とを持っていたショーンはそれなりに恵まれながらも変化のない日常をだらだらと過ごしていた。ついには恋人にその無気力をたしなめられるけれど、煮え切らない態度を変えることが出来ず、あげく彼女に愛想を尽かされ振られてしまう。失意のまま親友とヤケ酒を煽ったその翌朝、いつのまにか世界はゾンビで溢れていて……というのが筋書きかな」
梅「うん、うん……ほんとに……大部分がコメディで、パロディだから、ゾンビ映画そのものを、えっと……茶化すようなシーンも多いんだけど、でも、ちゃんとゾンビ映画で、この監督はきっとロメロ監督のことが大好きなんだなって伝わってくるような……いいホラー映画で、大好き……」

奏「そうね。小梅的にはゾンビ映画のお約束というか、大事な要素ってどのあたりかしら?」

梅「え、えっと……あの、い、いつもの風景が壊れていくところとか……安全な場所についたはずなの、に、それが壊れちゃうところ……あとは、うーん……たくさんヒトが死んじゃう話でも、それでも死んでしまうと悲しいヒト、というか、別れの悲しさは描いてほしいし……」
涼「面白兵器でなぎ倒したりは?」
梅「あ、うん。それもあったら嬉しい……ショーンオブザデッドだと……クリケットバットがそれっぽい?」
奏「よその国の伝統球技を面白兵器扱いしない方がいいんじゃないかしら。でもまあ、当のイギリス人が率先して面白く取り扱ってる気はするわね」
涼「ともあれ、そうやってシーン一つ一つみていくと、ゾンビ要素は完璧に近いなーこの映画」
梅「うん。ほんとに。ほとんどカンペキ……いちばんだいじな、グシャってなるシーンも、ばっちり迫力満点」
奏「そんな一つ一つのシーンが、ゾンビムービーとしての要点を押さえたシーンでもありつつもコメディという大前提を忘れず、面白おかしく描かれているところがこの映画の人気の由縁かしら」
涼「そうそう。ちゃんと笑える。ブリティッシュジョークってやつかな? 毒が利いてるんだよねー」
奏「私は、彼らがダニーエルフマンにした仕打ちを忘れるつもりはないけど。お話の結末もホント強烈な皮肉よね。さすがはニートという言葉を生んだ国」
梅「あ、うん。社会問題? に、触れるのもゾンビ映画で割と大事なところ……かな」


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クリケットバット(面白兵器ではない。


涼「この映画の好きなところ。アタシは絵作りのかっこよさも褒めたいな。オープニング付近のカメラが横に流れていく絵面とか、すごいスタイリッシュだよね」
奏「そうね。音楽の使い方も、意外な選曲まで含めて映像ときれいに合わせてるわよね」
梅「どんっすとっぴーなーう♩」
奏「あのシーンは出来すぎとしても、ね。確か実際にミュージックビデオも手掛けてたんじゃないかしら。イギリス出身の映像監督にはそういうひと、多い印象があるけど」
涼「MTVがすっごい力持ってた時代と重なるんじゃないか? そのへんはあんまり詳しくないけど」
奏「ああなるほど……そういえば、同じくイギリス映画のダニー・ボイル監督も『MTVみたいな映画だ』と批判されて『光栄だ。あの頃のMTVはあらゆる意味で全盛期だった』って回答してたわね」

「あ……あああああ!!」

涼「ど、どうした小梅!?」
梅「あ、あ……うん。ごめんなさい。あの……今日が一日で、私の誕生日、28日後だから……今日のテーマ『28日後……』にするっていうのも、佳かったかなって、き、気付いて……」
奏「ああ、ダニーボイル監督のゾンビ映画ね……。ま、それはまた後日」


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「最初にゾンビを走らせた映画」と称される事もある作品


奏「この映画みて思ったんだけど、いいコメディと、いいホラーって近いところがあるかもしれないなって」
梅「?」
奏「そうね。なんとなくなんだけど……まず登場人物にしっかり役割を持たせて、キャラクターとして立たせるところかしら」
涼「あー。わかるなそれ。なんていうか、嫌なキャラでもさ、空気の読めなさや頑固さみたいなのも変なリアリティがあるんだよなーいい意味で。あとさ、アタシってニックフロストの演じてた、エドみたいなキャラが案外好きなんだよね。ダメな部分がずっと目立つし役に立つこともほとんどないけど、どこかいっつも余裕があって、酷いピンチでも皮肉を忘れないし、基本は友達思いで。一貫してるというか、スジが通ってるっていうかさ」
奏「あら。そういう意味じゃ私はショーンに魅力を感じるわね。優柔不断ではあるんだけど、彼の行動原理はずっと愛の為なのよね。家族愛、異性愛、友人愛……シャツ姿で走り回ってる男性ってセクシーじゃない?」

梅「あ。オトナの話」

奏「小梅も遠慮無く混ざっていいのよ? カワイイなって思った登場人物とかいない?」
梅「え、ええー……えーと……えーと……あ。あの、酒場の付近をうろうろしてた、双子? の、ふとっちょさんのゾンビとか……可愛かった……」
奏「んん。本気なのかはぐらかしてるのか追求するのはやめておきましょうか」
梅「うん。でも、奏さんの言ってること、だ、大事だと思う……誰かのためっていうか、なんでゾンビから逃げたいのか……助かりたいのか。そこがしっかりしてるの、大事……だと思う」
涼「そうだなー。死にたくないって思うからこそ緊張感も生まれるわけだ」
奏「そう。荒唐無稽ではあるんだけど、一方でリアリティは必要だったりもする。そのあたりは脚本の力というよりもディレクションの力なのかな……?」


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発揮せよリーダーシップ


奏「ホラーでもありコメディでもある。そうやってみると、コメディは緩急差が大事っていう話を聞いたことがあるけど、ホラーも同じような事が言える気がしてくるわね」
涼「ああ、それな。ホラーじゃ常套手段だろ? こう、来るぞ来るぞーと緊張させておいて、通り過ぎさせて、一度ホッとさせたところに」

「わっ!!」

涼「……って来るやつ」
梅「えへへ……」
奏「.……マイクが心臓の音、拾っちゃいそうよ。ええと、そうね。ホラーとコメディとは手法に似通った点がある。もしくは相性がいい、みたいな話になるのかな」
梅「き、急にコメディーっぽくなった、悪魔のいけにえの、1と2の話、する……?」
奏「それはまあ、また今度。実際、この後にエドガーライト監督の撮った、このショーンオブザデッドが第一作になった三部作も、どれもコメディなんだけどホラーの雰囲気もあると思わない?」
梅「うん。思う。思う」
涼「『ホットファズ』と『ワールズ・エンド』だったよな。どれもこれも好きだなー。確かに、ホットファズはアクションだけどサイコホラーっぽいし、ワールズエンドはSFでホラーだね」
梅「ゾンビ、と、ガンアクション、と、SF……すごい監督さんだね」
奏「特に、ホットファズのあのスローモーな銃撃戦はあらゆる映画作品のなかでも必見のできばえなんじゃないかなって私は思うわ」
涼「力説するね……まあ同意するかどうかは各人の胸のなかに留めておこう」


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コルネットとは欧米で有名なアイスのことみたい。


涼「三部作ね。スリー・フレーバー・コルネット・トリロジーっていうんだっけ?」
奏「らしいわね。三つの味のアイスクリーム三部作。三部作と言われて確かに納得する部分はあるんだけど、監督と主演と助演の三人が共通している他に、具体的にどのあたりがテーマとして通じているのかと言われると……?」
涼「確かに、パっと思いつくテーマみたいなものは……そうだな。スタッフ以外の共通点というと……舞台が片田舎、悪友との関係……くらいか?」
梅「フェンスを乗り越えようとして、転けちゃうシーン……とか」
奏「友達は大事よね。っていう風にも感じるけど、たいていの場合その友達は酷い目にあっちゃうしね。ワールズエンドの結末も、ある意味では友達をみんな置き去りにしているわけだから」
涼「そうだなあ。アタシはなんだか。こう……『そう簡単にオトナにはなれねーよ!』みたいな話に感じるかな。どの話でも主人公は、好きなものにこだわりすぎてこじらせちゃってるというか、その部分が話を進ませるきっかけになってるよな」
奏「ワールズエンドはそれそのまんまね。学生時代にやり残した酒場巡りをやり遂げようぜーっていう話だし。青春を卒業しきれないオトナの話。そうしてみると、なんだか如何にもギーク映画って感じになるわね」
涼「ロックのテーマの一つだね。オトナになんかなってたまるかーって」
梅「たまるかー。
 わ、私の場合、は……えっと、『好きなものは簡単には諦められない』とか、好きなモノはずっと好き……みたいな? あ、あきらめちゃった方が、楽だったり、あきらめることの方が、きっと正しかったりする……んだけど、でもやっぱり、好きなモノは好きって……」

奏「なんだか、身につまされる話になってきたわね。そうね、少し意地悪な見方になるけど、人の必死な姿ってそれだけで心を打ったりもするけど、それだけで滑稽だったりもするのよね。そこのところを思うと、さっきのホラーとコメディとの相性の良さって話に繋がる気もするわね」
涼「うーん。ま、アレだな。一生懸命な姿がドラマを生むってことにしとこうぜ」
梅「いっしょけんめー」
奏「異議なし。ね」


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助演・主演・監督(仲いいな。


涼「さて。ニュー・アイドル・シネマパラダイスもそろそろエンドロールの時間だね。
 お別れは、ショーン・オブ・ザ・デッドのなかで、小梅が一番好きなシーンの紹介を」

梅「え、えっとね。あの……眼鏡の、デービッドさん、が、『そこから離れなさい!』って、お、怒られたあとに――」
奏「それじゃ、また次の夜に逢いましょう」


>>第二夜は『死霊館tehihi.hatenablog.com

バーチャロンのオラタンの裏設定まとめサルベイション。

 とある魔術の電脳戦機の体験版が配信されましたねひゃっふー。
 触ってみた感じ、ゲーム内容に関しては「オラタンと似通いながらも新機軸の軽快さ」「実際んところは対人戦やってみんとわかんないよな」「効果音など改善を期待したい余地はある」くらいにまとめられますが、何よりも、チュートリアルでテムジンを前後左右に歩かせた時に不意に「あ……新作だ。チャロンの、新作なんだ……」つって目頭にくるものが少しだけありました。少しだけなッ

 限定版の予約を済ませたところで発売はあと二ヶ月も先。
 体験版という格好の餌はあたえられたものの手持ち無沙汰。
なので、同じく、オラタンXBOXへの移植が急遽決定された際に配信開始を待ちわびつつだらだら思いだし書きしてみた「オラタン裏設定まとめ」を掘り起こしてみます。ちょこちょこ書き足しや訂正はあるものの基本は10年近く前の文章だぜひでぶ

 おおむね公式設定です。おおむね公式設定ではありますが、それを私個人とかいう頼りにならんフィルターを通した文面だとご理解ください。
 ついでにオラタンまでの設定だし、最新作の分までは追いかけ切れてないので、鵜呑みは厳禁で。細かい設定も結構上書き気味に改訂されてたりすんのよね。
 出典は「スキマティック」「真実の璧」「ワンマンレスキュー」あたりから。
 どれくらい今作のとある魔術の電脳戦機とリンクした設定かはわかりませんが、要するに「平行世界を自由に行き来できる能力」を争奪し相争うお話がバーチャロンオラタンなので、その経路でとあるシリーズとリンクしているのでありましょう。たぶん。

 同じく発売を待ちわびてツインスティックでイメージトレーニングに励まれる方。もしくは禁書勢でチャロンの設定を全然知らないけど今更それら文献を当たるのは大変そうーだとか、PS4の特典で付いてくるであろう設定本の解読の一助など。
 要するに、暇があって潰したい方向けに、どうぞ。

予備知識

電脳歴:

 バーチャロンの世界設定。地球文明の未来の姿。
 資本主義が推し進められた結果、国家という概念は事実上消滅し代わりに企業群があらゆる社会活動を統治している世界。
 人倫よりも企業倫理・利潤こそが優先される世界というのもなかなかディストピアっぽくはあるけれど、それの結論として人類社会は太陽系外への進出を放棄し、やがて潰える資源のみを糧に、閉ざされた未来という安寧のなかで相応に享楽的で退廃的な生活を送っているそうな。

限定戦争:

 戦争ってのは結局、政治における外交手段の一種でしかない。
 そう考えてみると、資源の濫費や大量破壊を呼ぶ戦争なんてのはナンセンスな手段に過ぎない。
 地球のみの資源で生きると決めた電脳歴の人々にとってはなおさらだ。
 それなのに、大量消費による経済効果・政敵排除の手段・イデオロギーの主張・あるいは原始的闘争心の解消手段などなどで「戦争」という行為は常に「需要」があり続けた。
 その結果に産み落とされたのが「限定戦争」
 ショウビジネスとしても成り立つように協定や規定が整備され、スポンサーに雇われた傭兵や企業の私兵集団が代理的に闘争を行い、それを大々的に放映する。
 歪な命のやりとりだけど、地球圏で最大の興業効果をあげててほんと大人気らしい。
 まあ、ローマ時代にも剣闘士が見せ物の殺し合いしてたし、そんな感じなのだろう。

月面遺跡:

 人類が地球外進出をまだ夢見ていた時分に発見されていた、月の裏側になんかあった遺跡。
 どうやら太陽系全体にまで規模を広げていた文明が人類よりも先に存在したらしい。

Vクリスタル:

 月面遺跡の中核をなす物体。機構。

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ところでこれは月面遺跡のものではなく……。

 人の精神に直接作用し、強制的に植物人間にしてしまう恐ろしい存在。
 しかし遺跡の解析に携わった研究者らは、この現象を「どこでもドア的な作用が中途半端に発現した結果なんじゃね……? つまり解析がうまく行けばどこでもドアを作れるんじゃね?」と解釈。研究を進める。

Vクリスタル質:

 遺跡の壁面等から採取される、Vクリスタルの性質をわずかに備えた何か。
 なんなんだろ。あんま具体的に描写されたところがなく(?)、塗布するーとかいう描写があるあたりなんかこう、ペンキみたいなイメージがあるけど。
 バーチャロイドを製造する為に必須の資源であり、Vクリスタルの存在するところからしか採取できない。

M.S.B.S.:

 マインドシフトバトルシステムのこと。

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とあるチャロンはVer55.55(!)が用いられていると確認できる。

 限定戦争は需要を増し続け新たな兵器も開発され続ける。けども結局それを使うのは人間だ。
 新たな兵器は新たに使い方を覚えなければならず効率が悪い。
 それならば、操作をすげー簡単に、例えば思った通りに操作できるように人間の精神に直接繋がるOSを開発できればすげー儲けられるんじゃね?
 という目論見で着手されたものの完成には至らなかった。

 この、精神に直接作用ーという部分をVクリスタルによる植物化現象への対抗処置として転用できないかという研究が進められた。
 しかしその結果……。

リバースコンバート:

 Vクリスタルに対抗する為の処置とM.S.B.S.の作用とが高負荷に達した際に発生した現象。
 具体的には、M.S.B.S.がそのデータに残していた兵器が突如としてその場に出現した。

 どこでもドアを作ろうとしてたら取り寄せバッグが出来ちゃったみたいな展開ではあるものの、検証の結果この現象には限界があり、
・物理法則を越えたものは出現させられない。
・元々が兵器用のOSであるせいか、兵器に近いものしか実体を保てない。

 ともあれ研究者たちはこの現象を「リバースコンバート」と名付けたものの、彼らの目的はあくまで月面遺跡の解析である。
 兵器なんぞ知ったこっちゃない。
 しかし、研究者とは常に出資者がいるからこそ仕事をしていられる。
 出資者は金になるものにしか興味がない。

バーチャロイド(VR):

 月面遺跡の研究機構のパトロンであるDN社が、彼らの発見したリバースコンバートを利用し開発させた新兵器。
 以下の動画は、それが行われている様子。で、いいんだよね?

youtu.be

 リバースコンバートは兵器でさえあるならば多少は突飛なものでも出現させられる。しかし既存の兵器を出現させるのではあまりにもコスパが悪い。
 ならばどんな兵器を作り出すか……その結論がコレである。
 限定戦争はショウビジネスでもある。派手であれば派手であるほど客受けがよい。
 つまり、いわゆるロボットであるVRは素晴らしくおあつらえな限定戦争向け商品。
 市場を塗り替えうる新たな商材と目され、それら経済効果を独占すべくDN社はその技術を秘匿し開発を続けていた。
 けれども。

DN社:

 月面遺跡を研究する連中のパトロンであり、その途上の研究結果を成果物だとばかりに飛びつきバーチャロイド(VR)を開発した。
 電脳歴の地球で結構な地位に鎮座する大企業。 であったが、VR の開発に伴うオーバーテクノロジーの不用意な乱用により、月面遺跡に存在する巨大兵器「太陽砲」の発動を引き起こしてしまい、それら責任を取らされて解体の憂き目にあう。

ディフューズ・アルフレート・ド・アンベルⅣ:

 人物。複数の企業国家の大株主。途方もない気まぐれさで知られているらしい。
 ただでさえ資本力がそのまま力関係な企業国家の支配する世界において、それの大株主という存在の権力とかもうどんなんなんでしょうね。

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「太陽砲」の存在を察知し、月面遺跡の調査開発中止をDN社に訴えるももはや遺跡の存在意義をVR開発としてしか見なしてないDN社はこれをガン無視。
 するとアンベルさんは、途方もない財力にモノをいわせてDN社最高幹部の一員となった。それで何を始めたかというと……9つのプラントを買収・VRの開発製造を委託などすさまじい辣腕でVR販売プロジェクトを推進し始めた。
  支離滅裂だ。さっきまで「月面遺跡の開発中止」を訴えていたのに。
 そしてその意図不明の行動の極みとして、VR販売プロジェクトの達成間近にこの9つのプラントを突如として破格で売却し、失踪を遂げる。
 社を挙げて、世の中変えるつもりで準備してたプロジェクトが急に売却されたのだ。DN社の陥った窮地と混乱は察するに余りある。
 その直後に太陽砲が発動する。

太陽砲:

 突如として月面に観測された巨大エネルギーの中心にあるとされたもの。
 それは旧文明の遺した巨大兵器であり、よりにもよってそれが地球を照準し発動しようとしているらしい。

OMG:オペレーション・ムーンゲートの略称。

 太陽砲の破壊を目的とした作戦名称。先のアンベルⅣの投げ売りにより月面遺跡の調査結果なども漏洩し(漏洩どころでないダダ漏れだが)結果、DN社はこれの引き金を弾いたと全人類から糾弾を受ける。
 DN社はもはや猶予ならず、秘匿していたVR大隊でもって月面遺跡の破壊を命じた。

 一部企業の利益追求の結果に地球人類まるごと存亡の危機に陥った。
 その先兵がバーチャロイドである。彼らの登場は、決して望まれるものではなかったのだ。

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 ここまでが初代バーチャロンのストーリー。
 以下からがオラタン時代に関わってくる設定。


FR-08:

 第8プラント・フレッシュリフォーのこと。
「プラント」ってなんやねん。という問いにあらかじめ答えておくと……確かバーチャロン公式にもあんま説明されてない概念だから不確かかもしんないけど、だいたい「企業国家」と読み替えればいいみたい。国家だけど企業だから技術開発や製造もするし、国家だけど企業だからもっとでかい企業の傘下に置かれたりもするし、企業だけど国家だから軍隊持ってるしプラント同士で戦争をしたりもする。

 で。 第8プラント・フレッシュリフォー。
 DN社現存時は月面遺跡の調査に共同参加するプラントに過ぎなかったが、
 DN社の瓦解に際して迅速に立ち回り、VRの開発を担当されていた9つのプラント全てを自社傘下に納めた。
 アンベルⅣが突如として(破格で)売却したプラントを(破格で)購入し直したのである。
 火事場泥棒と呼ぶのはあんまりだけど。

 VR開発に関しても引き継ぐ形となったが、太陽砲発動の遠因と疑われるVRに商品価値を認めず、傘下に納めたプラントの多くにVR開発を禁じた。
 などなど何かと高圧的なやり口が特徴みたい。
 事実、その腕力にモノを言わせた強引な廃統合の結果、例えば、遺跡開発を専任していたグループが獅子身中の虫として紛れ込んでいたり、あくまでVRの存在意義を求める層も根強く存在していたり、VRも限定戦争も所詮はただの投機対象としかみなしていない層もあったりなど一枚板でなく端々がキナ臭い。

DNA:

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 DN社直属の傭兵集団。それ故に、VRを優先的に供給され、限定戦争市場に新たな経済効果をもたらすべく先陣を切る最新鋭戦闘集団。

 と、なるハズだったんだけど。OMGの煽りを食らってDN社は倒産。
 運用権を受け継いだFR-08はVRに商品価値を認めず、それを大量に持つDNAを不良在庫山積みの廃倉庫みたく見なしていた。
 それは事実でもあったのだ。
 彼ら唯一の資産であるVRは、太陽砲の事件云々がなくとも「商品」として扱いづらいものだった。なんせ「強すぎた」。
 だって、VRなんてDNAぐらいしか保有してないもん。例えるならガンダムで戦車を蹂躙して回るようなもんでしょうか(助けて西住隊長!

 一方的なワンサイドゲームばかりでは興業として台無しだし、対戦相手だって見つからない。
 事実上のおまんま食い上げ状態。風前の灯火と呼んで差し支えナシ。

RNA

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 OMGの終結、FR-08の台頭の後、限定戦争市場に突如として現れた謎の戦闘集団。
 DN社が開発技術を独占・秘匿していたはずのVRを有し、しかもDNAに配備されたそれよりも遙かに高性能な機体を揃え、我が物顔で戦場を蹂躙した。
 対戦相手の都合なんぞ知ったこっちゃねー。限定戦争の戦場に呼ばれてもないのに現れてはガンダムで戦車をなぎ倒すようなマネをしでかす。
 どこに所属している兵隊かも明らかではない。単なる荒しだ。

 所属が不明ならば目的も不明である。
 ただ、彼らと接触した兵士は「何かを探しているそぶりを隠しもしなかった」と語り、
 また彼らに捕らえられ尋問を受けた兵士は一様にいう。彼らはこう問いただしてきた。「お前はタングラムを知っているか?」
 それに回答できた兵士は一人としていない。

 鮮烈なその登場はFR-08にも衝撃を与えた。
 秘匿されていたはずのVRを所有してたってこたー情報や技術、Vクリスタル質などの資源までもが漏洩し、勝手に開発している連中がいる。或いは内通者が居て横流ししてやがるってことだ。
 FR-08はこの事態を重くみた。
 その一方で、現実的な商人でもあるFR-08は同時に商機を嗅ぎ取っていた。
 大企業の忘れ形見DNA vs 謎の最新鋭戦闘集団RNA
 その単純な対立構造はまさしく限定戦争市場に最適な広告効果を持つだろう。
 何よりも、ついに、ロボットvsロボットという巨大兵器同士の対戦が成り立つのだ。
 これら判断によりVR開発禁止令を部分的に解除。傘下のプラントへRNAのVRに対抗しうる第二世代VRの開発を発布する。

 と。ここまでが下地の設定。
 以下からやっと各機体設定。


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テムジン:

 DNAを代表する機体。
 上記の通り、限定戦争は見た目の華美さも重視される市場。
 なので、ただ勝ちゃいいってもんでもなく相応の派手さを持ち、
 そしてDNAを、ひいては FR-08 を体現すべくクリーンで勇者ーで正義ーなビジュアルイメージを持つ機体の開発が求められた。
 サーフィンラムなどド派手な攻撃を持ってるのはそれら効果を持たせるためだそうな。

 OMG時代の傑作機・テムジンを継承すべく開発を求められたが、
 要求水準の高さ故に完成が遅れに遅れた。
 その為、戦場への投入が急がれ、オラタン時代に配備されているものは一応の完成品であるものの、搭載された機能の大半を活かしきることが出来てないらしい。

 無論、完成が遅れた、ということは第二世代のなかでも後期に開発されたということで、戦場でリアルタイムに可変するスライプナーといい極めて良好な運動性能といい、機能を部分的に凍結されてはいるものの完成度は高かった。
 このテムジンの完成は、とある少女に一つの決意を促すことになる。

ライデン:

 OMG時の(旧)ライデン製作における、事務上の大失態からハブられてたプラントが製作。
 どういう失敗かというと単純な発注ミスがどかどか重なったあげくにむちゃくちゃ高価な機体になってしまい……という話は後述しよう。

 彼らは、ハブられっぷりをいいことにFR-08により禁止されていたVRの研究を勝手に続行していた。無論それはVRの可能性を信じてのことだったのだが。
 それが実り、他プラントから先んじてDNAサイドとして初の第二世代型VRとして完成することになる。
 高出力を礎にしたレーザーや豊富な武装に堅牢なボディはRNAへの対抗策として確かな功績をあげた。だが、この成功に増長した彼らは、ハブられていた頃の損失を埋めるためにFR-08の用意した販売ルートから逸脱し、あろうことかRNAにさえばんばんライデンを売却をしてしまったため、このライデンを開発したプラント(後述)はFR-08の判断により潰されてしまう。
(一人プレイ時、タングラム戦の前に戦うライデンステージがその潰されたプラントの名残だったりする)

フェイ・イェン・ザ・ナイト:

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 RNA開発の第二世代VR。RNAはどこからかOMG時代のフェイイェンを入手し、
 それを独自に解析し第二世代フェイイェンを開発したらしい。
 つまり、オラタンに登場する全VRの中でも一番最初に開発された機体てことになるけれど、配備数が少なく、確認されたのはずっと後のことだそうな。
 希少であり高価でもあり多くは配備されていないいわゆる指揮官機。
 なので、フェイイェンの配備をみた一般兵は「自分が重要な戦闘に参加している」と認識し得たため戦意昂揚に繋がったとか何とか。

 ハートビームはなんでそんな形になるのやら正直よくわからんらしい。マジか。
 ハイパーモードに関してもなんでそんな現象が起きるのやらわからんらしい……けど、これには一応仮説はあるっぽい。後述。

アファームド系列:

 RNAサイドの主力VRであり、RNAの象徴そのものでもある機体。
 RNAとの邂逅はアファームドとの初会敵でもあった。
 当時のVRとは比較にすらならない性能故に「第二世代」との呼称を始めて得ることになったVR。
 機動力・装甲ともに優れ、しかも汎用性に富んだ機体構造により様々な装備が可能。戦況に合わせ多くの派出機を生んだ。
 バトラー、ストライカー、コマンダーの他に、ゲームには出演してないけれどアタッカーやディスラプター等々色々いるみたい。

・ストライカー
 いわゆる火力支援型。その癖に機動力は標準以上あるという用兵上の利点が高すぎる機体。

コマンダー
 戦場ではアファームドは5人一組での活動が基本であったそうで、そのための統合通信装備を施されたいわゆる指揮官機。
 シンプルながら信頼性の高いランチャー、白兵戦を可能にする実剣のマチェットという主戦闘型な装備による柔軟な運用は、同じく主戦闘型であるテムジンが登場するまで散々DNAを困らせたらしい。

・バトラー
 時代が進みDNAサイドにも第二世代型VRが配備され始めると、少数精鋭であるRNAは苦戦を強いられるシーンも増えてきた。
 そのため、問答無用の機動力で敵陣に切り込み一撃必殺で敵機を沈めて数の不利を無効化する白兵戦特化型の装備が実用化された。
 それがこの燃える男のトンファーキックことアファームドバトラー。

ボック系列:

 DNAサイド開発の火力支援型VR。

「テムジンは他プラントに開発依頼したし、ライデンできたし、安価な支援型VRよろしくね」
「テムジンの開発が遅れているのでそれまでの繋ぎとなる主戦闘用途に耐えうるVRを」
「ライデンがRNA側にも売却されちゃってんだから、それ以外の高火力VRも必要じゃね?」
RNAのアファっていいよなあ。装備が換装できて。あれに似たのが欲しいなー」
「ライデンは強いけどメンテがまじ困難ー。もうちょっと楽にさせてくれー」

 等々等々。DNAサイドの新VRの開発が急がれる故にやたらと多くなってきた注文を一気にまとめ上げて見せたという技術者の意地のような機体。
 ボックという小型VRに、各種兵装を乗っけることで多くのバリエーションを生むことに成功したーという設計。
 カトキさんのデザインコンセプトは「二人羽織」とのこと。
 その苦労が実り、ボック系列は第二世代VRで最も多く見られる機種となったらしい。 いわゆる量産機というか、汎用機というか。


・グリス・ボック
 ボックにグリスユニットを換装した機体。
 大量のミサイルによる火力。十分な機動力。堅実は作りは故障も少なく実弾なので整備も楽ちんと大好評。
 て事でかなりの量産を受け、どっさり居るボック系列の中でも更にポピュラーな機体となったとか。

 上述の通り優秀な機体ではあったものの、優秀過ぎて、大量に配備されたグリスボックがアウトレンジから一斉にミサイル撃ちまくって撃ちまくって撃ちまくってはい決着ーとかいう戦場もたくさん出ちゃった為に諸々不評をかったりもしたらしい。

・シュタイン・ボック
 ボックにシュタインユニットを換装した機体。
 戦役が拡大するにつれ戦線も拡大。その結果、弾薬の補充や費用繰りが困難になることも多く、そのニーズに合わせて製造された光学兵器ユニット。
 バッテリーと整備さえ十分ならレーザーだけでばりばり戦えまっせーという機体。

サイファー:

 Dr.アイザーマンというマッドなサイエンティストの手になるVR。
 OMG時代からバイパー系列を基調とした様々な研究を重ねていたが、太陽砲の発動などを起因としてVRの開発が禁止された。
 それに反発。軍人と接触しクーデターを起こし、プラント一つ占領して開発研究を続けたというスゲエひと。
 その結果に生まれたサイファーは、変型機構を有し、遠方からの一撃離脱、あるいは威力偵察などを可能とし、 VR運用を戦術レベルで一変させる画期的機体となった。
 ひとよんで「飛翔する殺意」 アイザーマンさんちょっと趣味に走りすぎじゃないですかね。

 なお、その後アイザーマンはもちろんFR-08から睨まれることになるけれど、したたかにも「サイファーの優先的供給」を条件にRNA陣営へと逃げ延びた。

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アイザーマン博士と、侍る従者の図……ではなく、三人ともアイザーマンらしい。三人で一つの人格を統括しているらしい(?)


ドルドレイ:

 RNAサイドの機体。
 ライデンにボックにと、射撃に優れたVRがDNA陣営に配備され始めると、白兵戦による決定打を基本戦術としていたRNAは苦戦を強いられる場面が増えてきた。
 近接戦に持ち込めば勝利は確実だけど、特にボック系列はかなーり安価だそうで、数にモノを云わせた火力によって接近が困難。
 なので、これら火力に対抗しうるVRの開発が求められた。
 その結果として生まれたのが圧倒的重装甲を持つドルドレイ。 とにかくしぶとく敵の攻撃をはじいてはじいて無理矢理叩き込む削岩機の一撃。
 ところで重装甲はいいんだけど……なんでドリルなん。なんで火炎放射なん……? というやたらと独特な装備である理由は、初投入の戦場(オラタンの洞窟ステージ)に合わせ急ぎ開発された結果との次第。

バル・シリーズ:

 DNAvsRNAの構造を利用してバーチャロイドの商品的ニーズを喚起する。というFR-08の目論見は概ね成功したけれど、
 しかしその操作系統は煩雑なまんまだった。商品なのだからもっと扱いやすくする必要があるし、それにそれらを統合する新OSの開発ができればがっぽがっぽ儲かるよな。
 との判断のもと、OSであるM.S.B.S.の 新バージョン、Ver.5 系列の開発が急がれた。
 で。開発にはそれを実際に起動させるVRも必要。その結果に生まれたのがバル・バドスだそうな。
(たしかにフォルムだけみるなら一番普通な人型だよなバル)
 ついでには、総合OSには高い汎用性を求められる。バルが水中ステージやタングラム戦などで特殊な装備をしているのはそのおかげというかなんというかみたい。
 あくまで試作OSのテスト機なので、当初武装は有していなかったが、市場投入にあたってこれまた試作器であるE.R.L.をあてがわれた。
 E.R.L.の操作は複雑なので、それの統合もまたM.S.B.S.に求められることなので丁度良かったみたい。
 結果、バルシリーズは第二世代VRの中でも最後発に位置することとなり、その為やたらと斬新・特殊な戦闘スタイルになったとか。
 確かにまあ、あの空中ダッシュとか、人体の可能性を追求した全身運動には違いないものの。

10/80:

 テムジンの量産機。しかもOMG時代のテムジンの量産機。 ガンダムのことはよく知らんのだけどおおむねジムと思ってまちがいない。
 だから背負ってるのもドリキャスじゃなくてサターンだったりする。
 バーティカルターンができなかったり空中ダッシュができなかったりするのも旧世代の量産機が為。
 RNAに遅ればせながらもDNAも第二世代VRを開発・配備できた結果、お役御免で順次退役していくはずだったけど、
 ボック系列の開発に成功したプラントはこれにより巨利を得て、FR-08から睨まれ、イヤガラセとして量産機の再開発を強要されたっつー背後関係。
 いまさら旧世代のVRなんざ量産してもなあ。
 とは誰もが思ったけれども、DNAサイドの第二世代VRの開発はおおむね難航してたので、それの間に合わせとして数にモノを云わせたそれなりの戦果をあげたりもしたらしく、結局オラタン時代にもその姿が結構みられるらしい。

スペシネフ:

 これまたマッドサイエンティスト、Dr.アイザーマン開発のVR。
「怨恨呪詛的暗殺機体」と公式に号されている。怨恨で呪詛で暗殺機体である。
 VRは現在の技術では解明しきれない部分を多く抱えたオーバーテクノロジーによって開発されている。
 それ故に、VRの動力(みたいなモン)であるVコンバータ(VRが背負ってるドリキャスのこと)にパイロットの精神が取り込まれるなんてとんでもない事件が多発した時期もあったけれど……スペシネフはその、パイロットの精神を取り込んだVコンバータの再利用によって開発されているっつースゲエ機体。

 具体的には、スペの背中の羽根がそれを利用した部分だそうで、パイロットの憎悪を増幅させ、VRとのシンクロ率を高め戦闘力を高めるといった効果があるそうな。
(この機能を敵に向かって照射すれば、逆の効果がでて武器が一定時間使えなくなったりする)
 過度の利用は敵味方双方の精神に甚大な悪影響を及ぼす故に、現在は規定によりリミッターが施されているらしい。
 しかし勝利を渇望するあまり、このリミッターを解除してしまうパイロットが一部確認されている。
 解除によって得られるのは通常兵器では破壊不能なまでの耐久力。しかし解除からおよそ「13秒後」に、例外なく、VR・パイロットともに激しい自壊現象を起こすそうな。

エンジェラン

 AJIM現象と呼ばれる問題があった。
 限定戦争戦域に突如としてクリスタル体のような存在が現れ、
 敵、味方の区別無く、特にVRを目の敵にして破壊し蹂躙して回る恐るべき現象。
 戦役の拡大にともないこのAJIM現象が確認される機会も増え、対策が必要となってきた。
 これへの対抗策として生まれたのがエンジェラン

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 なんだけど。一言で説明するのがちょっと難しいな。
 ちょいと新たに用語解説。

プラジナー博士:

 DN社が健在だった時分、VR開発の先陣を切っていた天才科学者。
 独自の研究を重ね、VR開発のみならず月面遺跡のもつオーバーテクノロジーの解明にまで迫るが、謎の失踪を遂げる。
 彼の遺したオリジナルVRをみるに、なんつーか、けっこー「いい趣味」をしてたっぽい。

オリジナルVR:

 二つの意味がある。一つは、月面遺跡にて発見された遺物のこと。
 もう一つは、プラジナー博士の遺した、極めて完成度の高い、もはや博士以外には設計・製造が不可能なまでの、もはやオリジナルと呼ぶほかにないVRのこと。
 現在は「VR-11ガラヤカ」「VR-14ファイユーブ」「VR-17アイスドール」の三体が確認されている。
 オーバーテクノロジーの解析により得られた技術を惜しみなく注がれたこれらVRは、人間となんら遜色のない人格を持ち、そしてVRの枠に留まらない様々な能力を有している。らしい。

ファイユーブ:

 オリジナルVRのウチ一体。別称「オリジナル・フェイイェン
 その名の示すとおり、OMG時代のフェイイェンは全て彼女のレプリカとして製造された。
 好きな場所に転移できて、好きな姿に自分の背格好を転写できるというすげえ能力を有すけれど、その力と、少女然とした人格が災いしたというかなんというかでその力を解析しようとする人々の前から失踪を果たす。そのキャラクターはかつて発売されたチャロンのドラマCDや、スパロボとのコラボ先等で確認できる。

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なんというかなかなかうーん。

 フェイイェンの持っているハイパーモードという機能は、このオリジナルフェイイェンの持つ成長機構が歪んだ形で発露したもの、とする説がそれなりに有力。

アイスドール:

 オリジナルVRのうち一体。
 月面遺跡にて確認された「V-クリスタル」の複製を与えられ、ほぼ無尽蔵のエネルギー供給を可能としているすげえ機体。
 なんだけど、ファイユーブの失踪を受け、彼女もまた喪失してしまうことを恐れた科学者達により強制的に監禁・凍結状態にあった。
 AJIM現象に対抗を目し、その技術を解析するため再起動された。

 フェイイェンがすべてオリジナル・フェイイェンのレプリカであるのと同じように、
 エンジェランもすべてオリジナル・エンジェランのレプリカなのだそう。

 エンジェランは携えた杖により間接的にアイスドールからのエネルギー供給を受け、これにより龍を召喚したりだの氷柱を形成してみたりだのの変則的な戦い方ができるそうな。
 高度な技術は魔法と見分けが付かんとかいうアレだけどももはやそういう話でさえない。
 それが何で氷なのかは不明。「永く不本意な監禁を受けていた彼女の凍てついた心が何らかの形で発露しているのでは……」という説が有力視されてはいるらしいんだけれども真顔でいってるのかなこの説。

 AJIM現象が、VRに引き寄せられているのは確かだ。
 ならばその対抗策はVR開発の源泉にあたるべきでは。という名目で凍結されていたアイスドールが再稼働された。
 つまりはアイスドールがいなければエンジェランは機能しないのだけれど、
 その肝心のアイスドールが、自らの意志によって、エンジェランの開発プラントからFR-08へと逃走してしまう。

 開発プラントは激怒。FR-08へアイスドールの返還を求めたが、FR-08はなぜか応じない。結果として両者には決定的な溝が生じ、開発プラントはRNA陣営へ急速に肩入れを始める。
 これがDNAvsRNAという構造のみならず、VR開発プラントをも巻き込み結果として地球圏全土に達する戦役へと発展するきっかけとなるのだけど、
 エンジェランがその契機に位置する機体ってのも、彼女を愛機として選んだ私としては個人的に感慨深い。

 その他の補遺として。
 ややこしくなりそーだから上記解説では「開発プラント」と濁しておいた各種プラントの説明。

第1プラント ダンシング・アンダー:

 DNA陣営。
 月面遺跡より採取され、VR開発の資源となるV-クリスタル質を管理するプラント。
 VRの開発は行っていないらしい。

第2プラント トランス・ヴァール:

 RNA陣営。ドルドレイを開発。アファームド系列の製造も担当。
 FR-08の高圧的な統治に反意を持ち、実はかなり初期段階からRNAに接触を図っていたらしい。
 よって、ドルドレイを極秘に開発。RNAへの供給・実戦投入と同時にFR-08からの離脱を宣言する。

第3プラント ムーニーバレー:

 DNA陣営。ボック系列を開発。デッドリー・ダッドリーが壊滅して後はライデンの生産も担当している。
 DN社が存在していた時分からVRの可能性を信じ、これの開発を支持し続けていた。
 だからFR-08のVR開発禁止令にはだいぶ落胆したし、せっかく開発認可を受けても求められたのは「支援型戦闘機」という地味な役回り。
 それでもあらゆるニーズに応えたボック系列の開発成功により巨利を得て、さらにはデッドリー・ダッドリー崩壊後の技術を積極的に回収し、
 将来的には地球圏でもかなりの存在感を持つ企業へと成長していくそうな。

第4プラント TSCドランメン:

 RNA陣営。エンジェランを開発。
 地球にて発見された、月面遺跡との連動が確認される遺跡の管理・調査を担当していた。
エンジェランの略奪」をきっかけにFR-08との対立構造を深めるが、しかし同遺跡から採取されるV-クリスタル質をRNAへと転売していた過去が明らかになる。
 FR-08vsTSCという構造はかねてより不可避の構造だったと言える。

第5プラント デッドリー・ダッドリー

 既に倒産している。ライデンを開発。
 DN社が存在していた時分に、旧ライデンの開発に大失態をやらかしFR-08からも無能とみなされほぼガン無視されていた。
 それが幸いしてか、VR開発禁止令が解除される以前から公然と研究を続けていてもお咎めを受けず、結果としてDNA陣営初の第二世代VRの開発を成し遂げる。
 が、功を焦り、独利を得るためFR-08の用意した販売ルートにも乗らず、それどころかRNA陣営にまで販売を続け、自らの命脈を絶つ結果を招く。
 それのお仕置きの手段ってのが、「研究施設そのものを限定戦争用の戦場として提供された」というすさまじいものだった。
 名実ともに崩壊したプラントはムーニーバレーにより回収され、ライデンもまた彼らが生産権を得ることになる。

SHBVD:

 他に紹介する余白がなさげなのでここに。
 日本語に直せば特殊重戦闘VR大隊。プラントではなく、かつてDN社が保有していた傭兵集団である。

 旧ライデン開発の大失態とは、単なる発注ミスであった。
 ライデンができあがったはいいものの、スゲエ高価で商品レベルどころかそもそも新たに製造することさえ不可能な代物になってしまった。
 DN社は激怒し、開発に相応の責任をとらせると決めはしたものの作ってしまったものはしょうがない。
 苦肉の策として、このライデンを選ばれし兵士のみが搭乗を許される超高性能・超高級VRと虚飾し、専属契約を結んだ傭兵部隊にのみ賞与し、広告塔として立ち働かせることにした。
 それがSHBVD。

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 現実でも戦車開発とかで似たような話があるよね。重装甲だけどまともに動かないから国威発揚パレードが主な活躍の機会とかそういう。
 ただ、彼らは実際の戦場にも赴き、自らがトホホな来歴から生まれた虚仮威しの集団であることを自覚しながらも多くの死地で獅子奮迅の働きをみせ「伝説のVRライデン」を半ば現実に打ち立ててしまった。
 その余波として、第二世代ライデンは「あのライデンの次世代機!?」という評判で売れに売れたらしい。
 それの結果が、デッドリー・ダッドリーの増長と壊滅の道に繋がるのも皮肉な話。
 彼らの活躍は現在ではバーチャロンシリーズのディレクターであるワタリ先生直筆の公認同人誌「ワンマンレスキュー」等で確認できる。
 たいていの場合、真面目で腕利きで苦労性なんだけどスタンガンぶっ放して上司から指揮権強奪したりライデンレーザーで衛生ぶち抜いて狼煙の代わりにしたりする「ミミー・サルペン」というおねーちゃんが主人公である。

第6プラント サッチェルマウス:

 RNA陣営。サイファー・スペシネフを開発。
 Dr.アイザーマンが所属するプラント。DNA所属の大佐と組み、VR製造に必要なV-クリスタル質を求めダンシング・アンダーを襲撃するなどけっこーやりたい放題やってる。
 ついでに研究施設は戦艦も兼ねているそうな。つくづくいい趣味をしている。
 余談だけど、質実剛健な機体を多く開発するトランス・ヴァールと、
 外連味に溢れまくった機体を開発するサッチェルマウスはけっこー仲が悪いらしい。

第7プラント リファレンス・ポイント:

 DNA陣営。テムジンを開発。
 FR-08直轄のプラント。主戦闘機体であり、DNAを、そしてFR-08を体現する機体であるテムジンの開発を委託されたのもやっぱり直轄だから。
 FR-08から潤沢な資金と人材を得ているためかなり優秀なプラントらしいけど、それだけ高い要求と、実績ゼロからのVR開発で何かと苦労したらしい。

第8プラント フレッシュ・リフォー:

 DNA陣営。トリストラム・リフォーっちゅー人を盟主に戴く大企業。
 元は金融業などを中心とした様々な施設をもつ企業群だったけど、DN社の瓦解後、散逸しかけたプラントを繋ぎ止め傘下に納めることで地球圏を代表する企業国家に成り上がった。
 大企業ゆえにその基板は一枚板ではなく、また高圧的なやり口が災いし、そしてDNAvsRNAという構造を利用するため、RNA打倒にはあまり積極的な行動を見せず、結果としてDNAはなにかとRNAの後手に回ることが多い。
 元より兵器の販売というパワーバランスの微妙な商売だったのに加え、VRももはや人気商材。企業国家にとっては資本力がそのまま力関係である。傘下の連中を力尽くで抑え続けるには限界がある。

 そしてアイスドールがこのプラントに逃げ込み、そしてなぜかそれの返還要求を頑なに拒んだことからFR-08vsTSCという対立構造が決定的となる。このとき既に傘下に納めていたはずのプラントの半分に離脱され、敵役に回られていた。
 その上で更に、トリストラム・リフォーの暗殺という椿事が発生する。

エンジェランの略奪:

 TSC陣営からみた、アイスドールの逃走劇の呼称。
 アイスドールは前述の通り自由意志がある。だから、監禁・凍結されていた研究所からの逃走も彼女の意思である。略奪という語句は偏った意見といえる。
 しかしなぜ逃げ延びた先がFR-08だったのか。そしてFR-08はなぜ返還に応じなかったのか。
 両者の亀裂が決定的となったこの事件を契機とするように、あの気まぐれさんが帰ってくる。

 上ーの方で触れた、支離滅裂大株主のアンベルⅣである。
 突如の失踪から唐突な復帰。しかも、よりにもよってTSC陣営の大株主として帰還するのである。
 そしてアンベルⅣは高らかに、「オペレーション・ムーンゲートは茶番であった」と喧伝を始めた。
 自らの失踪と太陽砲の発動はトリストラム・リフォーの謀略であったと。
 FR-08が掌握しているVR販売プロジェクトは、騒ぎに乗じて掠め取ったものに過ぎないのだと。
 先に書いたとおり、プロジェクトを破綻させたのはアンベルⅣである。ただ、事実はどうであれ、内実を知らぬ人々からみればその宣言は現実に即していた。

 盟主を欠き、後任さえ定まらないFR-08。離反してゆくプラント。
 そこにこの「太陽砲の真相」というスキャンダルが重なるのだ。
 FR-08、およびDNA陣営はもはや風前の灯火とみえた。
 が。

リリン・プラジナー:

 人物。プラジナー博士の娘。15才。
 FR-08の最後の切り札

 天才博士の血を継ぐに相応しい天才少女であるらしく、存在の明かされていない「第9プラント」に所属し「時空因果率制御機構」を完成させるに至る。
 しかし人類が持つには大それた機構であると悟り、それに自我を与えるという方法で、別時空への逃亡を手助けした。
(ファイユーブやアイスドールの逃走といい。色々と血は争えない様子)

 その独断により、第9プラントに莫大な資金提供を行っていたトリストラム・リフォーの怒りを受け、軟禁の生活を送っていたらしい。
 そしてそのリフォーが暗殺され解放された彼女に用意されたのは、FR-08の盟主という玉座だった。
 VR開発の旗手であったプラジナー博士。その娘を新たに盟主として据えることでVR開発とその販売を正統なものだと位置づける為の処置……ではあるものの、15才の少女に何が出来ようというのか。傀儡にする気満々である。
 しかしその歪な椅子についたリリン・プラジナーは確かに天才少女であったのだ。多くの人間の目論見とは裏腹にあらゆる政治闘争を退け、不合理であった組織を改革し、離反しかけたプラントを繋ぎ止め、DNAに戦略的優位を与え、FR-08を、DNAを強固な連携を持つ組織として蘇らせることに成功した。

 天才少女は商才も兼ね備えていた。
 DNAは確かに強くなった。しかし、数の優位に押すのみの勝利では限定戦争に利益をもたらさない。
 より明確に、ある意味ではわかりやすく、VRという存在そのものを象徴する新型機が必要となる。
 そのオファーの末に誕生したテムジンは、その完成度をしてリリン・プラジナーに決意を与える。

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第9プラント タングラム

 存在を公にされていない謎のプラント。
 その正体は「時空因果率制御機構タングラム」の開発を専任していたプラント、あるいはタングラムそのものを指す。

時空因果律制御機構タングラム

「無限に存在する平行宇宙の事象を自在に入れ替えることを可能とする機構」だそうで、まあ要するにドラえもんもしもボックス
 精神の喪失・虚空から描き出される兵器・空間転移を予感させる働き。それらの全てはこの、因果律制御機構の余波に過ぎなかった。
 この機構こそが月面遺跡の発掘調査により得られた最大のブラックボックスであり、目先の利益に眩んだDN社が取りこぼした果実であり、それの後釜をまるごと持って行ったトリストラム・リフォーが真に秘匿したかった宝である。
 VR販売プロジェクトってーのも結局はタングラム開発の目くらましに過ぎない部分があったらしい。

タングラムを解放せよ」
 アンベルⅣとの会談の際、彼らが示した要求である。
 これには、人々の命運を自由に握り得るシステムの構築と、それの秘匿という大それた独善を暴露し、糾弾する意味があったのだろう。
 しかし天才少女リリン・プラジナーはそれを鮮やかに回避し逆手にとってみせる。
「あの子はもう既に、自らの意思でこの世界を去りました」と告げた後「タングラムの発見と奪還、そして運営権の争奪を目的とした限定戦争」を提案したのだ。
  これこそが彼女自身が待ち望んだ瞬間だったらしい。

オラトリオ・タングラム

 リリンの提案した戦役が、後に呼ばれることとなる名称。

 DNAとRNAが総力を結集し「時空因果律制御機構」の優先的接触権を、いうなれば自身の運命を争奪しあう戦役。
 これが発布された直後、限定戦争への参戦希望者が個人・企業と規模を選ばず殺到することとなる。
 この戦役こそが、電脳歴最大規模にして、あらゆる人類をその影響下においたもはや終わりのみえぬ大戦役であり、プレイヤーである私らが参戦することとなる限定戦争である。

 とかなんとかで。
 結構な分量になりましたが、もちろんオチは「でもゲームを遊ぶ分には一切関係ないんだけどねッ!」とかそのへんです。

ガルパン最終章公開前夜のどうたらこうたら。

 文中にもありますが、「ガルパン最終章を観る前の気分はガルパン最終章を観たあとでは味わえないんだよな」という思いつきを元に、視聴前日にはこんな気分だったとメモしておくのも悪くないんじゃないか企画として書いといたものです。
 説明しとかんとわかんなさそうなので。寝不足気味のテンションでぶん回すライブ感がなんともアレですね。

 こうしてアップロードしている現時点は無論視聴を終えてるわけですが、この観た後で見直すと……いや今は何もいうまい。


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干し芋って食べたことないんだよな……。


 ああーのころのぉーぼーくらーはあーーーーーーああああああーーーああーああああああー。
 それなりに平静を保っているつもりではあったけれどもいざ前日ともなるとやはりそわそわとしてしまう。ガルパン最終章第一話公開前夜である。
 期待10割で不安も10割だ。とにかく大好きなシリーズだけに封切りが楽しみだけどもがっかりしてしまうことも怖い。
 好きな作品だから全幅の信頼はあれども、しかし作品に疵がなくともそれを観るのは独りよがりな価値観をもったこのオレなのだどう評価をくだすかわかったもんじゃねえ。
 しかも最終章だ。ああ。最終章なのだ。彼女らの未来が、結末が決まってしまうのだ。ああ。
 実際に書きもしない二次創作で一人遊びをしているならまだ脳内お花畑で済むけれども、公式で道筋が決められたならそれこそが宿命で不可避で運命だ。未来が決まり可能性が収束し何物でもないそれとして結晶するならばその他の可能性は死滅するのだ。成長とは彫琢だ。 可能性を刻んで削ぎ落としただそれしかない唯一の形へと完成させていく。それが望ましくとも、望ましくなくとも、ただ望ましい形として決実するのだ。揺るがせなく。
 ああ。
 ええと。
 とにかくもはや理屈ではないのだ。
 そわそわする。そわそわする。

 今のとこ人間には記憶を任意に消す手段はない。観たものは観たもの。多少の可塑性こそあるものの非可逆が大原則である。
 つまりガルパン最終章第一話をみる前の私の脳みそとガルパン最終章第一話をみた後の私の脳みそとは決定的に違う。ならば観る前の私の脳みそでしか考えられないことがあるはずなので、せっかくだし、それを書いてみたいと思う。

 最終章制作の第一報に触れたときから私の脳みその片隅で自捻自倒しているのは、ああ、ついに角谷杏会長の話がきてしまったという、予感の的中めいた、なるべくして、来たるべくしてきたお話がついに来てしまったのだという、我が意を得たりという、収まるべきものが収まるべきところにホールインワンしたのを眺める満足感であると同時に、そこから起こる無限の円運動である。先にも言ったけどもう色々理屈ではなく文章もなってない。


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このアンニュイな、意味ありげな笑顔が。


 オタクは作品を語ることとキャラクターを語ることを同一視しがちである。
 そんだから、私が創作上の人物の「推し」を見出す大抵のきっかけは疑問だ。疑問がそのまんま興味になる。
 なんでこのキャラはここにいるのか。どうしてこんな言動を。来し方行く末。
 例えばー、アイドルマスターシンデレラガールズ白坂小梅ちゃんで例えればですね。略。

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 角谷杏会長が好きなんですよね。
 為政者。
 ガルパンのキャラで言えばいっとーに好きなのは本当の本当に間違いがない。
 なのにも関わらず近年のガルパングッズは各校の隊長シリーズに終始しておりそのために杏会長のグッズが少なめだとはどういうことかね。ほんと不満なんですよ一番くじ。まあおじさんはガルパンのガルの部分もともあれパンの部分は決して蔑ろにしてはならんと思ってるおじさんなんで単に杏会長がボコの着ぐるみを着ただけのグッズがあったとしてもー、あ、カメの着ぐるみきてたのはああああああうおおおー買うかなああーーーあの体型にタイトな着ぐるみがあーあーあーあーなんでおれガルパンのソシャゲ遊んでねえかなああーーーお前そんなこと言っておきながらヘッツァーちゃんも38tも持ってねえじゃねえかあーすいませんポチりますポチりますゥー。

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ともかく理屈ではないにせよ。


 お話の主人公というものを、お話の成立の重要度に求めるならば、ガルパンという物語は角谷杏会長がいなければかなり未成立に終わる。
 戦車道が道であるならば行き先が必要だ。
 西住みほが言った「見つけたよ。私の戦車道」という言葉をそれに当てはめるなら、彼女は行き先を見つけたと言うことにもなる。
 そして戦車道が武道であるならば、それは何の為に戦うか。何が為に戦うか。
 持って回った言い方になったけれど、ガルパンというお話のなかで、西住みほが戦った理由は、浅いところで言えば大洗女子学園を守るために戦ったのであって、その理由をもたらしたのが角谷杏会長なのだから、お話の重要度という意味では会長はもう一人の主人公とも言えるという話。


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 角谷杏会長は為政者である。
 己の為すべきを佳く識り、為すべきを為す。言うべきを語り、語らざるべきを言わない。
 思えば立ち位置の難しいキャラではあるのだ。強引な手腕でもって物語を引っ張るキーパーソンであり、しかし憎まれ役ではない。おそらくはキャラを立てるのに繊細なまでに気を遣われ、敢えて語らず描写だけで語られることのとにかく多いキャラである。

 例えば、作戦決定の際には必ず決定権を西住みほに委ねている。一度として例外なく、あの聞き慣れた「ねー、西住ちゃん」という一言で決定権を委譲する。
 責任の回避という意味合いもあるかも知れないけれど、それ以上に為政者と、実働部隊との立場を厳格にわきまえているようにも感じるし、まだお話の浅い回では西住隊長自身が他部隊から信頼感を得られるよう、とにかく彼女を立てている風にも感じられる。
 それから、戦車に関してずいぶんと詳しい。戦車の性能に不詳だったことがない。「38tは履帯が外れやすいからね」「89式よりはマシかー」「堅い奴らばっかで嫌んなっちゃうな」「戦車とは呼びたくない戦車だよね」とさらりと言う。そのくせ参謀役としてその知識を披瀝することはない。戦車道で廃校回避を狙うのだからと勉強を重ねたのかも知れないし、或いは戦車道経験者だったりするのかも知れないし。個人的には前者の説のが好きだ。
 あと郷土愛が深い。あんこう鍋とか干し芋とか。単に食い意地がはってるだけかもしれない。あと率先してやたら楽しそうにあんこう踊り踊ってたりとか。単に踊りたかっただけかも知れない。

 角谷杏とはこういう人物である。と明言はされない。ただ物語の陰にある部分で細かく積み重ねられる。
 だから、底の知れない部分がある。
 為政者たるを自覚し、分をわきまえて立ち回る。
 作戦の決定権は常に隊長に譲り、対外的交渉(他校との挨拶)には率先して出張り、廃校が決定した後もそれの回避のため奔走しながら、その希望が希望であると確定するまでは腹心にさえ何も伝えず「会長はそれでいいんですか?」と哀願されるように問われても、いいとも悪いとも応えずただ「いつも通りの学生生活を送れ」とだけ言い置き、寸前まで秘匿する。
 とにかく計算高い。
 だから、彼女の天性である図太さも、豪胆さも計算のうちではないかと思わせる。
 たまの愚痴も笑顔でこぼし、やーらーれーたーと明るく放言し、危険を伴う任務も「面白そうじゃん」の一言で引き受けるそれも。

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やーらーれーたー。


 むしろ率先して引き受けているようにもみえる。
 いやむしろ西住ちゃんが杏会長の手腕を見越して危険な任務でも全うしてくれると託している……?
 そこにある利害関係……いっそ共犯関係といってもいい?
 トウトイ……アンミホトウトイ……。

 けれどもそうした態度も綻んだことはあって。
 一つは、劇場版。戦場の視察か夜更けの散歩かをしている西住みほ隊長と角谷杏会長の会話である。
 さすがのさすがに今回ばかりは厳しい戦況を前に、会長が「どうする? 辞退という選択肢も……」と呟きかけたところに「それはあり得ません」と応えられるシーン。
 この夜の丘のシーンだけでも一時間とってほしい。
 とても大事で美しいシーンだ。
 会長はお話のなかで常に常に厳しい立場に置かれながらも、目に見える形で弱音を吐いたことは一度もなかった。それを初めて見せた。
 それは、こうまで為政者たるを自覚し、節度と分を弁えてきた杏会長が、初めて、進退の決定権を、今まで背負い続けてきた為政者としての責任を、他の誰かに委ねかけたシーンである。
 言うなれば甘えだ。
 それに対する西住みほの決然とした拒絶の美しさ。
「確かに今の状況では勝てません。ですがこの条件を取り付けるのも大変だったと思うんです」という前段の会話を連想すれば、「それはありえません。退いたら道はなくなります」という台詞も「この状況にしたのはあなただからその責任はとりましょう」という宣告にも受け取れるではないか。


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 そこからの「そうだね。厳しい戦いになるなー」「私たちの戦いはいつでもそうです」
 というやりとりもまた美しい。尊い
 大学選抜との対戦という条件を取り付けるまではまるで杏会長の孤軍奮闘であったかのようだけど、いざ戦車戦ともなれば『私たちの戦い』になるのだ。
 為政者と実働部隊とが繋がりあった言葉である。
 いつもそうでしたよ。という部分もまた。今回ばかりでなく、無理強いにより巻き込まれたTVシリーズの大会もしっかり『私たちの戦い』であると柔らかく肯定しているのである。
 トウトイ。
 ホントトウトイ。
 あたかも告白のシーンのようではないか。
 そもそもが「この条件を取り付けるのも大変だったと思うんです」て時点でもうツウジアッテマスヨネ……トウトイ……。
 しかもその後の試合最中にて「でも、背水の陣になるわ」という一言に「ウチはそういうの得意だよー?」と受けているのはやはりこのやりとりがあったからこそ……。

 当たり前と言えば当たり前である。
 学園艦の存亡なんて重荷に決まっている。会長としての責任感があっても、純然たる愛着があっても、だからこそ、天性の肝の太さがあろうとも軽々と背負えるものではない。
 もう一つの大事なほころびは、TVシリーズあんこう鍋とこたつのシーンである。
 一般生徒のなかでも、西住みほにだけは大洗女子の実情を伝えようとするも、あんこう鍋と思い出話に終始し結局「西住ちゃんには事実を知って萎縮するより、のびのび試合してほしいからさ」と伝えられずに終わってしまう。
 伝えるために呼び出したのに、躊躇のまま伝えられずに終わる。
 ここからのぞけるのは、やはり学園艦の存亡という重荷と、それを誰かにも背負わせることへの躊躇いである。
 西住みほの性格を考慮し、萎縮されて戦略に悪影響がでても困るという判断もあったかも知れないけれど。


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 角谷杏は豪胆ではあるけれど、脳天気ではないのかも知れないという言葉遊び。
「大洗も救えたし西住ちゃんも戦車道をまた好きになれたしオールオッケーだよねー」とは、たぶん言わない。
 責任の重圧と、それを誰かに背負わせることへの躊躇。
 為政者としての自覚。計算高い役割分担。


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 確かに最終的には西住みほは自分の戦車道を見出すことが出来た。
 戦車道が武道であって、何の為に戦うかを見出すことがその道であるならば、「為」を西住みほに与えたのは「為政者」である角谷杏である。
 武道ならばその道を歩む者はその道を突き進んだ先にしか答えはなくて、いっそその道を進むことそのものが答えでもあるだろう。自分で何いってるかちょっとわかんないけど、まあ戦車は進んだ場所が道となるらしいんで。
 ならば、道を為す為政者は、どうすれば答えを見出せるのだろう。
 為政の先に、確かに学園艦の存続という結果は出来たけれど、その道を作る為に払ったものはどうすれば清算できるのだろう。
 為政者というものは大体において結果をみることは出来ないらしい。それこそ政治の結果なんて10年や20年経ってやっと影響が出てくるようなもんだしね。要するに、為政者の最期とはただ去ることしか出来ないのだ。
 だから、学園艦の存続を勝ち得て、そこから初めて角谷杏のお話が始まるのだと言える。そんな気がする。


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 その一方で、酷くトラウマを植え付けられる結果となった戦車道と、そこから逃げて落ち延びた大洗女子という場所で、再び戦車道と向き合うことを無理強いさせられるというみぽりんと会長の出会いそのものがもうなんか作劇用語にあるそうなくらい劇的じゃないですか。極めて最悪な出会いから、通じ合い、信頼を育み、最後に固く抱き合うハッピーエンドですよ。
 もうハッピーエンドじゃん。ゴールインじゃん。文字通りゴールインじゃん。
 やはりみほあん大正義。結論はこれです。

スプラトゥーン2のここがイカんと思う。

 イカんと思う。

 発売を待ちわびSwitch争奪戦を乗り越えて購入したスプラトゥーン2は期待通りの面白さではありますが、主にガチエリアで、血眼になってガチりあって負けたり負けたり負けたりしておりますと、己の未熟さはさておいてゲームそのものに不備めいた部分があるよう感じられてきます。
 自身のウデマエでなくそれ以外に原因を求めるのは典型的なアレさではあるけれども。それにしてもなんかこう「勝つにしても負けるにしても一方的なゲームや似た展開が多すぎやしないか……?」と感じられるんですよね。
 勝ち負けそのものが問題じゃないんですよ。いやほんとに。
 同じ勝つにしても負けるにしても楽しく勝ったり悔しがったりしたいじゃないですか。いやほんとに。
 その理由や原因みたいなものを探り探り遊んでいると、なんかこー。ここがダメそこがダメと明確に指定できるような問題でなく、ただそこかしこに違和感として存在し、全体として、ちょっとずつダメな部分が蓄積された結果に「……なんかイカん気がする」という感じのダメさ。
 だからかえって根が深そうで、修正されるにしても相当の工事が必要なんじゃねえのかなあという不安はありますが、まあそこはそれとして。


 先に大前提を二つ書いておきます。
 ひとつは「でも楽しいけどね」という点。諸々の些末枝葉な問題はさておいて基本的に楽しく血みどろインクまみれに暮らしております。
 ふたつは「アプデで改善されるだろうけどね」という点。
 みっつは「ダイナモはいまのまんまでいいんじゃね」という点。

 間違えた。みっつだ。あああとよっつ目もあった。
「基本的にガチエリアの愚痴」です。


 特に二つ目のそのうち修正されるだろうねという点は大事で。そもそもブキの修正はリリース直後から8月中旬での実施がアナウンスされていたり、すでにスペシャルゲージの必要値には手が入りました。その点で、今作はこまめにユーザーの声をフィードバックしていく姿勢なのかなとうかがえますし、前作でも様々なステージが様々な形で修正改修を加えられまくりました。


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 前作でみられたステージ修正を「改修工事」と表現。こういう世界観への配慮は嬉し楽しい。


 なのでまあ、この文章を「だから2はダメだ!」みたいな指摘として効力を為さずただ単に「リリースから2週時点だとこんな感じだったんだね」という将来に向けてのメモとしての価値以上にはなんないことを担保するものです。


エリアまでの緩衝地点の存在がイカん。

 今回のステージ設計の基本思想なのかな。どのステージにも、自陣・緩衝地帯・エリア・緩衝地帯・敵陣て感じの構成になってるのね。
 エリアまでに間がある。この緩衝地帯があるおかげでワンサイドゲームが起きやすくなってるよう感じます。
 マップでいうとこのへんね。

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 前作にも、リスポーン地点とエリアとの間にクッションのようなスペースはままあったけど、今作の一部マップではそれがずいぶんと明確に分かりやすく存在している。
 ついでにその地点に諸々の配慮が足りてないように感じられる。

 緩衝地帯があると何がイカんのか。
 功罪あれどもどっちかというと罪の方が多い気がしますが、要するにエリアを保持している防衛側が有利になります。
 少し詳しく言えば防衛側の有利が増すというか。
 ただでさえ、エリアをとられた側はカウント進行・リスタートによる迎撃準備などなど諸々のリスクを背負わされて少なからずの不利状況に陥るわけですが、そっからさらにさらに不利を背負わされることとなる。
 その理由をざっと列挙しますと。

単純にエリアまで遠くなる。

 侵略側は時間制限を背負わされたも同然。要するにただでさえ不利を背負っているわけで、そこからさらに乗り越えなければならない緩衝地帯を用意されてさらに条件が悪くなります。

防衛側の突出がローリスクに。

 緩衝地帯のおかげで、敵陣前は防衛側にとってもさほど不利な地形ではなくなりました。なのでみんな前に出る。
 前に出て形勢不利となれば逃げればいい。それでも塗り広げることでのスペシャル確保や時間稼ぎは成功し、ローリスクに勝ちへ近づけます。
 ついでに緩衝地帯のほとんどは構造上撤退もしやすい地形になってる。その理由は、緩衝地帯は侵略側にとっては侵略地だけど、侵攻側にとっては「通過地点」なんだよね。みんなエリアを取りに行く最初はほぼ必ず緩衝地点を通過するわけで、そこで通りづらかったらゲームのテンポが削がれるからね。
 これの何が悪いかって、勝つためにはそれが分かりやすい手なのでみんなそれを選ぶ。
 結果的に勝ちパターンも負けパターンも数が絞られてなんか同じ試合展開になりがち。

防衛側もスペシャルを溜める余裕が出てくる。

 緩衝地帯という塗り地点があるから当然のことですね。これのおかげで侵略側の数少ない利点である「スペシャルで形勢逆転しやすい」て点が剥奪されてイーブンに。
 しかも今回のスペシャルってなんか防衛側が使った方が性能を発揮しやすいのが多くねえ?

センプク待ち伏せされやすくなる。

 緩衝地帯という広場の存在は待ち伏せからのキルというこのゲーム特有の強力なアンブッシュの成功率を高めます。
 さらに緩衝地帯の存在によって裏取りのリスクが増大しており(後述)、結果、緩衝地帯からの復帰を選ぶイカが増えてこれもまた成功率上昇に寄与。
 しかも防衛側はカウントを進めるための時間稼ぎさえできればいいので、相討ちでもかまわない。かなり分のいい戦略なのでそれを選ぶひとも多くなります。

塗りブキとキルブキ格差が生じる。

 もちろん緩衝地帯は自陣近くから比較的安全に塗れる地点が用意されています。でも今回それもあんまりないように感じねえ? という点は検証不足なんでいったん置いときますと。
 安全に塗れる地点から緩衝地帯を塗りつぶし安全を確保してからの侵攻、というのが復帰時の基本パターンなのは言わずもがなだけど、その点で塗りブキの存在感はあがっています。
 けれどもみんながみんなわかばモデラーを使えるわけではない。じゃあといってガロンやプライムばかりでは押し込まれた時に弱い。
 ならばと選ぶのは塗りとキルの両立が可能なブキだよな。そう。ヒッセンのことだね。

あと焦ってんのか敵エリアの発光に魂がひかれてるのか緩衝地帯をろくに塗らずにつっこんでく稚魚イカが湧く。

 Sランクでも割とみるのはなんなんでしょうね。きみたちはコジャッジくんに「足並みを合わせて進むのが肝要だ」と教えられなかったのかな。



 上記の諸々はステージごとに違いは出てきますが大なり小なり存在するイカん点です。
 これらが渾然一体となって「緩衝地帯は用意すべきではなかったのでは……?」という気分にさせられます。
 何よりも、途中に書いたけど緩衝地帯までの侵略が分かりやすい適解なんでみんなそれを選んで似た試合展開ばかり起きがちて点を問題視したい。
 せめて各ステージにもっと安全に塗れる地点を用意するか、緩衝地帯が進行しやすく、しかし撤退はしづらいみたいな投網めいた仕組みでハイリスクミドルターンな感じにしてくれれば……。
 他のイカん気がする点を思いつくまま書いていきますと。

一度下りると逃げづらい。

 これも一部ステージの話だけど大事な話。前作と比較すると一度下りるとヤるかヤられるかの二択になるステージが多い。そして、下りなければ塗れないステージもまた多い。

 緩衝地帯の存在が二つの理由でその印象に拍車をかけてるかな。

  • ステージの広さは有限で、緩衝地帯を設けた結果、エリア付近の広さが減らされ逃げ場が少ない。
  • 緩衝地帯へは一応、多少、侵略側が踏み込みづらくなっている。

 結果的にヤるorヤられるの二択で「逃げる」て選択肢がなくなっているよう感じます。
 それって要するに塗りブキの存在価値の低減であり、ヤるorヤられるの二択化は「塗る」という選択肢が割を食うということでこのゲームの特性が削がれることのような気がしませんか。

 机上の話になるけど、逃げづらいということはそんだけ数を頼みにした攻勢でゼンメツさせられやすいてことなんだよね。
 これがワンサイドゲームが頻発する(ような印象を受ける)理由になってる気もする。

ステージに凹凸がありすぎ。

 ほんとは好きなんだけどなあ。高低差のあるステージ。
 しかし今作では細かいデコボコがありすぎて、センプクしやすいし、中距離以遠のブキが相対的に弱体化くらってるし、そのうえでヒッセンが環境に合いすぎだ。
 要するに、先に有利をとった方がより地形的有利を確保しやすくなってるてことですかね。

エリアの位置おかしくない?

 一部のステージだけではありますけどその一部がヒドい。特に造船所ステージはおかしい。お前これ雰囲気だけで設計したんじゃないですかもしかしてってくらいヒドい。
 何がひどいかというと見晴らしが良すぎて侵攻ルートがモロバレ。広めの緩衝地帯も含めて防衛側がガン有利過ぎな気がしませんか。


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 まあ、それはそれで最初の争奪戦でのワンミス即終了というスリルはあるのでそういうゲームと割切ればいいのかも知れないけど……。
 おかげで造船所の勝率4割切ってます。
 前作だとほぼ全てのステージでエリアは低い位置にあったのに(例外的に団地。アロワナは微妙なとこ)。
 何の意図があっての変更なのか理由がわからないレベルでちょっとおかしい。

スペシャルの不整合。あるいはジェットパック一強。

 このゲームは塗り広げられた方が強いという特性があるのである意味当然ではあるんだけど、それにしたってほとんどのスペシャルが防衛側が使うと強いのばっかりじゃね?

ジャンプによる精度低減ペナルティって本当に必要?

 イカはずいぶんと高軌道なシューターであって、パルクールだのウォールランだの目じゃないレベルで駆け回ります。
 そういう多次元なゲームでテンションの高いゲームだからこそ楽しい部分はあるのに、ジャンプ撃ちでの精度悪化てその部分を削いではいないか。
 まあ精度劣化は前作でもあったんだけど、今作では細かい段差や障害物が増えたので余計気になる。もちろん、それだけ場所取りや障害物の利用、ジャンプ撃ちと歩き撃ちの使い分けといった玄人レベルの楽しみは増えるから善し悪しな部分ではありますが。あるんだけども。

環境に合いすぎているヒッセン。

 まあ修正が約束されてるけどね。

  • 長距離武器の相対的弱体化による中距離武器の価値上昇。の中で、同射程内で図抜けているタイマン性能。
  • 細かい段差のある中で、障害物を無効化して攻撃できるという特性。
  • ジャンプ撃ちによる制度悪化の事実上の適応外。
  • 緩衝地帯を奪いやすくする瞬間的な塗り能力。
  • 緩衝地帯から敵安全地帯にも攻撃可能という特性。


 と、単に強いけどそこからさらに環境に合いすぎてる。まるで公園の池に放たれたブルーギル
 それでも前回初期のローラーに比べたらマシだと思うけどね。ロラコラは文字通りゲームぶっ壊して短射程ブキの存在を駆逐してたから、アレに比べると……比べてもしょうがない話をワキに置いといても、ステージの調整不足という前では問題点としては比較的些細



 などなどなどなど……。
 書いてるとどんどん紳士の皮が剥がれ落ちて口から汚めのインクがびちゃびちゃ出てくるのを感じるけどともあれ諸々出し終えてすっきり。
 このひとほんとエリアしか遊んでないんだね。
 まあ、一度とられると奪い返すのが難しい短時間決着なエリアルールもそれはそれでそういうものと割切れば楽しくなくはないのだけど、でも今のところそれはゲームの短絡化であるよう感じられるのです。それが今後どうなるかはわかんないけど、ともあれリリース直後の印象て点ではメモしておく価値はいずれ出てくるでしょう。オレだけに。
 なのでバイトでもしながらアップデートを待ちたいと思います。


 それにしてもサーモンランの楽しさこそが、このスプラトゥーンてゲームの構造そのものの強度を証明してるように感じるんですよね。
 ほんとサーモンランで長めのCOOPなキャンペーンとか遊びたい。対戦はそれはそれとして切り離してフルプライスなゲームにでもしてくれればL4D2以来の大傑作に列せられること確実だと思うんだけど、マジでどうですかねイカ研究所さん
 L4D2の対戦もあれはあれで良く出来たゲームだったんだよなーと話題がそれ始めたところでぬりたくーるテンタクルー。

ガチャのゆがみと小梅ちゃんのひずみとわたしの。

歪んでいるとして。


 ソーシャルゲームにおけるいわゆるガチャ商法が歪んでいるのは事実だろう。
 事実だろう。
 事実ではなかろうか。
 違うだろうか。
 なんか違う気がしてきた。例えばギャンブルあたりと比べてみたらどうだろう。ギャンブルはどんなものであれ胴元が利益を得るよう確率が設定されているので、どんだけ金と時間を費やしても費やせば費やすほど損に傾く仕組みで要するに金と時間で得られるものは一時的な興奮のみてことになる。
 金と時間を費やして得られるものは一時的な興奮のみ。
 こう書くとガチャと大体同じだね。
 ……ギャンブルて歪んでるんかな。……まあ歪んでるかな。多くのギャンブルはあきないというよりかは集金手段であって、公共事業に類するものとして世の中に存在を認められているわけだから……まあそっち方面に話を延ばすとややこしいというか話が別方向に進んじゃうからいいや。

 ガチャは歪んでると言うことにしといてください。

 対象Aをお求めですか。お金と引き換えに入手してください。
 しかし対象Aはいくらで購入できるかわかりません。
 ひとによっては120円で入手できますがひとによっては50万円費やしてもお売りできません。
 ついでにお渡しするタイミングはこちらが掌握しております。50万円と交換にほしくもないものが50万円分お手元に届くかもしれませんが、50万円と120円を費やしたタイミングでお売りする可能性もあります。
 そんなだからお渡しした商品の金銭的価値は一切保証できません。
 購入した当人にのみ利用が可能であり転売や譲渡・交換は一切禁止されております。
 120円で買おうが50万円で買おうがそれの価値はほぼ皆無です。
 お手元に残り続ける保証もありません。こちらの提供するサービスの終了とともにあなたの利用権も一切合切失われます。

 まあそれはそれとして。


小梅ちゃんのなかにあるひずみ。

 今回のヨモスガラパーティーは、久々に、私のみたかった小梅ちゃんの表情(側面)をみることができたような気がするんだよね。

 小梅ちゃんの特徴といえばホラー・スプラッタ映画が大好きで、死者の存在を見通し心を寄せることができる点でしょう。
 死と腐敗と暴力と危険と血と暗がりや孤独と悲しみ。
 一般にアイドルから連想されるポジティブなイメージとは真反なそれらに心を砕き、自らの個性だと自認し、それらへの愛おしさとともにステージという明るい場所に立つ。


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 廃墟のなかで、凶兆を多く背負い、死臭のただ中で自然に笑い、あまつさえ「こっちにおいで」と誘う。
 なんて蠱惑的な。あるいはなんて淫靡な。
 死を無視して通ることのできない私たちはだからこそ死を普段ないもののようにして過ごす。それを、そこに、何を衒うことなく触れることのできる小梅ちゃんは無垢なままに禁忌を犯しているのにも等しく、死生観に頬寄せるその姿は有り体にいえばエロい。
 ひとの視線を集めることもアイドルとしての素質ならば、極めて強力な武器を小梅ちゃんは無自覚なままに振りかざしている。

 ネガな部分を克服し、ポジティブの象徴であるアイドルへと成長し皆の憧れる存在となる。
 それも物語としては王道ではあるけれど、ネガな部分は小梅ちゃんにとって心臓か、脳髄か、目玉か、舌か肺か指先にも等しく、彼女自身もそれを自認している。だからその道は選べない。
 ゾンビを愛し、亡霊を友人とする彼女の核にあるのは「虐げられたもの、押しやられたもの、輪に加われぬもの」への憐憫と共感であろう。
 であればこそたどり着いた「私、みんなとちょっと違うけど……アイドルになって、良かったです」「私、暗いけど……みんなも暗くてもいいんだよって……ファンに伝えたいな……」という境地。
 だからこそ小梅ちゃんは怪物たちとともに踊る。
 忌まわしいものに手を差し伸べ、救われないものの手を取って。そのダンス・マカブルこそが小梅ちゃんのみが為し得るアイドルとしての姿だ。


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 要するに小梅ちゃんはネガティブな部分を克服してはダメなのだ。ネガティブも自分自身だと認めたからこその小梅ちゃんなのだ。
 明るく、健やかであることだけがアイドルじゃねえ。
 アイドルと、アイドルというイメージから反目するものごとと、それを同時に抱えたひずみこそが小梅ちゃんであり。
 小梅ちゃんのテキストを担当される運営の皆様方におかれてはその部分にこそ重きを置いていただきたく願う次第である。

 あとエロいよね今回の小梅ちゃん。
「露出は抑えながらもきわどさを忘れないフェチズムにあふれた衣装」てのは初登場時から続く小梅ちゃんに欠かせぬ魅力の一つであって、その点でも今回はなんだか久々な気がしてああああもうステキーエローイという感じだ。
「ここが脇ですよ!」と教えてくれるようにひらひらして視線を集める肩紐といい、ピンポイントに透けたへそ部分といい……似合う曲が極端に限られるという欠点こそぶっちぎりつつ、それらが強調されるPVならなんでもオススメだけど敢えて選ぶなら「恋のハンバーグ」だろうか。
 曲調のせいか、脳みそが絶好調な状態ならエプロン姿にみえてくるので挙げておきたい。脳みそが絶好調ならな!


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なにがゆがんでいるのか。

 ガチャが歪んでいるとして。
 歪んでいるものに適応できるならばそいつも歪んでいるのだ。
 お金の価値はひとそれぞれというのはもちろんだけど、ソシャゲの限定ガチャに50万円も費やせるひとは少なからず歪んでいるに違いない。
 この場合、歪んでいるのは金銭感覚となる。
 その歪みがどれくらい大きいかはわかんないけど。歪みの大小を問わないならば費やした金額が100円であれ1万円であれやっぱり歪んでることになっちゃうけどね。

 だから私も歪んでいるのだろう。
 私はワーキングのプーさんだからいくらかなりとも金銭感覚の歪みは少なく済んでると思うけど……吝嗇はそれはそれで歪んでるといえるけども。
 その代わりに他の部分が歪んでいる気がする。
 言葉に直せばたぶん執着。

 小梅ちゃん限定ガチャを、限定小梅ちゃんをくだらないものと切って捨てるのはそんなに難しくはないはずなんだよね。
 もしも私に「小梅ちゃん? そんなもんに金使ってるの?」と言うひとが現れるなら私が凶器になるものを手にしてない状態にしといてほしいけど。
 まあ。難しくはないはずなんだけど。
 それを難しくないと受け入れるのが怖い。
 何が怖いかというとコンテンツとのつながりを失うのが怖い。

 四肢の冷たさにガクガク震えながらクレジット決済で有償石の購入を繰り返すのも。
 消えた金額で出来たことを思って気力を失い労働そのものに嫌気がさすのも。
 限定ガチャに備えて無償石を貯め込むべくイベントをこなすのも。
 そうしてこなした時間を時給になおして入手した石の実質価値を思うのも。
 あるいは、今までCoイベントの報酬は逃してないのでそれを維持すべく時間を割くのも。
 諸々もうやりたくなければやらなきゃいいじゃんという正論の前には無力な労力である。

 けれどもそれを無意味だと断じてしまったならば、デレステというゲームのほぼすべてが無価値なものになる。
 ひとは、あるいは私は、意味がないと感じるものに付き合うのがひどく苦手な生態をしているのだと経験的によく知っている。
 たぶん「空しさ」とは万人にとって毒だ。強烈な。

 私は小梅ちゃんが好きだし、アイマスもしくはデレマスというコンテンツがだいぶ好きだ。
 それとの繋がりはあんまり失いたくない。
 デレステというゲームはそのコンテンツを繋ぐ線のなかでは相当太い方には違いなく、そしてそれが切れてしまえば修復の難しい線であることは想像に難くない。
 もちろん、デレステを辞めながらもコンテンツに触れ続けることは可能だろうけど、それら代替え手段にある種の白々しさを感じずに続けられるか。白々しさを感じる自分に嘘をつきながら続けられるかどうかはあまり試したくはない。

 この執着がわたしにあるゆがみなのだろうなと思う。
 小梅ちゃん限定ガチャに震えなければ、それに震えるだけの熱量をデレステに対して持てなければ。私はそれに震えていると自覚できなければ。
 自己欺瞞に近いだろうか? たぶんそうだと思うけれど、自覚せずにはいられない。
『愛と執着とは似て異なるものである』


ゆがみは悪いものなのか。

 ところで、ガチャが悪かというとそれはそれという話をしたくなる。
 色々と意見は世に氾濫せども、ガチャを回しているのはどこまでも彼の指であって自己意思である。
 嫌ならやらなければいい。正論だ。
 キャラクターやゲームへの愛着を売り物にして、「お前の嫁はあずかった返してほしくば身代金を用意しろただし金額は時価となりますし一度返した嫁はまた何度でも攫いなおします」とか言う商売形態もどうかと思い続けてもはや数年ではあるけれど。

 ガチャという集金形態が効率的すぎて、ガチャを集金手段としないゲームがどんどん追いやられてるという意見もあるだろうけどそれが妥当な意見かというといくらか疑問はでてくるし。その話はいいや。

 それでも本人が納得して出資してるからいいじゃないか。
 デレマスがアニメ化した頃を境にして、ガチャのことを「形を変えたクラウドファンドだ」という表現が散見されるようになったと思う。
 アニメ一話をして「おれたちの課金が正しく報われた」という声もあった。私個人としてはアニメの出来にはいくらか意見はあれども今回はその話はどうでもいいとして。
 月末ガチャに50万ぶっこむようなひとがいるからこそ小梅ちゃんのモデリングは美しくなるし、総選挙に目の色を変えるひとがいてくれるからこそ新たに声帯を獲得するアイドルがでてくる。
 100%望む形で反映されるとは限らないけれど。
 デレステもテキストに注文をつけたくなることが多々あるし、CDもこれ以上は望むべくもないリリースペースではあるけどもそのなかで極めて素直にこれは好きだ! といえる曲が多いかというと決してそうではないし。まあそれはいい。

 歪んでいるのが事実としても、歪んでいることが悪いかどうかはまた別問題なのだと思う。

 だから、私は限定小梅ちゃんは半ば以上諦める準備をしていたのだ。
 限定ガチャにいくばくか突っ込んで、やたらさらさらと流れる汗とともに小梅ちゃんへの執着を確認できただけで、私にとっての限定ガチャの意味は果たせていたようにも思う。
 あとは、タイミングよくきてくれた一日一回無料ガチャキャンペーンと、せめてもの60ガチャのみを回して、いつかくるだろう限定復刻まで夜露を舐めて侘しく過ごそう。それがまたデレステを続けるモチベーションに、コンテンツとのつながりになるだろうと。

 わたしは元々ホラー映画が好きだ。怪談話が好きだ。遊園地でも絶叫マシンは同じものを何回か通じて乗る。
 恐怖もまた娯楽だと知っているからだ。
 娯楽には元々そういう側面がある。

 ちょっと前に、どこかのお坊さんが「ソシャゲを辞められません」という相談に答えて「私は艦これを辞めました。優れたゲームとはひとを爽やかな気持ちにさせてくれるものです」と答えててうるせえ知るかバカやろう貴様のような虚構に募る感情を軽々しく否定するようなやつがL4D2を知ったツラで語ってんじゃねえよ例えば食いしばった歯から血のにじむような思いで怒りと憎しみを抱え夢中であそぶ対戦ゲだってあったっていいじゃねえかとか思ったことがあるんだけど。
 仏教でいうと執着とはまず捨て去らなければならないものだそうです。

 やらなくていいこと、知らなくていい感情をわざわざやりに、知りに行く行為という側面が趣味にはある。
 山登りや自転車乗りなんかはやらなくていい苦労をわざわざ自分からやりに行っているともいえるわけで。
 ホラー映画もわざわざ自分から恐怖を感じに行っているのであり、恋愛ゲームなんかわざわざ自分から恥ずかしい思いをしに行っているとも言える。

 ガチャという虚空に消えていく無価値なものに費やしたとしても、この胸が抱える痛みは現実なのである。
 とかいうと観念的すぎるか。
 だから、とにかく、こう。
 極論なのか、詭弁なのか、開き直りなのか錯乱してるのか判然としないけれど、意中のアイドルを入手できないこの脂汗も、あるいは、意中にアイドルを定めることによる醍醐味とも言えなくも……。
 ……ああ、やっぱりそう公言するのはどこか憚れる。
 それにしたとしても、その歪みこそが。あるいは。

 歪んでいることが悪いことかよいことか、結論はできないとしても。