Koume of the NecroDancer ?
白坂小梅は、誕生日の前の夜に夢をみた。
洞窟っぽいけれど、どこか親しみやすい死臭を嗅げば地下墓地以外には思えなくなる。
自然解凍にほど近い体温に胸をさわると、心臓が動いてない。けれど、沸き上がるように響く音楽の、そのリズムが代わりに体を動かしてくれる。
ちょっとかわいい怪物たちも、みんな同じリズムでおどっている。みんな心臓がないのかな。
そしてその足下には、ちらほらと、憧れていたあのひとたちの道具がころがっている(!
ああ、なんてステキな悪夢だろう!
Crypt of the NecroDancer !
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Crypt of the NecroDancer(クリプト・オブ・ネクロダンサー)はBrace Yourself Gamesが開発するステキハードコアローグライクリズムゲーム。
・アンデッドがたくさんでて。
・しかもリズムゲーム。
小梅ちゃんが登場するのにこれ以上相応しいゲームはそんなにないはず。
ということで小梅ちゃん2016誕生日記念に制作しました小梅ちゃんスキンを公開します。
地下墓地でクリーチャーと、嬉しげに、あこがれの凶器を振り回しながら、戯れる小梅ちゃんをご堪能ください。
簡易取説。
インストール
何らかの手段でクリプトオブネクロダンサー(PC版)を購入し。
インストールフォルダ(だいたい Steam\steamapps\common\Crypt of the NecroDancer\mods )のModsフォルダへ解凍したファイルをぶちこんだ後に、
メニュー画面から該当項目を選択してください。
日本語完備な親切設計なのでかんたんだぜ。
衣装
アイドル衣装には小梅ちゃんにとっての正装。
あるいは特別な力をくれる何か、という象徴として、夢の中に出てくるのだと思えばなんだか感慨深い。
ちまみれパーカー | ||
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かわいい。 | ||
かわいい。 トレードマークのちまみれがあまり表現されてないのは仕様上の都合です。 | ||
スカルダークホラー | ||
防御力が0.5上昇 | ||
小梅ちゃん最初の衣装。それだけによく馴染むけど、それだけに効果はそれなり。 最初にして、小梅ちゃんの持つ様々なフェチズムが’凝縮された傑作衣装。 | ||
ホワイトナイトメア | ||
防御力が1.0上昇 | ||
雪女をイメージした衣装。雪山の山荘は推理小説の専売特許ではないのだ。 | ||
ホワイトウォーターリリィ | ||
防御力が1.5上昇 | ||
納涼浴衣娘の企画で袖を通した衣装。水に透き通る危うさが小梅ちゃんのもつ儚さを際立たせます。 上二つ含めて小梅ちゃん和装シリーズの最上位。性能としては上位互換だけど衣装ごとに込められた思いに性能差なんざねえよというのは言わずもがな。 | ||
スカイウォードネクロマンシー | ||
防御力が2.0上昇 武器の反動や罠の強制移動を阻止 | ||
四月一日だから空言。お空での衣装だからスカイ。 「空の上」というガチな環境で戦ったせいかなんだか本当に不思議な力がこもっているっぽい。舞台装置ではない感じのひとだまとか。 | ||
ハロウィンナイトメア | ||
攻撃力が倍増 防御力が半減 | ||
攻撃力が2倍になり、防御力が半減する特殊な衣装。 これはほんとに13歳がしていい格好だろうか……? という、衣装そのものが持つギリギリの攻めの姿勢が反映されているのでしょうか。 | ||
スターライトステージ | ||
あらゆるダメージを一度だけ無効化する 攻撃を受けると砕ける | ||
あらゆる攻撃を一度だけ無効化するが、一度でもダメージを受けると砕けてしまいガラスの欠片が残るのみ。 シンデレラに相応しい衣装ではあるけれど、魔法がとけないよう振る舞うべきか、魔法がとけてからこそが本番ととらえるかは人それぞれ。 ワンミスで即終了はデレステでフルコンを目指しているときにも似ていると言おうとすればいえなくもないけど別に言う必要もない。 | ||
シンデレラドリーム | ||
コインボーナスに応じて防御力が 0.5~1.5 上昇 | ||
リズムに乗れていると性能が0.5ずつステップアップする特殊衣装。 12時の時計やガラスの靴と同じくらい、階段もまたシンデレラの大事なモチーフではある。 |
武器
凶器とはその存在そのものが象徴。
これら武器で小梅ちゃん自身が戦うのではなく、その象徴が小梅ちゃんを守ってくれるーみたいなイメージでひとつよろしく。
あのこのナイフ | ||
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小梅ちゃんにいつもくっついている「あのこ」は、夢のなかでも彼女を守ってくれる。 基本武器であり性能も攻撃範囲も最低限だけど、飛び道具になったりとツボにはまる瞬間はある。 | ||
クリケットバット | ||
クリケットとかいうイギリス人しか興味のない球技。しかしイギリスはさりげにゾンビ映画大国でもある。 前方3マスを同時に攻撃できる。 | ||
かぎづめ | ||
どこかスタイリッシュな凶器。そういえばあのひとは「ちっちゃいコが大好き」だった。 正面2マスまでを攻撃でき、飛び道具として投擲も可能。 | ||
マチェット | ||
殺害するにしても、身を守るにしてもポピュラーな刃物。立場が変わるだけで同じ行為ではあるのだけど。 正面2マス先までの敵を同時に攻撃できる。 | ||
防火斧 | ||
アナタは「お客さんだよ」派? 「オコンニチハ」派? 火事の際の延焼阻止や、扉を壊すための常備品。ホラーは身近なところから連想できた方が怖いらしい。 通常攻撃の他に、2マス先の敵へ飛びかかって強力な一撃を放てる。 | ||
ビデオテープ | ||
ダビングで増殖するのはいいけれどまさか規格の更新で淘汰されるとは。 ある意味ガチで象徴的な存在になりつつあるけど、最近はインターネットでも増殖するらしいしな。 前列5マスの敵に黒い髪の毛のような何かが攻撃を行う。 | ||
キラートマト | ||
歯があるトマト。総制作費用を「KT」という単位で表す風習を映画界にもたらした伝説的映画。 (例えばアメイジングスパイダーマンはおよそ7600KT。パラノーマルアクティビティは0.5KT) 元気よくとんでいって3マス先までの敵を攻撃できる。 | ||
ボウガン | ||
十分な殺傷力に、射出音が静かで、しかも矢を再利用可能という、特にゾンビアポカリプスにおいて優れたサバイバビリティを発揮する武器。 とはいえ長丁場なドラマシリーズでは視聴者人気=生存率という回避困難なお約束があるあたりどうにも。 装填が必要だけど、前方4マスに貫通攻撃を放てる。 | ||
ワインボトル | ||
ワインボトルで殴りかかるのではありません。香りのいいワインにはおつまみが必要という話です。 すさまじい膂力で飛びかかりながら、前方3マスと両隣を移動しつつ攻撃できる。 | ||
チェーンソー | ||
実は大工道具。 その存在で確かに映画界の一部を変えてしまった作品で極めて印象的に用いられた。それだけに様々なホラーで大人気の凶器。ダンスのお供にも最適だ。 前方3マスと両隣を同時に攻撃でき、しかも敵をノックバックさせる。 |
なんだかコメディっぽいラインナップになった。
ほんとは錆び付いた糸鋸とかもうちょっと追加したかったんだけど!
特殊効果
凶器には様々な効果が加わる場合があります。
それは、同じナイフでも使用前と使用後では意味合いが変わってくるのと似た感じといえるでしょう。
ブラッド | ||
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血まみれになっている武器。ある意味では本来の姿ともいえる。 10キルごとに体力が回復する他、体力が0.5の状態ではすさまじい威力を発揮するようになる。 | ||
ガラス | ||
脆く壊れやすい夢……というとガラスの靴とはすばらしいモチーフだと感じるけれど、誤訳によって生まれた可能性もあるというなんだかすごい話。 武器の攻撃力がかなり高くなるけれど、一度ダメージを受けると砕けてしまう。 | ||
ゴールド | ||
欲望の権化。というと様々な感情の入り乱れるホラーに相応しい材質ともいえる。 その一方で完璧な物質として宗教的に特別視される素材でもあったりしてなかなか複雑だ。 コインを拾った直後のターンに限りあらゆる敵を一撃で倒せる。他、敵が落とすコインがごく僅かに増加する。 | ||
祝福 | ||
祝福、あるいは聖別。持つ者にとっては嬉しく、用いられる対象にとってはより忌まわしいけれど、そうしてみると祝福も呪いも紙一重ではあるよな。 特殊な効果はないが、攻撃力が単純増加する。 | ||
真夜中 | ||
さがしてーいたーのーはー12時ーすぎーのーまーほうー。 60ガチャのことではありません。 シンデレラにとって大事な時刻のことか、それとも単に小梅ちゃんが絶好調な時間帯なだけか。 リズムに乗っていると攻撃力が三段階に上昇する。 |
特殊な武器
効果が付かない・ややレアリティが高いという意味で特殊な武器。
特異な武器という意味ではどれもこれも大差ないよな。
十字架ショットガン | ||
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[f:id:tehihi:20160328222500p:plain]tr> | ||
落ちていたバットと組み合わせ十字架を形作った散弾銃。 これでどうにかなると思う神父も神父だけど、これに怯む吸血鬼も吸血鬼だ。 リロードが必要だが、前方の広い範囲を一度に攻撃できる強力な武器。 | ||
プラズマカッター | ||
真に優れたエンジニアは、目的達成のためならば手段も道具も選ばない。 故障気味で装弾数が少ないのはご愛敬。 リロードが必要だが、前方一直線に極めて遠くまで攻撃できる強力な武器。 | ||
ごきげんなあのこのナイフ | ||
「あのこ」がちょっと本気を出してくれているときのナイフ。 未成年の少女が夜更けに一人でふらふらと心霊スポット探訪を繰り返し、今まで何事もなく過ごせているのは「あのこ」が守ってくれているからかも知れない。 攻撃範囲はナイフと同じだが、威力が極めて上昇している。 | ||
ふきげんなナイフ | ||
「あのこ」がへそを曲げているときのナイフ。 怒らせると怖い。しかも姿をみることも触れることのできない相手ともなれば抵抗さえできない。 攻撃した敵を凍らせ、その状態でさらに攻撃を加えると大ダメージを与えられる。 熱い攻撃を受けると「あのこ」も我に返るらしい。 | ||
いたずらずきなあのこのナイフ | ||
小梅ちゃんと気が合うくらいだから当然いたずら心も持っているのだろう。 相手の防御効果を無視し、さらに見えない敵も攻撃可能になる。 |
攻略のヒント
- ノリ重視のゲームと思わせつつも、しっかりとした習熟が必要なゲームだ。何度も死んでじっくり遊ぼう!
- 気軽に連続プレイできるけど、惰性で遊んでたら上達しないぞ!
- 攻撃力は正義。一撃で倒せる敵が増えればそれだけ厄介な敵に付き合わなくても済むようになる。
- 3以上が攻略が楽になる目安だ!
- 体力回復手段が揃うと格段に楽になるぞ! 攻撃力増加か回復手段増加かは悩みどころだな!
- へいわのほこらを見つけたら積極的に爆破しよう! 爆破後に得られるアイテムがクリアまでのちょっとした近道になるぞ! へいわってなんだろう!
- ターン送りを意識しよう! 壁をムダに掘って待機してみたり、コンボを犠牲にしてもその場に留まった方がいいシーンもある!
- 本Modではストーリーシーンやボイスの差し替えは行われていない! 誕生日公開を目指してたら力尽きた! なのであまり気にするな!
- そのへんももしかしたら今後追加するかも!
- 意図してない不備を発見したら報告してみるのもいいぞ!
- 小梅ちゃんの隠れ目が右目左目と入れ替わるのは仕様!
- 小梅ちゃんはかわいいぞ!
- 小梅ちゃんはかわいいな!
- 小梅ちゃん誕生日おめでとう!
塚口ガルパン行。
そりゃあまあもちろん4DXは観に行くんだけど。県外まで。
兵庫県は姫路まで電車鈍行で片道一時間そこそこという距離は庭みたいなもんなので日帰り上等。距離が近けりゃ移動費も安くあがるのでこれまた上等。加えて姉婿の下宿先に屋根を借りられるとなれば一泊も余裕なわけだから憂いる点はそんなにない。新婚ほやほやの愛の巣を、旅塵と、わざわざ映画を観るためだけに距離を時間へ変換しここまでやってきましたーというオタク臭さで汚すことに抵抗さえなければ。
まあないけど。
しかしその旅程を尼崎まで伸ばすとなれば話はちょっと変わってくる。
尼崎の塚口は一応兵庫県内である。だけど姫路から足を伸ばせばもう一時間。加えて往復。
さらには目的のガールズ&パンツァー劇場版は二時間の上映なもんだから、それを一日のウチに二度観るには物理的限界に引っ掛かってしまう。
あと往路を考えると旅費は二倍になるし。滞在時間が延びれば食費など諸々かかってくるんでめんどくさくなってくる。
問うべきは「そこまでするか?」どうかである。
高嶺の花を摘むべく崖に挑み転がり落ちた青年は恋慕が故に自身の命を犯した。
愛というのは証明の難しいものなのである。
だからオタクは劇場映画の視聴回数を誇り、あるいはグッズを買い漁り、場合次第では二次創作に励み、もしくは自分の愛車を痛くして、作品に労力を費やすことでその愛を有形無形に表現しようとする。
もう既に二度観たアニメ映画を県外まで観に行って、しかも場所を変えてまで続けてもう二度……うーん。
というのはまあ置いとくとして。
もう少し実利的な面を考えてみると。
・ガルパンは古今類を見ないほど「戦車の描写」にこだわった映像作品である。
作品の一部分としてこだわりの戦車描写をみせた作品はかつて数あれど、二次大戦中の戦車たちが、国の彩り様々に、戦車を主役として、ただ純粋に戦車戦のみのために描かれたことなんてたぶんない。おそらく、過大文句でなく空前絶後。
この先、似た作品があらわれてくれるかどうかわからない。私の一生ではただの一度の巡り会いかも知れない。
・ガルパンは戦車描写にこだわった映像作品だが、音響効果という点でやり残しがあると自覚されていた。
戦車砲の砲音はすさまじく、その破裂音で空気はたわみ眼球が圧されて視界が歪むほどだという。音も戦車にとって大事な要素だが、その大音量の表現は、ここまで戦車にこだわった作品ながらも、TVシリーズにおいてあきらめざるを得なかったという。
それが劇場用音響設備という舞台を得て、遂に大音量という表現手段を得たのだ。
劇場での上映作品は入れ替わり続ける。その上映期間を見過ごしてしまうと、滅多なことでは二度目に巡り会えない。
ガルパンを劇場でみることの出来る期間は、私の一生ではただの一度かも知れない。
・塚口。もしくは塚口サンサン劇場は小さいながらも様々な工夫を凝らす映画館であるらしい。
今度実施される超重低音上映も小さい劇場だからこそ出来る工夫の一つであるらしく、しかも劇場版制作の音響スタッフが自らやってきて調整を施したものだそうだ。
三ヶ月も以前に封切りされた映画を、シアターを割いて、特別な音響効果を用意して公開される。
もちろん、これを逃したらいつ同じことに出会えるかどうかわからない。二度目なんてあるのだろうか。
それらが私の足の届く距離で起きている。
結論としては、言うまでもなく「行かない方がバカだ」である。
しかも18切符期間だったしね(往復の運賃なんて存在しなかった。
久々の電車旅だけど、平日だということを実感させられるスムーズさで始終着席して移動できた。それでもお供にキャスターのついた旅行鞄を伴っているひとが散見されて、そうだよなー18切符期間だもんなーという妙な充足感が沸いてくる。
阪急電鉄の車両の床の装飾が地味なお洒落さでよかった。
車窓をみると、なんだか兵庫というのは川の多い町だなとか思う。散歩をする分には楽しそうだ。
塚口に降りてすぐにある自販機。
関西圏であることを思い出させる感じの。
誰のファンだろう。
広場。このへんもなんとなく関西っぽい。
昼飯時を少し過ぎての到着で、でもまだランチやってる飯屋さんはたぶんあるよなー。イタリアンなー。アンツィオなー。とメニューをのぞき込んでたらおねーさんに「よろしければどうぞー」と言われたのでほいほい入店した。
うまかった。
イタリア料理店て一人で行くとなんかこうもったいないな。パスタとピザとを同時に食うことはできないし、そんでピザも一種類しか食えないし。
結局選んだのはピザだったけどうまかった。おこげの香ばしさがあるのにあごで引っ張らないと生地を食いちぎれないくらいの弾力があるピザでさ。
周囲にもなんだかイタリア料理店が多かったけど、そういや兵庫はパン屋がやたら多くてバターや小麦粉の消費量が相当だと聞いた。パスタもピザも小麦粉料理だしそのへんの文化があるんだろうか。もうちょいと東へ進めばそれがお好み焼きやたこ焼きになり、南に進むとうどんになる?
目的地である塚口サンサン劇場のある塚口さんさんタウンというのは要するに駅ビルである。
客年齢層をだいぶ上に見積もってる感じのブティックや、シャッターのちらほら目立つ食店街など地方の駅ビルに見慣れた風情がありつつ、一号館二号館と並ぶ三号館は上半分がマンションで、文字通りの地域密着っぷりがちょっと独特な雰囲気を作ってた。
塚口サンサン劇場の取り組みの一つに「マザーズディ」という、子連れ鑑賞用の(たぶん子供への刺激が抑えられた)音響設定の上映があったりするみたいだけど、それも納得の立地ではある。
平日らしい景色。
おれみたいななまニートはこういう寂しさと表裏一体にすごしているのである(そうか?
スロープ。
スロォォープ。
むやみにカラフル。
散歩も適当にそろそろ劇場に向かうっスかね。
劇場を見付け、入り口が即シアターにつながる構造に思い及ばずうっかりドアを押したら「開場は上演10分前になりますのでそれまでは地下にあります待合室でお待ちください」と親切に窘められてしまった。すいません。
と、階段をおりたら。
うわ。なんかいる。
四号戦車ちゃんでいいのかな? 直線的なフォルムがいかにもドイツ戦車じゃないですか(お世辞のつもりかな。
段ボールの車体はもちろんだけど転輪もすげーがんばってる。
……映写機のあのフィルムくるくるする部分だったりしないよね? これ。
大洗町のみなさんからのビデオレターが流れる中で、手作り感のあふれる待合室は「今は共感の時代である」て誰かの言葉を思い起こさせる。
設定資料集の他に貼られた劇場名シーン集はネタバレ厳重注意重点な。
劇場版にっしずみちゃーん。……こんなにすごかったっけ。
ロビーに貼られていた写真。「この頃の雰囲気」というものを知らないけれど、ほとんどそのまま引き継いでいるんじゃないかな。
と勝手に想像してしまう。
幕のある映画館だよ。
ボコ劇場の始まりそうな。そういえばウチの近所にも、商店街の中だとかにこういう映画館があったけど数年前にもうなくなってしまったんだよな。
さて。上映開始である。
肝心の超重低音だけど、すげかった。
そもそもが「なんか音量設定まちがえてない?」と思わされる大音量だったのが、花火大会ででっかいのがあがると、その音が直に体にぶつかってくる感触があるけど、あれそのまんまにまでスケールアップ。
破裂音とともに体が圧される圧される。期待される音圧の花形であるカール自走臼砲も観覧者先輩のシーンもガチで椅子ごとビリビリ震える。劇場初見時の、カールの砲撃であがる爆炎に「おいおいこれはいくらなんでもやりすぎじゃねえの……」と思わずこみ上げてきたあの歪んだ笑いが蘇ってくる。
加えてステキなのは設備がいいのか調整が活きてるのか、様々な音がくっきりと判別できる点である。
ガルパン劇場版はBGMもいい仕事してると思うんだけど、劇場用にオーケストレーションされた楽曲と、戦車の出す騒音と、登場人物たちの金切り声とがそれぞれ独立して淀みなく聞き取りやすい。
ガルパンはとにかく情報量が過密な映像作品である。
だから、それら情報の整理が追いつく二周目あたりが本番。あるいは、その情報や小ネタの細かいところを汲み取ることまで含めた娯楽ーみたいに言うことも出来ると思うんだけど、そこにこの、いい具合に誇張されて、いい具合に判別のしやすくなった音響効果が圧する勢いで覆い被さってくる。
センチュリオンのあのかっこよすぎるギュインギュインとなる超信地旋回が、各校のテーマソングのメドレーの最中底抜けに明るいフニクリフニクラと共に軽快に丘をすっ飛んでくるCV33に「ノリと勢いとパスタの国からドゥーチェ参上だー!!」という大見得が、「慌てるな、風船は繊細なんだぞ!!」という制止も聞かず破裂するアヒルさんが、やさぐれた風紀委員がぽりぽりぽりとかみ砕くキュウリの音が。
音が伝えようとした意図がより明瞭に伝わってくる。
例えばそれは、激しく明瞭な砲撃音が、カメラが戦車内部に移ると、装甲を通した分だけ遠く小さく籠もったゴインゴインという響きになるという、音による主観的表現をさらに正確に伝えてきてくれる。より感情移入しやすいしシーンの意図もわかりやすい。
だから、こー。
複数回視聴によって情報が整理できてたせいなのか、
音響効果で伝わりやすくされた情報に刺激されたのか、
爆音で涙腺が破壊されたのか。
どれだかわかんないけどやたら泣けた。泣けた。
結局、作品そのものが変わるわけではない。だから過剰な期待は禁物にせよ、ガルパンという作品が音によって伝えてこようとしてた意思が(より大袈裟に、と表現することも出来るけど、敢えてこう言いたい)より正確に伝わってくる。
その為の優れた舞台装置であることには違いない。
創作作品とは、作り手の意思を、受け手が受け取り解釈して初めてなりたつ娯楽である。劇場というのはその両者の間で継ぎ手を行う役割だ。その意味において、より正確に伝えるための舞台を整えてくれた塚口サンサン劇場は、受け渡し役として、上映館として素晴らしい役目を果たしてくれたのだと思う。
なんか感極まっちゃったよ。
映画を映画館で観る意味みたいなのがなんか理解できた気がする。
鑑賞後にもう一度待合室にいったら、ホワイトボードへの私のらくがきに返信が二つほどついてた。
次の上映がその日の最後の上映だっただけに、開場までまだ一時間近く間があったけど目当ての客がそこそこな人数で(みんな嬉しそうに)待機してた。
追加で戦車戦のこのへんが面白いんじゃないかなという話。
言葉で語らず絵で語る。
ガルパンはそういう作品であります。
選んで黙されたそれら部分をわざわざ掘り起こし語り直すという野暮を犯しているよーな本記事ではありますが、気のせいということにしてもう少しだらだら書き並べます戦車戦のこのへんが面白いと思うポイント。
砲塔の存在がステキ。
舞台設定がファンタジーだろうと和風だろうとついつい戦車を出してしまう某STGメーカーの偉い人いわく
「戦車は、進行方向と関係なく弾を撃てるから素晴らしい」とコメントしてたりするそうですが、さすがの慧眼。
それを可能にするのが全周砲塔という戦車史最大の発明。
人が牽引するには無理のある大砲を、鋼の車両でもって高速で運び、そして360度好きな方向へ砲撃できる。
そいつぁ便利で当然だ。例えばこんな風に、逃げながらだって砲撃できます。
まあ当たらないんだけどさ。
そんでこの砲塔が、実用面だけでなく、『戦車がどの方向にぶっ放したがってるか敵側からもよくわかる』というビジュアルインパクトにも繋がるわけですよ。
そして砲塔の旋回速度そのものも戦車としての性能に数えられます。旋回速度が速ければそれだけ好きな方角に撃ちやすくなるので当然ではありますが、逆に言えば「別の方向へ撃つのに時間がかかる」という戦車の欠点にもなるわけですね。
砲塔の旋回を助ける為に車体そのものも旋回させたりもするわけだけど、この動きの細かさがほんとカワイイ……。
そういや、ガルパンには砲塔のない突撃砲とか駆逐戦車とかに分類される車両も登場しておりますが、こちらはこちらで利点も欠点もあるのだけどそれはそれとして。
一発撃つと次の砲撃に時間が……。
また例によって車両による話だけど。そもそも砲弾の大きさ(重量)からして違うわけだし。
各装填手と各砲弾。たいへん素晴らしい設定画。
とはいえ、二次大戦中の戦車砲は(よほどの例外がない限り)手動による装填。つまり人力なのでそう気楽にほいほい連射できるもんじゃありません。
最大クラスで50kgの重量物をどっこいしょと持ち上げて孔にぶち込むという行為を対戦中に何十回もやんなきゃならない。しかも戦車戦は一撃必殺。わずか数秒の差が決着に繋がることもおそらくは珍しくなく、勝敗は装填手がどれだけ根性をみせられるか次第という場面もまたあるのでしょう。
そして、装填手が根性で込めた弾を、射撃手が気合いを込めて一撃必中を期す。その緊迫感。
このシーンなんかは桃ちゃんのポンコツっぷりが目立ちがちだけど、聖グロリアーナも、全員が無用な射撃をしてしまい(ついでに砲塔も動かして)再装填の時間だけあんこうさんチームに逃げ出す隙を与えてしまう。という形のミスを犯しているわけだ。
車両次第な話をもう少し進めると。弾薬の置き場所というのは戦車を設計するうえで各国の頭を悩ませる要点だったみたい。
うかつな場所に置いたら爆発炎上の火種になるし、かといって奥まった場所に置いたら装填に手間取ってしまう。そのあたりも装填速度に大きな影響を与えていたそうで、こと装填速度に限ってはどこまでもローテクなお話。
操縦や砲撃は戦車そのものの性能によるところが大きいけれど、装填手だけはどうあっても本人の体力勝負なあたり、女子戦車道という武道のなかでも相当な肉体労働担当な役割だと察せられます。
地道な再装填訓練。ガルパンのなかでもトップクラスに好きなワンシーンなのだわ。
性能差ひでえ。
ガルパンは「二次大戦終戦までの戦車なら参加可能」というレギュレーションによりバラエティ豊かに戦車が登場します。
それ故に生じる覆しがたい性能差……と思えるところだけど、現実の二次大戦でもそーいうことはままあったらしい。
フラッグ車と遭遇しても逃げの一手しか打てない八九式の悲哀。
具体的には砲火力と装甲厚による撃破不可能な状況てのが散見されたみたい。
二次大戦の緒戦ではドイツ戦車の火力ではイギリス戦車を破壊することができず、航空機を撃ち落とす為の高射砲を水平発射でブチかましてむりやり貫徹して「高射砲を戦車にぶっ放すの反則じゃね」「戦車砲の通じない戦車持ってくる方が反則じゃね」て皮肉をいいあっただとか。
走攻守全てを兼ね備えたソ連の傑作戦車T-34に直面し、衝撃ありあまった結果バケモノじみた対戦車戦車の製造に手を染めてしまうドイツ軍だとか。
その狂奔により産まれたティーガーは登場当初、連合軍の持つほとんどの装甲を真正面から貫徹し、連合軍の持つほとんどの砲に対し無敵を誇っただとか。
このへんのお話は二次大戦初期から終戦直後までずっと続くので、現実の戦場でさえ「おれが乗ってる戦車じゃあの敵車輌の撃破とか正直ムリ」て状況は実際散見されたんじゃなかろうか。
その所以は、戦車そのものが二次大戦下でもすごい勢いで進化してったが故の話でもありますが、その一方で、無敵のティーガーに対して「アレに対抗できる戦車を設計・製造するよりかは多少不利でも(=前線の兵隊に犠牲を強いてでも)今の戦車を改良してった方が生産性も維持できるし最終的には有利になるよな」という合理的判断によって根本的な対策が為されなかったからでもあるとか。
つくづく現実にはロマンが足りないけども、それでも勝つために腕と戦術を振り絞らなければならない泥臭さもまた戦車戦の醍醐味があるのでしょう。
でっかい。(相対的に)はやい。
速いつっても当時の戦車で50km後半の速度をだせたら世界最速クラスだったりとか、そもそも不整地を走るのが戦車なので、求められるのは速度よりも重量当たりに対する馬力だとか色々とめんどくさい点はありますが。
にわか知識でみるとガルパンの戦車戦でいちばんフィクションなのが戦車の速度なのかなとか思う。
軽戦車は軽量だからそんだけ速度を出しやすい……と思われがちだけど、実際はエンジンの馬力により、ついでに重たい戦車ほど馬力が必要なんで。最高速度にしても不整地とかを踏破するにしても馬力のある戦車のが軽量な戦車よりも速いことなんざザラだとかどうとか。
史実では10kmくらいしか出せなかったらしい八九式だと思うと相当ファンタジックな光景。
とはいえ戦車道では二次大戦中に培われた技術までの改造なら認められるそうな。
そのへんはともかく。とはいえ。
ドイツが電撃戦とかやらかす以前は戦争の基本移動手段は徒歩。列車で戦場最寄りの駅までみんなで移動してそっからはカチ。
だったのが、戦車と航空機によって人でも馬でもだし得ない速度でガンガン戦線を押し広げたドイツの電撃戦は誰もが体験したことのなかった速度での戦争だったわけで、それの担い手となる戦車はそういう意味ではとんでもない速度だったといえる。
それでなくとも何十トンもの重量を持つ鉄の塊がズギャーッと走ってズガーッと急制動するわけです。その迫力。
しかもそいつは崖を乗り越え、草木をなぎ倒し、家屋を突き抜けて突進してくるわけです。ああ、なんてかわいい。
おうちを突き破っての突進は戦車にとってのたしなみみたいなもんです。
・俯角・仰角という概念。
これもTVシリーズではあまり目立たなかった欠点や長所だけど、劇場版では折々に出てくる概念でした。
砲身を動かせる角度のことです。横にではなく、上下に。
戦車はでこぼこな不整地を走ることが前提で設計された兵器だから、それにあわせてたいていの車輌は、砲口を多少上向けて、或いは下に向けて砲撃できるよう機構が組み込まれています。
でもやはり限界はある。あんまり下向いたらば旋回するときに車体に引っかかっちゃうし、だから急な斜面に車体を乗っけると水平方向に攻撃できなくなったり、或いは、高低差の強い位置に対しては攻撃不可だったりします。
めいっぱいでこんな感じ。
この仰角や俯角を大きくとれる車種だと、稜線や障害物を利用して一方的に攻撃できたり、或いは露出を厚い装甲面だけに抑えつつ砲撃できたりもする。
戦車にも器用・不器用なコがそれぞれ存在するということだね。
画像はWorld of Tanks Wiki*より拝借。
・その他にも……。
戦車はあくまでも兵器なのでただ強けりゃいいってもんでもなく、戦車そのものの性能と、それを大量配備できるだけの生産性との両立が求められたりとか、意外なくらい対人に弱くて、二次大戦中にも携行型の対戦車砲が登場してたり、かのヴィットマンも『対戦車砲の一輛撃破は、戦車二輛の撃破に相当する価値がある』ていうくらい、茂みに隠れた戦車砲が怖かったりとか、諸々あるのだけどもそろそろ戦車戦や戦車道のお話から逸脱してくるので控えておきましょう。
さてたぶん次回はガールズ&パンツァーに出てくる戦車ごとのかわいいポイントについてだらだら語る予定。
戦車戦のこのへんが面白いよみたいな話。
おおざっぱに戦車のかわいらしい要点を述べて参りましたが、それの性能を発揮しあう戦車戦がかわいらしくならないはずがありません。
やはり兵器は戦場を走り回ってナンボ。そしてまた、戦車戦には戦車戦ならではの要素や駆け引きがどっさりあるのです。
ガルパンでもさすがのこだわりの描写で、初見ではわかりづらかったり意図のわからない戦車の所作にもいちいち根拠があったりします。たぶん。
しかしそれら魅力も一言で言い表すことができます。すなわちそれは
もどかしい。
これです。とにかくもどかしい。戦車戦 is もどかしい。
戦車対戦車という構図で産まれる戦車戦独自の要素って、要するに「戦車につきまとう厄介な特徴」てのばっかりな気がする。
あああああ頼むよそこで決めてくれよもおおおおおだとか、えええうまくいってたじゃんこれでもダメなのかよおおーだとか、あ、むりだわ。これ。無理無理。だとか。なんかそういうのが多い。
そうした膠着を突破してこその爽快感。カタルシス。そう表現することももちろんできます。
色々と細かい描写にこだわりの感じられるガルパンだからこそ、そのあたりの、戦車戦ならではの機微を察することができれば、勝負のアヤや展開の妙もなんとなく感じ取れて、ガルパンの複数回視聴にも深みと彩りがでてきたりするんじゃないでしょうか。
するといいな。
それでは、現実とフィクションの境目を区別する手段もなくそのへん順々に書いていきましょうか。
視界がせめェ。
いきなり映像作品ではオミットされがちな要素から攻めていきます。
戦車の視界の狭さを体感するには、霜の降りた早朝、車に乗る前に指で運転席前フロントガラスにスリットを作ってみるといいらしいですね。雪が積もってると装甲圧も再現できてモアベター。
まかりまちがってもそんな視界で運転したいとは思えない怖さを体験できるそうです。
とはいえ、装甲の前面にのぞき穴なんて付けちゃうと当然もろくなるんで、防弾ガラスで塞いでみたり、ガラスを組み合わせた潜望鏡(ペリスコープ)を装備が基本だったりと国や車種で様々。車種や国によってはこのペリスコープの出来が良いのもあったとか。
これは……射座の覘視孔……かな?(紹介してる割によくわかってない。
全天候型なんて望むべくもない限られた視界。それは運転手も砲撃手も同じこと。
なので運転手は基本「進め!」も「止まれ!」も進行方向の指示も戦車長に言われないとわかりづらいし、砲撃手も、方角を指示されなければ敵影の発見さえ覚束ない。
要するに、戦車長は目であり脳みそであるということ。どれだけ重要な立場かが察せます。
であればこそ戦車長は「みぽりん、危ないよ!?」と言われようとも身を乗り出して状況把握に勤めますし、そうして得た視覚情報で的確に迅速に指示を行う必要が出てくるわけです。
やはり戦車から身を乗り出すのはドイツ戦車がよく似合う。
実際にドイツの戦車長は身を乗り出しがちで、だからこそドイツは優秀な戦車長を多数輩出できたとも言われるし、一方でドイツはペリスコープの開発が遅れてたんでやむなくやってたという話もあるみたい。あと戦死率も高かったとか。
その他にも、ちょっと茂みに隠れられただけで索敵が困難になったり、欺瞞工作に弱くなったりとか。
そのへんの要素はしっかりガルパンのなかでも活かされてますな。
目と目があうー。
行進間射撃まじあたらねえ。
このへんはガルパンでも大事な要素として描かれています。
行進間射撃。文字通り、動いているあいだ(最中)に射撃すること。基本的に牽制目的のムダ撃ちと考えた方がいいくらい当たらない当たらない。
第一話の「大丈夫だよ。滅多に当たるものじゃないし」というのは「(行進間射撃だから)滅多に当たるものじゃない」て意味もあったんじゃないかな。そうでもないかな?
いや滅多に当たらないにしてもだな……。
考えてみれば確かに、まともに命中させるのが難しい要素がぽんぽん浮かびます。
射撃が手動で、角度も距離もそれぞれ暗算でやらなきゃならない点。そのうえで20kmなり30kmの速度で(場合によっては目標も)移動最中に撃つとか。
さらに移動最中の車体の揺れ。無限軌道で地をうがちキャタキャタピラピラと走ってりゃ車体はがくがく揺れるし、それに積まれた砲口だってぐらぐら。それでもって500mとか1000mとかいう距離に向かって放つのだから、誤差なんて勘定のしようがない。
なので、ギュッと制動し、かつ、慣性での車体の揺れが収まってから撃つのが基本。
逆に言えば「まともな砲撃は静止してないとできない」ってこと。これはなかなか大変なことで、停止という大きな隙を晒さなければ攻撃ができないという勝負のアヤが生じます。
だからこそ、相手に発見されてない状態での砲撃や待ち伏せなどが有効であり、
あるいは、至近距離のとにかく前に向かって撃てば当たる!! というシーンでの駆け引きが熱を帯びるわけです。
しかし誰もここまでやれとは(いいぞもっとやれ。
当たればいいってもんでもない。
当てるのが難しい。というお話の次にコレです。当たりゃいいってもんでもねえ。
ガルパンでもせっかく命中させたのにガインと装甲で弾かれる。そんなシーンが散見されますし、伝説の重戦車ティーガーと戦った量産型の代名詞なシャーマン乗りが「こちらの命中弾は簡単に砕け散った。まるでオレンジをぶつけてるようなもんだったよ」とか述懐してたりしましたな。
極端な例。
ガルパンだと白旗がスコンとあがるけど、現実における戦車への有効打とは装甲の貫徹。
分厚い鉄を貫き、穿った装甲そのものや砕けた砲弾が戦車内部を有り余る運動量でもって人員ごとめちゃくちゃにする。
あるいはエンジン部や弾薬庫に命中し大爆発炎上などなど戦車道が特殊なカーボンでコーティングされてて本当に良かったな……という有様。
どれだけ大砲に性能差があったとしても、装甲の貫通さえ果たせれば有効打になる。
というあたりも面白いポイントではありますが
それは装甲を貫けなけりゃどんだけ命中させても意味がない、というアヤも同時に生みます。
貫通さえされなければどうということはない。ならば装甲を増そう鉄板の厚さを増そう。
しかし厚くしすぎると重量に直接跳ね返ってきてしまい、速度が遅くなるとかならまだしも地面にめり込んでそもそも動けないなんてことになってしまいます。
よって、用意できるエンジン出力との兼ね合いや、大事な部分の装甲厚だけを増すこと等で妥協点を探ります。
この結果、たいていの戦車は「正面部分は重装甲」「側面の装甲は弱い……」「排気口とか外部に触れざるを得ないところは守りようがねえ」ということになりがち。
それにより「敵側面に回り込んで砲撃」や「敵車両と対峙するときは正面を向ける」などなど細かいテクニックが生じます。その他にも角度を付けて砲弾を受けることにより実質的な装甲圧を増すという通称「飯時の角度」など。
これは二次大戦中にドイツが戦車兵に配布したティーガーフィーベルという教本にも載ってる由緒正しい操縦法。
ほうら。ソーセージだって斜めに切った方が面積が増えるだろう?(わかりやすい。
要するに、11時や2時の角度で砲弾を受けましょうという戦術。
内容はティーガーの扱い方を婦女子に例えて教えるという「萌える戦車教本」みたいな。
そしてそれらは、ガルパンにおいて「戦車が停止している角度にさえ意味がある」という描写につながります。特に、皆が皆一定以上の経験を積んでいる劇場版だとその細かい描写は顕著。
避けるだけでなく弾くという選択肢もあるのが戦車戦の面白さといえるかも(中に入ってる兵隊さんは『釣り鐘の中にいるようだ』つってたまったもんじゃなかったそうだけど。
知っているひとなら誰もが「飯時の角度!!」と叫んだであろう絶好のシーン。
あと、貫通させる手段としては至近距離からぶっ放すという手段もありますな。
距離が離れていればそれだけ、貫通に必要な威力が運動エネルギーによって削がれてしまうわけで、逆に言えば至近距離でぶっ放せばそんだけ攻撃力が増すといえます。逆に相手からの反撃もまた怖くなる捨て身の戦法ではありますが。
しかも、そうやって懐に飛び込まないと勝負ができないような車両は、それだけでかい大砲を積む余力のない軽車両であることが多く、装甲もまた脆弱なはず。それを覚悟で敵に向かって突っ込むのは相応のくそ度胸もとい胆力が必要になるわけです。
みよ。この会長(ヘッツァーたん)の勇姿。
装甲以外の脆弱点もけっこーあるぞ!
構造上、どうしても潰しきれない弱点てのはあるもんで。それが必要上どうしようもないものである場合とか、単に設計上のミスだったりとか色々なんだけど。
例えばエンジンの廃熱部や車内の換気口なんかは外部と内部とをつながなきゃならないので脆くなりがちだし、
戦車によっては前面下部にエンジンを設置したせいでそこを集中的に射貫かれたり、燃料タンクの位置がわかりやすかったんで敵にそれを周知されたり、あるいは砲身の付け根、砲塔と車体の境目付近も、旋回させなければならないんでどうしてもウイークポイントが発生しがちだったり……。
このへんは戦車ごとに違ってくる特徴なので、戦車長にはそのへんの知識量も問われたりしそう。
シャーマンの装甲表示。http://gamemodels3d.com/worldoftanks/ より拝借。
他は戦車の底。底部。「そんなもん撃てることあんの?」という感じではあるけど、戦車は基本的に縦長いので、稜線を越えるときは丸々晒してしまう上に、砲門もお空を向いちゃうので牽制も不可能と、丘を跨ぎ越すのはそれなりに注意を払わなければならない場面だったらしい。
どっこいしょお。
あと、底も弱ければ天板も弱い。これまた「撃たれるもんなの?」というポイントだけど、こちらは、装甲に弾かれた砲弾が上に向かって跳ね返り、降ってきたものが運悪く突き刺さるというショットトラップて現象があったりもしたそうで。
他、内部からの覗き口となる貼視孔も弱点だったりするけど、ソ連で対戦車ライフルを持つ狙撃兵は比較的至近距離からここを撃ち抜くべく狙いを定めてたそうで、狙う側にしても狙われる側にしてもきんたまの縮み上がりそうな話。
装甲以外の話だと、どんなに重厚な戦車でも履帯を撃破されると動けなくなる。なんて脆弱なポイントもありますね。
実際、装甲を貫けない相手には有効ないやがらせだと思う。
……そういえば、履帯が破壊されても移動できなくなるだけといえば動けなくなるだけなんで、砲塔を動かして砲撃とかは全然できます。
修理すれば動けるんで、だから戦車道でも白旗はあがらないみたいだけど。
でも履帯が外れている最中に砲撃とか、そういうシーンないよね。あと履帯はずれた車体に追撃とかもしないし。
修理中は危険なんで追撃は反則+ただし修理中に攻撃するのもダメみたいな細かいルールがあったりするんかしら。
等々と、書いてみれば「言われなくても観てりゃわかるんじゃね」といった要素ばかりになったような気もしますが、あまり気にしないことにしつつまた次回。
戦車のここがかわいいよという話。
ガルパンの波及効果がめざましく。ファンとしてほんのりと喜ばしい次第ではあるだけど。
それとは別に「戦車かわいい……」「戦車まじかわいい」「戦車と散歩したい」「戦車を養子にとりたい」みたいな声が期待してたほどみられなくて首を傾げている昨今です。
なぜだろう。あんなにかわいいのに。
まあ。実際のとこ。感想はひとそれぞれ。それを個々人が文字とした際に「戦車カワイイ」の呟きが含まれてなかろうとも不思議がることはないのでしょうそう感じたか感じなかったかを問わずガルパン視聴者の深層心理にはもれなく無限軌道の残す轍がごとく「戦車かわいい」という感想は刻み込まれているはずだから。
口にせずとも当人にさえ気付かぬ心の底の奥深くにね? うん、わかってるわかってる。 実際んとこそんだけの力と熱量のこもった作品だと思うのだけども。
であればこそ、無意識下に潜り込んだ戦車カワイイ感情を呼び起こす助力をしたく思いこの文章をしたためる次第です。
ここがかわいいよ戦車。
といってもガルパンと同じく二次大戦中の戦車が中心のお話。
あと、こっから先に語る「ここが面白いよ戦車戦」と「ここがかわいいよガルパンの戦車編」との予備知識ととらえて頂ければ。
戦車という兵器は多くの矛盾や様々な感情を内包した兵器であります。
畏怖、信頼、蔑視、厄介、自負……など諸々諸々。まあ戦車に限らずたいていの兵器がそうかも知れないけど。
ともかくも戦車を、戦車をテーマとした作品に触れる度にその感情がない交ぜとなって、要するにこー、かわいらしく感じる不思議兵器な訳ですが、それを理解するのに肝要な点はおおむね一つ。
わりとポンコツ。
と、要するにここが一番大事なポイントです。ここだけ押さえておけばもうほとんどの戦車はかわいいです。
割とポンコツ。
命を預けなければならない兵器なのに、国の存亡を賭けた兵器であるのに、結構ポンコツい。
それもしょうがない部分はあります。
第一次世界大戦の最中に産まれ、戦争の常識を作り替えつつ、自らも進化し続けたのが戦車。
進化の余地があったってことはそんだけ未完成であり、実践にあたらなければわからないことも多く、改善すべき点や致命的な欠陥も各国の戦車各々が抱えておりました。
曰く、走攻守どれも万全な戦車だけど居住性が劣悪で人の乗ることが二の次三の次な戦車だったり。
曰く、戦場に顔を見せただけで敵兵が逃げ出すほどの無敵戦車だったけど生産性も燃費もメンテの手間もひどくて「これを作ったのが敗因だった」とまで言われたり。
曰く、よく燃えたり。
曰く、次世代の間に合わせのつもりで製造したのに様々な要素が絡み合って妙にたくさん生産されちゃったり。
曰く、突然変異のようなすげー優秀さだけど完成が遅れて船で輸送されてる最中に戦争が終わったり。
「そもそもまともに動けねぇ」というたいへんわかりやすいポンコツ例。
特に二次大戦中の戦車は(あるいは今の戦車もだろうけど)必ずと言っていいほどどっかに欠陥があった。
敵からしてみると恐怖の具現。しかし運用する当人には欠点も目をつむって命を預けなきゃなんない厄介者。
そういう虚実様々な逸話が各戦車にあります……そのいちいちがかわいくてねえ。そのあたりの話は後日としまして。
かたちが様々。
先のお国柄にも通じる話だけど、当時はまだ各国によって差の大きかった製鉄技術や工業的精密さによって、思想だけでなく実際の戦車の形状にも国ごとの不可避な特徴が現れたりします。溶接に優れたドイツは直線的なフォルムの戦車が多いし、ソ連は同じ戦車でも工廠ごとにフォルムが変わったりとか。
あるいは設計上の必然により「エンジンは後部に置いて守らなきゃなんないからなんか前につんのめったような形になった」とか「でっかい榴弾撃ちたいからって設計したら頭でっかちになった」とかの影響ももちろん如実に出ますし。あるいは、工業力が足りなくてリベット止めで間に合わせてたり……。
要するに、なぜそんな形になったのかという点にも合理的な、あるいは不可避の事情によるものなど様々な理由があるということ。
あと厳密には戦車じゃないけど、突撃砲や駆逐戦車みたいに砲塔をもたない戦車もあるわけで、それによってもまた見た目は大きく変わりますね-。
多砲塔に無砲塔の突撃砲。その奥に控える比較的普通の4号戦車ちゃん。
お国柄がでてて楽しい。
そりゃ国防機密の兵器だしね。技術協力や武器貸与などあれども大国たれば基本は独自技術による兵器を持ちたがります。
そこに「島国だし沿岸警備が中心になるならまず防御力でしょ」だの「大陸を走り回るんだから走行性は保証してもらわな」だの「戦争は物量だしウチの工業力活かして大量生産前提に設計すんべ」だの「え。戦車部隊とか作ってる暇も予算もないよ」と、基本思想の差違がのっかって国ごとの系統だった特徴が出てるのが面白いところ。
ガルパンが国別対抗みたいな物語の仕立て方になった所以もこのへんに求められると思います。きっと。
建築様式とか、服飾の模様なんかでも英国国旗な柄とかアメカジなスタイルとか、文字通りの国柄があったりするじゃん?
あれと同じかわいらしさが戦車にも求められる訳ですよ。
長いこと「戦車は快速と歩兵補助の二種類で」という思考を刷新できなかったイギリス戦車は鈍足重厚なのが多い。
マチルダⅡさんもその代表例。
アメリカさんの現代戦車エイブラムスは正式採用は30年前。しかも20年前に生産終了している。
にも関わらず、レストアによる使い回しと、優れた基礎設計を基に改良を続け今でも世界水準の性能を維持している……という大量生産による合理性は二次大戦中の米戦車からの伝統。っぽい。
ひとがたくさん乗ってる。
車両やお国の事情によりまたかわるけど、基本は4人から5人乗りなんかな。
3人乗りだと人員の少なさそのものが弱点にあげられたりもするくらい忙しいのが戦車戦。
そもそもエンジンと無限軌道で走り回り、かつてなかった速度でもって戦況をめまぐるしく引っかき回す元凶そのものが戦車で、しかも電子制御とかまだもうちょっとだけ遠い時代の話でしたから目視確認・指示・装填・操縦・砲撃・通信連絡と全部人力。
一人一人の責任が重大で、チームワークの求められる兵器が戦車。
なので、戦車長・兼・装填手・兼・砲撃手な桃ちゃんが多少ポンコツでも悪く言わないでやってくれ。
人がいれば関係がありドラマが産まれ、そして人間性能が戦車の性能そのものを引き上げます。
ついでに戦車の中で一週間も二週間も過ごさなきゃなんないこともあったそうで、チームの居住空間というか、家そのものでさえあり得た。
兵器でありながらコンパクトなおうちでもある。このかわいらしさ!
戦車映画なんかだと車内にずらずら靴下が干してあったり、エロピンナップや十字架がかけられてたりすることが多く雰囲気が出てたけど、あれらもなまじフィクションではなかったのだろうなーと想像する次第。
映像間の格差はともかく。
戦車乗りは兄弟。戦車乗りは家族。
ガルパンでもそのへんはこだわったポイントらしく、車内の資料集めに散々苦労した結果に専門家から「(車内に関しては)ガチで優れた一級映像資料」と評されるに至ったとかどうとか。
等々と。聞きかじりと思い込みで好き放題書き散らしましたが、この勢いのまま次回に続く。
XCOM Whose is that?
その銃には『It's mine』と刻まれていた。
それがどれだけXXXXことか、説明が必要だろう。
まずその銃は異様に高価である。といっても超国家的・超法規的組織であるXCOMにおいて通俗的な貨幣価値はあまり通用しない。地球を守る文字通りの正義の味方の行動が為替レートにより変動を受けたり、あまつさえ消耗品の購入も今なら米amazonで用立てた方がお得だなんぞと計算してる場合でもない。よって、諸々の手間を省くために組織内にて保有される資金的リソースはクレジットという単位で便宜上管理されていた。
だから、その銃が異様に高価だとしてもそのものずばりの値段を表現することはできない。ただ、多少は額面の想像が利くものと比較することはできる。
そちらの。コードネームでレイブンと呼ばれる戦闘機。地球上の、国家間の防衛機密などすべて棄却し、人類がこれまで積み上げてきたあらゆる航空力学と工学の粋を結集しあらゆる意味でのコストを度外視し製造される最新最強の空戦戦闘機。
これを一機用立てるのに必要な資金が40クレジットである。
先の銃の値段は200クレジットだ。
そのへんの都市銀行の一軒二軒をモノポリー気分で購入できる額面である。
とはいえこれが法外な価格なのかどうか判断は難しい。
その銃は、地球上ではまだ製造不可能な合金からなる、地球上の誰もが理解の及ばない動力で動く、人類がそれを手にするまでは未知のものであった威力を有した兵器であり、地球人類すべてをエイリアンの侵略から守るための実用品だ。一点ものという言葉さえ及ばない人類には製造不可能な銃である。正直にいえば兵器転用なんぞもったいない。その動力が解明できれば人類は原子力よりもはるかに高効率で後腐れのないエネルギーを入手できるだろうし、そしてそれだけの莫大なエネルギーを内包しうる強度と軽量さとを兼ね備えた合金はどれだけの応用が可能か、地球文明にどれだけの物質的な躍進を与えるか、想像するだけで目のくらむ品である。
だが。
人類は、人類を守る尖兵であり最後の砦であるXCOMは、それを一人の兵士の腕に託す。
持ち回りで。
何せ現在の人類では製造不可能な代物なのだ。
今現在、XCOMが保有しているこの銃は三丁ある。エイリアンから運良く無傷で奪取できた鹵獲品がまず一丁。そこから長い期間を経て、何とか修理めいたことのできた一丁と、粗悪な模造品一丁とを揃えることができた。よって、長くの間、この銃を所持できた兵士は部隊中ただ一人だった。
エイリアンと直接交戦する実働部隊は(人員の落命や補充など流動的ではあるが)約二〇名ほどで構成される。その中から、任務ごとに最大六名からなるアタックチームを編成し交戦を行う。
対エイリアンに限らず、長く戦場に身をやつす兵士が、己の得物を愛銃などと称し偏愛する傾向があるのは、何も彼らに特殊な性癖が宿るからではない。害敵の排除により直接的に己の命を守る手段となる武器に、信頼と親愛にも似た情を抱くのはむしろ自然な心理傾向といえる。対峙する敵が、なにもかも、あらゆる意味で人類を凌駕した存在ならばなおのことだ。より強力な武器を望むのもまた頷き得る心境だろう。
しかしどれだけエイリアンが脅威的であろうとも、担うべき人類の命運が重かろうとも、その銃は一丁だけだった。
そして、任務が通達されるまで誰がそれを所持するか判然としなかった。任務ごとに、アタックチーム内の人員の役割ごとに、司令官直々に適正と目された一人にのみその銃は所持を許可された。
実働部隊員。エイリアンと直接交戦を行う戦士達。人類総X〇億人の命運を守るという責務をたった十数人で、その中のほんの六名で分かち合う。これほどまでに失敗の許されない任務が他にあるだろうか。
故に彼らは、体力においても知力においても精神力においても、人類の到達しうる極点に手が届きうる人材であった。あるいは、知力的には多少遜色が認められてもそれを補いうる体力を有した人材であった。
その中の一人の誰が行ったのかは不詳なままだが、ある日、それは発見された。
莫大なエネルギーを人の抱えうる大きさに凝縮し、その圧力を押さえ得る硬度の合金からなるその銃に、擦過痕で文字が刻印されていたのだ。
It's mine
後の調査で硬貨によって付けられた傷だと判明した。
「これはオレの」である。
先に述べたとおり、長くただ一人しか装備できず、実戦にあたるまで誰に配備されるかわからない、人類には過ぎた威力を持ち、それ故に、地球上で最もそれを持つ者の命を守りうる武器であった。それを「自分のものだ」と称するのは率直な、しかし過ぎた本音であったかも知れない。
もちろんこれだけの短文なれば他に解釈も適う。例えば……エイリアンの有する未知の技術。それを人類が鹵獲し、解明し、やがて「人類のモノだ」と誇示してみせるという、外敵に立ち向かう気概の込められた刻印だったかも知れない。
しかし数日後にまた別の手により別のひっかき傷が付けられた。
It's mine
No! It's mine!!!
「ちがう! オレのだ!!!」である。
ご丁寧に先に書かれた文字にがりがりと訂正を引いた上で、力強い感嘆符まで付け足された。
資質と努力とにより、超人的な知力と体力とを有する、人類の可能性そのものを体現したかのような彼らである。その知性は凡人の想像の及ぶべくもないのかもしれず、彼らの交わすジョークもまたそれと同じことがいえるのかも知れない。
ひとたび銃口から熱線が放たれれば、その先にあるものは何もかも例外なく瞬時に融解するエネルギーが膨大な内圧とともに込められた銃である。仮の想像だが、それを膝の上に置いて、がりがりがりとコインでもって傷を付けるのだ。その心境たるや。少々想像を絶する。
もちろんこの銃に限らず兵器の類いは相応の管理下に置かれている。それら管理体制の責任問題にまで発展しそうな椿事ではあるが、何せ直接手にするであろう実働部隊連中の仕業となればその行為に及ぶ機会は少なからずあり、結果的にはうやむやになった。
……ん? ということは実際にエイリアンと交戦間近だとか真っ最中だとかに行われたということだろうか……いや……うーん。
その想像が少々恐ろしいものになる傷が、この後にもう一度だけ付けられる。
It's mine
No! It's mine!!!
Stated from the conclusion , it......
『結論から述べると、両者の主張ともに誤りであるよう感じられる。この銃は我々個人が所有するものではない。狭義には、実戦にあたり装備が許可される点からもわかるとおり、所有権は我らの属する組織にある。だが、私が両名に述べたいのはより広義の所有権である。この銃は誰のものか? 我々は、対エイリアンという目的のため、ひいては存亡の危機に立たされた同胞のため、あらゆる法と国家とを越えて集められた、人類の代表である。人類が持ちうるすべての力は我々に集い、そして我々はすべての人類のためその力を行使する。この銃は誰のものか? それを改めて問い、改めて答えるならばこれは、個人のものではない。人類すべてのものである。』
という旨の英文が刻まれた。ひっかき傷でである。長々と。
もちろん丁寧に先に刻まれた「オレの」「違う! オレの!」の両者の文字も改めて訂正が引かれている。
過ぎた本音に対する、過ぎたマジレスといったところだろうか。
己の命と、人類の命運とを賭して、エイリアンと交戦しながら、腕にはこのようなジョークともとれない文字の刻まれた銃を抱え、振り回すのだ。悪夢といえば悪夢だろうか。
ただ。
実際にエイリアンと立ち向かう実戦部隊がこの文字を眺めたならば、我々とは違う感想を抱くかもしれない。
ともあれ、誰の仕業かは判明しないままだが、ことさら犯人を捜す動きもなかった。あるいは、実働部隊連中には問わずもがなのことだったかも知れない。
口はばかる本音をあけすけに口にできるアイツ。それに冗談めいて乗るアイツ。それらを本気で受け取り誠実に返答してしまう冗談の通じないアイツ。
思えば個性的な行動ではある。
熱のこもった長文に感化されたのかどうなのか、その銃に四度目の傷がつくことはなかった。
それら文面は、過ぎた本音に、過ぎたマジレスだ。
XCOMは人類の擁する最強の尖兵にして最後の砦だ。一歩後退し、あるいは背後をみせれば、奴らエイリアンの飛来した、我ら人類が未だ知り得ぬ宇宙と同じく深い暗黒に呑まれ、その先は知れない。
無論、XCOMは実働部隊でのみ組織されるのではない。アタックチーム六名を支える作戦本部、技術者、研究員。あるいはその運営を支える出資者まで数えるならば相応の規模となる。だが、侵略を阻むにせよ反抗を試みるにせよ、彼ら実働部隊が踏みとどまり、踏み込んだ地点が人類に許された生存圏となるのだ。
エイリアンどもと交戦している間、全てを実働部隊が背負うのである。いわば、地球上の人類の命を、十数名で分かちあい、戦場に賭す。
その覚悟と、意思と、決意と、自負は、我々が想像するには余りある。
だから、彼らにとっては、そのようなマジレスによって今さら問われずとも既知であり、熟知のことだったと思われる。
『誰のものか? それを改めて問い、改めて答えるならば』
甲殻類を思わせる下半身に、蟻か蜂かに似た上半身にはもちろん獰悪な牙を持つ顎が備わっている。
それはクリサリドと渾名されたエイリアンである。
動体とみるや猛烈な突進を試みる攻撃衝動しか備わってないようなその行動原理は、悪いことに、強靱な外骨格に鎧われ耐久力に優れた体により合理的な戦術行動に仕立て上げられている。
何より恐るべきは口腔にある産卵管と、そこに繁殖するある種の細菌である。この細菌は宿主の意思を奪い、いわばゾンビに仕立てあげる。噛みつくことによりこの細菌で対象を犯し、それと同時に産卵を行う。この卵はすさまじい速度で宿主の肉体を食い破り、ものの数分で、成体となんら遜色のない姿にまで成長する。そうして瞬く間に数を殖やしながら侵略先にある生命体を駆逐する。
生物としては非合理な生態である。しかし兵器としては合理的だ。よってエイリアンにより遺伝子改造を施された生体兵器とする推論もある。
これに、部隊員の一人が殺害された。
形としては相討ちだった。エイリアンによるテロ行為下の救命活動の最中、死角から突撃してきたクリサリドの牙を受けながらも至近距離による射撃でこれを撃滅。しかし、彼は喉元に深く傷を受け、頸動脈より多量の血を吹きながら崩れ落ちた。
そして再び起き上がった。
部隊員の処置は速やかだった。
まるで脊椎反射のような、思考の分け入る隙さえなく、速やかに。
後方支援として射撃を行うべく長射程銃を構えていた二人の部隊員がほぼ同時に彼に対し監視射撃を、リアクションショットを行ったのである。
鮮やかなまでのその処置を可能にした所以はなんだっただろうか。
目前に現れた犠牲者により惹起させられた恐怖か。
人類の命運を背負う透徹された使命感か。
司令官による指示を下すため、研究材料として少しでも多く情報を得るため、彼らの交戦は詳細に映像記録が行われている。よって二人の部隊員の速やかな決断は多くの者が知るところであった。だが、それに対し彼ら本人に何かを尋ねた者は一人としていなかった。
あの状況下に選択しうる最適解を、可能な限りの迅速さで選び取ったその行為に対し、何かを問う必要もなかったのは確かである。
エイリアンとの交戦が行われ、これの制圧に成功した地帯には、交戦を行うのとはまた別の実働部隊が即座に派遣される。いうなれば回収部隊である。
エイリアンの所有する物品はたとえ破損した欠片でさえ人類には過ぎた研究材料だ。そしてエイリアン自身の肉片もである。それらを可能な限り回収し、必要であれば目撃者への情報統制を行い、また、死傷した民間人の遺体も献体として研究機関へ回すため彼らが回収を行う。無論、その意味では実働部隊の遺体も同じくである。 彼らは死して後も対エイリアンのため活用される。
そして、彼らの装備品もまた回収される。
これらは再利用可能である場合がほとんどである。
そうして、あの銃もまた、部隊員の手と手を渡り渡されてゆく。
もはや人の遺体とも見分けられぬ姿となった遺骸の、抜け殻のようにカラバスアーマーが転がるそばに横たわる銃を、回収部隊の一人が拾いあげながら、呟く。
It's mine
そうだな。やっぱり、コイツはお前のものじゃなかったな。
『誰のものか? それを改めて問い、改めて答えるならば』
――そう。あるいは、この命さえも。
八九式中戦車のしっぽがかわいいという話。
おれはおとこのなのにロボットの魅力がいまいちわかんないんだけど。
それをそのまんま放言すると傷付くひとがけっこーいるんだなということに最近気がつきましたがそれはともかくとして八九式中戦車のしっぽがカワイイという話をしたいと思います。
この部分。尻尾。カワイイ。なぜ八九式がアヒルさんチームなのか説明不要な可愛らしさ。
八九式というと、ガルパンを鈍色(というとても大事な色!)に彩る数多くの登場車両のなかでもたぶんブッチギリに最弱な戦車だろうけど。このかわいらしいパーツははっきゅんが最弱であることもまた象徴してたりする(はず。
正式には尾体(尾橇)と呼ばれる部位だそうで、塹壕を乗り越えやすくするための引っかかりとして付けられたのが主な目的だそうな。
塹壕ってのは戦場において即席籠城というか、弾丸を避けたり、それそのものを障害物にする為などに掘られる溝のことね。
塹壕越えの為に付けられた部分ってことは、戦車の誕生そのものに密接な関わりを持つ部位ということ。第一次世界大戦にまでさかのぼるお話になってきますが順を追ってお話をしていきますと。
戦争の歴史は兵器の歴史。新たな兵器が生まれることでそれの対策としてまた新たな戦術や兵器が生まれて戦場を塗り替えしあうイタチごっこ。
で。一次大戦をまずでっかく塗り替えたのは、大戦直前に大量生産が可能になった機関銃という存在だった。コイツがまず戦場を穴ぼこだらけにする。
弾痕で穴ぼこという意味でもあるけれど、当たれば即死な弾幕を途切れなく張れるマシンガンなんぞという兵器のせいで、その射線から逃れるためにもとにかく塹壕を掘らなきゃならなくなった。
今も昔も塹壕は防衛の基本ではあるけれど、ことに一次大戦は塹壕の戦争で、モグラの戦争なんて記述をどっかで読んだ気がするほどの勢い。
元々塹壕は弾丸だけでなく、騎馬の突撃なども防ぐ障害物みたいな意味合いもあったみたいだけど、それを乗り越えようとしたらマシンガンの雨が降ってくるのだから相性は最悪だ。
人だろうが馬だろうが人海戦術なんて無意味にダカダカダカダカと音が鳴れ鳴ればパタパタパタパタと人が死ぬ死ぬ死ぬ。
生身じゃ攻略なんてもうどうやったって無理。
だから、機関銃をはじける鋼板を、塹壕だの鉄条網だのをもりもり乗り越えて進める無限軌道に乗っけて突き進める兵器が生み出された。
それが菱形戦車ことマークⅠちゃん。
このフォルムでオスとメスが存在するってのがまたかわいいんだけどその話はおいといて。幾たびかの改修を経る必要はあったり、搭乗員の苦難だとかを置いとけば対塹壕戦において相当な効力を発揮したらしい。その威容は各国に影響を与えて同時進行的に開発が進む。その結果、「先陣切って要所に突き進むなら大砲があった方がよくね?」だの「敗走する敵を追うために騎馬と同等の速度がほしい」だの「指揮官のっけるなら回転砲塔があれば万全じゃね?」などの用兵上のニーズに十分応えうるポテンシャルを有していた戦車という兵器は、ただの塹壕突破兵器に留まらず、戦場の主役そのものへと変容していく。
というのが一次大戦付近のお話。ガルパンの登場車両は主に二次大戦なのでそこの話をしなきゃなりません。
で。機関銃の脅威が鉄の装甲と大砲とをエンジンに乗っけて突き進む「戦車というバケモノ」を生んだように、歴史の必然はこのバケモノを退治すべく兵器も産み落とします。
しかしてそれもまた戦車だった。
二次大戦下において、戦車の役割や性能は対戦車という形でシェイプアップされていく。
高速で移動できて、盾にもなり、陣容を破壊し敵兵を蹴散らし攻撃の先鞭ともなれる戦車はいうなれば防衛においても侵攻においても戦場の主役といえた。過言を承知でいうと、戦術や戦略という言葉はどうやって戦車を動かしてどうやって戦車を倒しどうやって戦車を活かすかという意味に取って代わられる部分さえあった。そうなるともう戦車誕生当初の目的であった「塹壕突破兵器」てのは二次的三次的な役目となっていた。
それもまあ当然の話ではある。戦争は人類の技術を猛烈に加速させるお祭り騒ぎでもある。
一次大戦で求められた役割なんてのは、それはもう恐ろしい勢いで古ぼけて化石じみた概念になるのも当たり前なのである。
ということでまとめると。塹壕突破用のパーツなんか持ってる八九式ちゃんはその化石じみた概念ということである(わー。
正確に言うと八九式中戦車ちゃんのあの尻尾はそのくらいの勢いでとっくに廃れた戦術を未だに引きずってる極めて前時代的な遺物のようなパーツであって。
あの尻尾ひとつで、八九式がどれだけ時代遅れな戦車なのかそのものを象徴しているといえるのである。
マジカワイイ。
尻尾てのは人類も進化のさなかになくしたものだよな。尾てい骨。
ついでに、オタマジャクシがカエルとして成熟するとしっぽがなくなったりするし、未だにしっぽを引きずってるのはそれこそ進化できてないというイメージそのままなのがなんだか面白いところだけど。
史実においてもあんまし意味なかったらしいねあの尻尾。荷物置きとしては便利だったって話があるけど。
そんなマジカワイイ尻尾だけど、プラウダ戦での「おっとっとぉ」てシーンではまさかの活躍をみせたよね。
そりがひしゃげてるのがおわかり頂けるでしょうか。健気さに涙出るね。