死者の書片手に待ってます (ピエール瀧麻薬取締法違反容疑による逮捕報道によせて。
がんばって生活を続ける甲斐があるほど世の中って面白いものだっけ。
という疑問は中二病の後遺症を未だ引きずっている人間にありがちな症例ですが。ここでいう中二病の後遺症を未だ引きずっている人間てのは私のことですが。
だから。人の限界に挑戦し生涯そのものを賭してるよに生きるアスリートやゲーマーをみたら、普段は余剰時間の堆積にしか思えない人生というものが一刹那であれムダには出来ない貴重な残り時間のように思えてくるし。
面白い、かっこいい、あるいは負の感情を、もしくはもっと言葉にしづらい感情をうまいこと表現した芸術家の諸作品に触れたらば、日常というものは魯鈍な私が気付いていないだけで切り口さえ正確ならばやたら面白いものが転がりでてくるのでは無いかと思わせてくれるし。
要はそうした諸作品群に依存することでなんとか死に至る病こと退屈をやりすごしているわけです。
その点においても電気グルーヴなんてのはずいぶんと先端にありまして。
かっこいいテクノにトンチキな歌詞や演出を乗っける類いのその手法はまさしく「コレってカッコイイだろ!」「気持ちいいだろ!」「面白いだろ!」と自ら価値を切り拓いていくような。先駆的な。そんな姿にみえて。日々や日常や人生に対しつまんねーと拗ねた態度をとり続けるのは結局のとこ精神的肉体的怠慢の末路に過ぎないのだろうなと、多少、我が身を省みるきっかけや理由にさえなっていたわけです。
電気という活動に納めなくても、ピエール瀧ってのはそういう人間こと私にとって独特な人物だったんよね。トンチキで反社会的ともニュアンスを異にする態度や作風で、お茶の間という空間からはおおむね遠い存在だったのが気が付くと日本アカデミー賞、NHK朝ドラなど経てて、やたらと顎の鋭角なスノーマンから異様なテンションのあの声がまろびでてるのをみたらばそれこそ悪ふざけにしか思えなかった。
フフ。今では大河ドラマになんか出演してるけどさ。でも知ってるんだぜ。おれはよォ……。
みたいな。
たいへん一方的な親近感よね。
それがなー……。
そうなー……。
まあ、そういうことですよ……。
伊集院光氏は「なんでそんなものが必要だったんだろうと」とコメントし、赤江珠緒さんは「なんでだよ。なんでよと。そんな言葉ばかりリフレインしております」とコメントしてて。近しい人でさえそうした反応ができない状態なのだからただのファンである私なんぞは何も言えず、ただこうした、他のどんな著名人が、例え他の私の好きなアーティストが同じような罪で逮捕されたとしてもなお、たぶん感じられない類いの失意をもてあそぶことしか出来んわけです。
そうねー……。
仮に(任意の30年以上活動している音楽家名を当てはめてください)が薬物逮捕されたとしても、(任意の学生時分から好きなマンガ家名を当てはめてください)がクスリやってたとしても、たぶん。
ピエール瀧が薬物使用で逮捕されたという、今回の報道にまつわるような感情が起こることはないんだろうな。
失意という言葉くらいでしか表現できない感情。
怒りを感じられるほど身近な存在ではなく、例えば突然の訃報などの悲しみに暮れなければならない出来事とは感じられない。とはいっても復帰をいつまでも待ち続けます! と熱烈な声をあげるのもなんだか違うよう感じるし。臭いものに蓋式に関連作品を封殺し始める諸メディアへの憤りもそんなには覚えない。
だから。ただ。
ああ。世の中ってやっぱり面白くもなんともねえんだなという事実を。奥歯あたりで噛みしめながら生きていくしかないんかなあと。