デレマスのカバー曲リクエストCoアイドル全員分そのいち。
サイゲームスさんはぼくをライターとして雇ってください。
(さて何事もなかったかのように)
アイドルマスターシンデレラガールズスターライトステージにて、割と急に『アイドルにカバーして欲しい曲のリクエスト企画』が始まりまったのが2018年の年の瀬付近のお話でして。
ユニット曲でのリクエストも指向してか、歌って欲しいアイドル指名のプルダウンメニューに、アイドル全員分の名前が用意されてたんですよね。
そう。
全員分。
声のついてないアイドルも含めて。
それを確認した際、私に閃いた感情をそのまま文字にしますと以下。
なに。
それは。
挑戦?
おれへの挑戦?
という具合ですが。まあ。今改めて思うと
……何が? て感じですね。
でもまあなんかさ。割と共感してもらえる反応なのではあるまいかと。
何がどうねじくれてどれだけパパとママの愛情が足りなかったのかはわからんけどもなんとなく奮起した私はCoアイドル全員分と比較的認知を得ているCoユニットのなかから数組とのリクエスト曲をだかだかだかだかだかだかと書き連ねて送信させて頂いたのでした。
色々正気じゃない気もする。
あ。そういえば、送信したリクエストリストの一部かつ Google Play Music 契約者限定ではあるけれど、公式に聴くことが出来るみたいなんで、もし興味が向かれましたらどうぞ。
play.google.com
※当記事中に引用されました楽曲及び映像の著作権に関してましては、youtubeの包括的ライセンス管理に則り引用させて頂いております。
さて。能書きはともかく、以下に本編の能書きです。
- 渋谷凛 Birthday Party / gonna be fun
- 速水奏 come again / m-flo
- 桐生つかさ incl. / meg rock
- 大石泉 ボクのマシュ… / セラニポージ
- 荒木比奈 ランデヴー / YUKI
- 上条春菜 風になる / つじあやの
- 川島瑞樹 悲しみがとまらない I CAN'T STOP THE LONELINESS / 杏里
- 松本沙理奈 ひとりになれない / 惑星アブノーマル
- 佐々木千枝 部屋とYシャツと私 / 平松愛理
- ブルーナポレオン ぼくらの季節 / さよならポニーテール
- 橘ありす あなたの一番になりたい / 南央美
- 藤原肇 春の風 / 熊木 杏里
- 梅木音葉 東京 / 手嶌葵
- 瀬名詩織 海になれたら / 坂本洋子
- 浅利七海 素晴らしき紅マグロの世界 / 谷山浩子
- 浅利七海 いかれたbaby / フィッシュマンズ
- 綾瀬穂乃香 fish in the pool / ヘクとパスカル
- 八神マキノ ラブスコール / 大野 雄二
渋谷凛 Birthday Party / gonna be fun
しぶりんというと、ニュージェネレーションズのあと二人も含めて、シンデレラガールズの看板役であることは名実ともに事実であると思います。
その起用からなる経験によるものか、あるいは、そうした立場を目にすることが多いゆえの印象か、近頃の凛からは旗手として振る舞いを感じることも多く、敢えて俗な言葉を使えば『幹事役』というか。
その自覚の有無はともかくとしても、アニバーサリーなイベントで代表めいた存在感を発揮している姿が散見されます。よく口にする『走り続けたい』という願望を現実に実行し続けているからこそ、自然と先導役という立ち振る舞いになるのかも知れません。
ということで、このうえないアニバーサリーイベントであるところの「バースディパーティー」の歌です。
誕生日の歌ですからもちろん、祝う対象との親密さが心地よい歌ですが、それがプロデューサーとの対話を思わせます。
「永遠の文字に目がとまる」というフレーズが何よりも凛に似合っているよう感じますし、いっそ「躍起になって妬いたことも今夜はチャラにして」も、今日だからこそ言える本音という見立てもいい線だと思います。
『嫉妬なんかしてないよ。みんなの面倒をみるのもプロデューサーの仕事でしょ?』
みたいな会話が過去にあったとして、ほらやっぱ妬いてたんじゃーんみたいな妄想がデスネ。
艶やかで伸びのあるともさかりえさんのボーカルもまた、福原綾香さんの声質で歌い上げて欲しい理由になっています。
(余談。
年代によるものか、それとも件の番組が当時サブカルチャー方面にやたら先進的だったためか
今後ちまちまちまちまとポンキッキーズ繋がりなリクエスト曲が顔を出しますがどうか悪しからず。
速水奏 come again / m-flo
「なんども、着信のチェックしてみても you won't appear
こっちからかけてもいいけど、my pride gets in the way」
ほらこれはもう速水奏の歌でしょう(性急)
つれない相手への未練を振り切れず一夜を過ごすという、それだけといえばそれだけの歌ですが、極めてオシャレな曲です。
例えばこれが演劇だとすれば場面も出来事もとても限られたものになりますが、演者が速水奏であれば魅惑的に演じてくれるはずです。
夜、多くのひとに囲まれながらも孤独、浮かされたような情熱、それでもどこか他者に依存しがちで、自己批判的な冷静な目。
「切ないメロディーに涙しないようにクールにね」と、どれもこれも速水奏を構成する要素に程近くあります。
桐生つかさ incl. / meg rock
自らが未熟なことを自覚し、それを悔やみながらも、いっそ肯定して努力を約束するような歌です。
という解釈であってるかな。あってるよな。
JK社長こと桐生つかさ社長は自分さえ含めた環境材料を把握し、分析し、ベストな結果に近付けるよう努力を尽くします。
『あー、足りないことばっかだな。マジで』なんてぼやきながらも、例え目の前に確実な失敗が待ち受けて、妥協の道しかなかったとしても、最善を尽くすことしか選択肢にない。そういう強さが彼女の芯でしょう。
「泣きたいときには泣いちゃってall right」という印象的なフレーズのとおり、まるで曲の始終泣いているかのような雰囲気もある歌ですが、「頭でわかることが心ではできてない」と自己分析の思考も窺えるミスマッチの心地よさがこの歌詞にはあります。
そのあたりが、チャレンジを恐れず、それゆえ度々ぶつかる壁によって一時陥るかも知れない自己嫌悪と、そこからくる反省と、立ち直るまでのつかさ社長の思考を追っているような合致を感じます。
根拠のない自信でも、という図太さから感じる羨ましさと似たような感情をつかさ社長からも感じたことがある気がするなあ。と。
(余談。
アニメのテーマソングだったらしいけどそちらは未見ですすいません。
大石泉 ボクのマシュ… / セラニポージ
大石泉の大事な個性と言えばやはりプログラミングですが、その部分を表現しつつ、彼女が歌うのに似合う曲は……と思えば、もはやこの歌しかないようにさえ感じます。
ダンスエレクトロですがポップになりすぎず、打ち込みサウンドでありつつ無機質になりすぎない曲調も如何にも彼女らしく。
牽強付会気味ではありますが、彼女の大事な相方である村松さくらはお菓子好きであり、マシュマロにも言及があります。歌詞中の『「Cute」な歯触り』や「S(さくらのS?)のマークが目印さ」あたりが暗喩を思わせて、実際どう受け取るかは聴者次第ではあれやはり選ぶならこの曲だろうなと。
個人的な願望ですがササキトモコさんの曲をCoolにもくれ! ください!
(余談。
いうてもセガのゲームの曲だしなあ……と言ったところだけども伊織大先輩がカバーしてんのねセラニポージね!!
かえすがえすもササキトモコ曲をCoにもくれ! くれよ!!
荒木比奈 ランデヴー / YUKI
まあ荒木先生ならアニソンよね。それも深夜。というところからもう一歩踏み込んでみて、イマドキのハタチともなれば『非オタク集団とのカラオケで歌ってもそれとバレにくいアニソンリスト』の一束くらいは備えてるんじゃね? との妄想を主体に選曲しました(実際にこの曲はアニメとのタイアップはありませんでしたが、多数提供されてるシンガーなのではあります。
もちろんそうした妄想のみならず、この歌と選んだ理由も大事です。
こちらの歌は、ロミオとジュリエットという名が引用されるとおり、強くヒロインを志向した曲のように感じられます。
荒木比奈の大切な個性に、自己批判の気味が根深く、どこかアイドルとしての自覚に不足しているという部分があります。もはや欠点ではなくそれも大事な特徴。
そんな彼女だからこそ「自己陶酔」という力を借りての助走で「今日は、今日だけは私がヒロイン!」と跳躍する。それは同人作家という、ストーリーメイカーとしての経験から得た手段なのではないでしょうか。
そうした妄想を下敷きにすれば、とてもロマンチックの色の濃さが疾走感さえ生んでいるこの歌は推薦して余りある……き、聴きてェ……この歌を歌っている荒木先生の歌を聴きてェ……!! という感情が溢れてしまいます。
是非。
(余談。
ガチ選曲の中でもトップガチ。
上条春菜 風になる / つじあやの
あらかじめ申し上げますが、完璧な選曲だと自負しております。
上条春菜といえば「眼鏡!」「猫!」「あと眼鏡!」ですが、歌手であるつじあやのさんは当人が眼鏡をしてるのももちろんですが『恋する眼鏡』というミニアルバムをリリースしたことさえあります。
歌そのものに関してはアニメ『猫の恩返し』のテーマソングでした。
これほどまでに眼鏡と猫を兼ね備えた曲が他にあるでしょうか。他に無ければこれこそが上条春菜がカバーするのに最高の曲であるはずです。
もちろん、曲も爽やかに人々を元気づける、穏やかながらもリズムの明瞭な曲調で彼女にぴったりです。
『キミと出会えた幸せ祈るように』という歌詞が指す『キミ』が、プロデューサーのことかメガネのことかは聞き手次第ということにしまして。
川島瑞樹 悲しみがとまらない I CAN'T STOP THE LONELINESS / 杏里
カバー曲というと、基本的には「違う顔がみてみたい」「こんな表情もみてみたい」という変化球を狙いがちになりますし、実際そうした意義もあると信じますが、川島さんに至ってはどうしても『あの頃』な曲を歌って欲しいという願望を禁じ得ません。
昼下がりのカフェテラス!
不意に鳴る電話! 電話が鳴ってる!
「あの人と 別れてと彼女から」というあまりにもストレートな痴情のもつれこと三角関係!
力強いコーラスと、そしてサビのリフレインで静かにフェードアウトしていく演出!
極めていい意味でこの大仰な感じが、極めて極めていい意味で『時代がかっている』!
その一方で、一周して新しいとでも形容すればいいのでしょうか。透明感と表現したくなる爽やかな曲調が掛け値なしに素晴らしいです。
この曲のリリースは83年だそうです。もはや半世紀近く過去ともなればあの頃という概念では追いつかない気もしますが、この古びない清涼感はまさしく時を止める川島さんにこそ歌いこなして欲しい曲です。
(余談。
このもじかき企画のために80年代付近のアイドルソングを聴きあさってたけどマジ聴き馴染む。
あの頃の曲ってほんとワンフレーズのインパクトでぶち殺しに来るのが潔くてさあ……アレよね……コピーライターが若者にとってもっとも憧れだった時代の作詞術よね……今の時代の広告なんてさあ……。
松本沙理奈 ひとりになれない / 惑星アブノーマル
松本さんってパフォーマー気味なところがあって、それを自覚してるところがあるよな。というのは私の彼女の印象ですが、そのあたりをとっかかりに。
まず「ひとりになれない」という箇所そのものが、彼女がアイドルを志望した理由である『私はもっと注目を浴びるべき』というものに繋がります。
ただそれだけでなく、支離滅裂なほどに、衝動的に自意識を歌ったような歌で断片的ではありますが、だからこそその断片が切実に胸に来るものがあります。
松本紗理奈当人も、歌もダンスも苦手という意識があり、だからこそプロポーションで勝負するという自信をアピールする一方で、折に触れて自分よりも『立派なもの』を持っているアイドルを意識している様子が散見されます。
「特別 特有 いーなりたいと思ってた」という歌詞や、それら散らばる衝動にも似た感情を、あるいは彼女も人知れず抱いていたりするかもしれないなーという興味と共に選曲しました。
佐々木千枝 部屋とYシャツと私 / 平松愛理
カバー候補者やリクエストも多そう。むしろまだカバーされてないのが不思議な部類。主にCuteの愛が重いと称されがちな方々に。
偏見ですけど。まあそれだけ家庭的なアイドルが多いということにしまして。
歳に似合わず家庭的なスキルを持つ佐々木千枝さんですから、歌うのも歳に似合わない花嫁ソングとかいい具合にミスマッチでよろしいのではないかと。ギャップ萌えっスねギャップ萌え。
早くオトナになりたいと語り、あまり経験したことがない料理でも作ると宣言するのは『愛妻弁当』だったりする、潜在的な花嫁願望も推薦に欠かせない要素です。
九〇年というもはや世代を跨いでしまうくらいの次期に歌われた花嫁観ですから、現代の感性とそぐわない部分もありますが、むしろその違和感が「背伸び」を思わせていい効果を生むのではと期待も出来ますし、例えば(同じブルーナポレオンの)川島さんから影響を受けた花嫁観だったりしないかと想像を膨らませることも出来そうです。歌手の平松愛理さんのオクターブ高めな声質も千枝ちゃん(今井 麻夏さん)ともマッチしてるんじゃないかなと。
そして、千枝ちゃんとこの歌とが重なる部分として大事にしたいのは
「愛するあなたのため きれいでいさせて」
「人生の記念日には 君は綺麗といって その気でいさせて」
というフレーズです。
『…かわいいじゃなくて、キレイって言われたいなぁ』とは千枝ちゃん当人の台詞ですが、この台詞にこそ彼女の個性が集約されているように感じます。
ブルーナポレオン ぼくらの季節 / さよならポニーテール
せっかくユニットでのリクエストを送れるのですから、ブルナポを送らないわけにはいきません。
とはいえ、年齢も趣向もバラバラの五人をきれいにまとめ上げられる曲となるとずいぶん難度が高くはありますが、それでも五人が共通しているのはアイドルという同じ夢を目指しているところです。
なので、より率直に、夢を語り合うことを歌った歌をリクエストしたいです。
ブルナポの5人が、仮に同じ歳に生まれて同じ高校に通っていたならという想像を下敷きにして聴くとなんとも胸に迫ってくるものがあります。
逆説的ではありますが、年齢がバラバラであるからこそ楽しい妄想です。
マーチングバンドの衣装で整えられたブルナポですが、それなのに個性で足並みが揃っていないところが美しく、その点を引き合いにすればこちらの歌詞にある
「行き先なんて知らずに全力で走ったんだ」
も相応しく心地よく響くように思えます。
(余談。
最初にこの曲を思いついた由縁は新世界交響楽のジャケットイラストがマーチングバンド風だったのを思い出してそっからの連想てだけだったりする。
でも、「仮にブルナポの5人が同世代同級生だったとしたら」て妄想は楽しいよな。
橘ありす あなたの一番になりたい / 南央美
あまりにも正直な歌詞はそれだけに切実であり、なかなか素直になれない橘ありすという個性が、その殻を破って何かを告白するのなら、或いは(論文のような、と評された初挑戦を反省し乗り越えて)自分を素直に出すという手段を経て作詞に至ったならば、あるいはこのような歌詞になるんじゃないかしらという妄想を主体としたリクエストです。
作詞作曲に興味があると語る彼女ですから、いつかそんな機会もありそうです。あったらいいな!
元はアニメ「機動戦艦ナデシコ」の登場人物であるホシノルリのテーマソングですが、年齢や、それに似合わぬ沈着とした物腰など連想されるところも多いです。
また、俗な、有り体な共通点を挙げるなら、橘ありすの声優を務められている佐藤亜美菜さんはAKB48という、総選挙という形で「一番になりたい」ことを求められる立場にいられた方でもあります。この点を勧めるには多少俗悪であるようにも感じるので、付記までに。
(余談。
ありすとルリルリ。
スイマセン。とあらぬ方向に謝りたくなるくらいには直情的な発想ではある。
藤原肇 春の風 / 熊木 杏里
肇さんの[小さな息吹]のイラストがスゲエ好きなんです。土に塗れながら、むしろ美しく可愛らしく、掌にのる生命を愛でる。かわいい。
とうとい。
おれもカエル好きだし。
だから可能な限りテーマは春に寄せて、山光水色、晴好雨奇、花鳥諷詠を思わせるような歌をリクエストすべしと決め、この歌を選びました。
歌い出しからして
「土の匂い拾う 春はまだ青く 君と集めだす夢が早足になる」という美しさです。
「何年も見てきた生き方のように流れ流されはしない 置き時計の音」も陶芸という伝統に通じますし
「君は逆らうように とどまりもせず 言葉では届かないもの 君は届けてくれた」という部分はプロデューサーとの関係のようです。
もう、歌詞を引用するだけで十分すぎるくらい推薦したい一曲ですね。
(余談。
花鳥諷詠! 春の気配! といえば! 春よ来い! 松任谷由実!!
という勢いで決め打ちしてたのに既にカバー済みだったから候補から除外して。そこからこの曲に至れるまでが長かったねー……いや長かった)
梅木音葉 東京 / 手嶌葵
極めて高い音楽的才能を持つ女性……という点はいったん忘れまして。行きつけの森がありエルフもとい妖精と間違えられたという点にひとまず注目しました。
豊かな森やそれが奏でる音楽、ではなく、逆説的に、東京の夜の明かりを歌った歌です。
日が沈んでもなお、むしろ太陽や星よりも明るく光るビルの灯火。それこそエルフもとい妖精という森に親しむものにこそより奇異なものに映るのではないでしょうか。
そして、この歌が持っている美しい感性はそれをただ否定するのではなく、「無数の眠れない理由がきらめいている」と慈しむ気持ちを歌うところです。この優しい包容力。
そのうえで、ピアノで構成された曲も、歌い手当人の声を主旋律として歌唱力を際立たせるのにも相応しく、ぜひとも音葉さんに歌って欲しい曲であると感じました。それも弾き語りで!
(余談。
選曲がむちゃくちゃ難航した一人。だって共感覚と絶対音感を持ち高名な音楽家の両親の薫陶を受けたガチサラブレッドに相応しい曲なんてそうそう浮かぶもんじゃないっスよ……。
しかもエルフですよ。トールキンじいさまのエルフ観に則ればやつらは歌で創世した連中だからな……生中な歌では……あ。それならいっそほんとにエルフの歌でいいんじゃね!! 指輪物語の作中歌を実際に演じたオペラとか!
――オペラ過ぎてアイドルじゃねえ!! それなら……ああ! エンヤ! 彼女はロードオブザリングにも楽曲提供したしエルフっぽいし! アイドルがカバーしやすい曲が一曲もねえ!!
それなら……あー……指輪がダメならゲド戦記はどうよ! テルーの歌! 手嶌葵! みたいな七転八倒がですね)
瀬名詩織 海になれたら / 坂本洋子
ド直球ですね。
たぶんこれ以上の直球はそうそうないんじゃあるまいかというレベルでの選曲です。
瀬名詩織さんの中心にあるのは常に「海が好き」という感情ですが、案外と、海が好きと口にする機会は多くても「夕日を反射するさざ波が好き」「海風が好き」「海のおおらかさが好き」と、具体的になぜ海が好きかと言及されたことはほとんどない気がします。
逆にそこから、もはや海という概念そのものが好きなのだなと察せられるのですが。海が好きというよりかは海だから好きというか。
この歌も、或いはそんな風に、海を具体的に語った歌ではなくただただ静かで暖かな理想の存在として「海になれたら」と語ります。
その心の寄せ方が瀬名さんの「海が好き」という感情にとても近い位置にあるような気がします。
静かに歌われる歌は、静かなままに新たな一歩を踏み出せるまでの物語となっていますが、瀬名さん当人も「漂っているだけ。そんな時間を過ごしてきたわ」と過去形で語っていたことがあります。
ド直球であるだけに、カバー曲としてとてもかなりど真ん中を射止めている選曲ではないかと。
(余談。
選曲にえれえ難儀した一人と一曲。だって海に因んだ曲って例えば湘南で海のYeah!! とかが中心になるしさ……。さもなくばわれはうみのこしらなみの。
あげくのド直球は逃避と後ろ指さされてもいたしかたあんめえ。
浅利七海 素晴らしき紅マグロの世界 / 谷山浩子
(余談。公式にはリクエストしなかった一曲。
どうあがいても谷山浩子は天才
おれたちはいったい谷山浩子の曲を何曲リクエストしなければならないんだ。
美味しいだけならまだわかるけどお誕生日にお呼ばれしたいて。
浅利七海 いかれたbaby / フィッシュマンズ
七海しゃんといえば魚をおいて他になく、ならば曲もそれにならうべきですが敢えて歌手からの魚チョイス。
とはいえ、ただ奇を衒った選択ではなく、ゆったりとゆわんゆわんとした曲調と、歌手当人による囁くような歌い方が浅利七海のキャラクターとの相性が素晴らしく良いように思います。
彼女の舌足らず気味の口調(とその声)でこの歌を歌ってくれたならと、想像するだけで耳元から首筋までが心地よくぞわぞわしてきます。甘美。
(余談。
いやほんとに。ガチ選曲ですよコレ。
綾瀬穂乃香 fish in the pool / ヘクとパスカル
映画『花とアリス』のメインテーマ。をアレンジし、前日譚として描かれた長編アニメーション『花とアリス殺人事件』の主題歌として用いられた楽曲です。
どちらの映画にも主題としては絡みませんが、要所に出てくるバレエのシーンが印象的であったため、綾瀬さんにカバーして欲しい曲という連想で直ぐに浮かびました。
参加アーティストのうち椎名琴音さんは18才まではバレエダンサーになること以外考えてなかったと語っていたのでそこもなかなか。
歌詞の「Let me hear the sound of you heartbeat on my toes」の、つま先(toes)という部分がいかにもバレエを示唆していますし、繊細なピアノと、柔和なボーカルという組みあわせが綾瀬さんに似合うと思います。
綾瀬さんというとレッスン好きというか、もはやレッスン魔というイメージがあります。
レッスンを重ねて熟達した技術に、感情が追いつかず壁にぶつかり、それを突破するのにもただレッスン以外の方法を選べなかった彼女が、アイドルとしての活動を通じて自己表現の楽しさを知り、今は朗らかにレッスンに興じている。そういうシーンで、こんな感じの繊細で柔和な歌を鼻歌ででも口ずさんでいてくれたらなという妄想です。
(余談。
映画本編だとバレエ要素あんま意味なかったけども。