どこぞの文字書き趣味が初めて官能小説短編集を書いた記録。

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 という名のあとがき。
 たぶん世界中でおれにしか興味のない話題だと思うけど、「webにあげるわ」と約束をしておりましたので。
 何の同人誌のあとがきかというと、ココには成人指定なモノは載っけてはならないそうなので言明はしませんが、もしも万が一興味が向かれた方がいらしたら「宵待月黒猫塔。 メロンブックス」とかで検索してみるといいかも知れません。


あとがきというかネタばらしというか。

 性的交渉をともなうお話を書いたことがこれまでなかった……というわけでもないんだけど。文字書き趣味に費やしてきた半生て期間に比べると相当少ないのはたぶん事実で。相応の回数になってきた同人誌作りでも、ばっちり十八禁と銘打った本を出したのはまちがいなくこれが初のことでした。
 要するに私の初めてなわけです。
 なので色々とメモしておきたい的な意図のあとがきです。
 ネタばらし的な意味合いも多分に含まれますので読後感を大切にしてくださるかたは読み飛ばしどーん推奨。


・動機。
 私の文章はいちいちクドい。
 世の娯楽のほとんどは、ユーザーの負担を軽減する方向に動いてってる。故に小説もまた可能な限り削ぎ落とし彫琢された文章にすべきだろうとの自覚はあれども、うわーいと脳とキーボードを直結させるのが楽しくて文字を書いてるんだから、そこを自重し削れと言われても難しいところがある。と。いう悩みを頭の片隅にぶらさげたまんまアダルトビデオを眺めてたら、ふと。
 官能小説ならそれが読む目的でもあるんだからねっとりと地の文書き込むのも読者サービスになるんじゃね? どうなん? と思いついた。


・きっかけ。
 コミケで出すつもりだった本が間に合いそうになかったので次善策が必要になった。どうしようか。そういえばこないだ官能小説ならーとかどうのこうの言ってなかったっけ。
 ふむ。
 やったことのないことは取りあえずやってみれ精神で動いているので、経験のない一八禁短編集てのも。ナシではないのか。試してみる価値はあるかも知れませんぜ。
 と。いざ筆をのばしてみると書いても書いても終わらなくて泡吹きながら書きました。
 そもそもが、長文を書きたーいそれを我慢するのが苦手ェーとか抜かしてるやつに(官能小説なら)長文書いても許されるんじゃねとかいう動機を渡したらばこんななるのは自明なことだった気がする。
 ねっとりとした描写が許されたかどうかは読者諸賢に判断をお任せしたく存じます。


・書いてみると。
 さすがに初めてのことで諸々の迷い箸がありました。例えば語彙の選択。チンコとかワレメちゃんとかコミカルな方面だと雰囲気から浮くし、黒い密林に馥郁と香る肉厚の花弁が真珠の如く艶やかに濡れそぼりーとかだとそれはそれで滑稽というエロでもグロでもある一線を越えるとお笑いになってしまう問題。
 文章のうえでさえ空気を読むのってムズい。
 その線でいうと。喘ぎ声も……コレでいいのかな。ただの擬音といえばただの擬音なんだしこんなところでそんな悩むのも……いや、喘ぎ声はサービスの一環だし効果的な表現……そもそもあんあんみたいな喘ぎ声ってリアリティの面ではどうなん? いやそこはもうファンタジーに振り切っていいだろう。等ぶつぶつと。
 あと。やっぱ。
 いつも以上に正気じゃ書けない部分がありましたわね。ヒトって四六時中エロいこと考えてたら集団生活が送れなくなるんで、たぶんそういう、「我にー、返れー!」みたいなことを定期的に警告してくる機構が脳みそに仕込まれてるんじゃあるまいか。
 けども書いても書いても終わらないうえに〆切まであるんじゃそんなことも言ってられない。とにかく、意識的に、このストッパーをぶちやぶるべく、躊躇うな! 踏み抜け、アクセルを! とか唱えながら書いてたらいつのまにかポプとかピピとかいう類いのJKが頭に住み着いて『つっこむぞ、つかまれッ!』て見事なハンドリングで竹書房でもないぼくの理性を定期的にぶっとばしてくれました。
 ありがとうAC部。


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・副作用。
 今まであんまアイドルを性的な目線でみたことがなかったんで(マジ)その扉を開けてしまえば……特にライラさんが。なんかしばらく直視できなくなりました。えろすぎる。


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 あとエロ動画等みてても連想が働くのか書き最中のお話の展開に思考が流れたり、その動画からヒントを見出そうとしてみたりで、とにかく、目的を達するまでにむやみに時間が掛かるようになってしまった。自慰って集中力の必要な行為だったのね……。
 それから。私は二次創作はだいたい「このキャラは! こんな性格で! こんな内面と反応だと思うんですがどうですかァー!」みたいな論文を書くよな気分で書いてるんだけど。芹沢あさひさんの場合はまだ公式に深掘りされてなく、ある程度手探りで、ひいてはある程度自分の理想に寄せる形で書けたりもするわけですが。エロい話でそれをやるとなんかだいぶ危険な気がしますね。
 自分の性癖の理想に近付けることが出来る。みたいな。
 これはヤバい気がする。正直相当色々と楽しい。やべえ。そうか。エロ作家先生のみなさまがたはこんな世界に生きていたのか……。

 逆に言えば、二次創作である限りキャラの造型は一次元という大優先設定があるわけで。それを墨守してはほんとに自分の趣味の性癖を反映させきれないところもあるんだろうなと。催眠ジャンルの流行る理由がわかった気もしました。


・タイトルの由来。
 察しがいいか、担当のプロフ暗唱余裕勢ならとっくに登場アイドルの年齢とスリーサイズとを並べたものと気付かれていることかと。
 話が書けそうな三人を並べてみるとみごとにティーンで揃ってしまいまして。ハイならともかくローが二枚。それどうなん? とは思いつつ。でもまー創作上の人物の年齢はフレーバーに過ぎず、いやむしろ概念上の存在だからこそ属するところを定める数字は大事で。いやしかしロリだとか学生だとか、属性ばかりに注目しては個人を蔑ろにすることに繋がりかねんよなとかぐるぐるした後に。
 でもコレは官能小説だし。
 いうなれば、その人物の、『女性である』という部分を強く強くクローズアップしたものなのだから。そこんところの俗悪さは敢えて受け止めないとダメなんじゃないか。
 じゃあ。ということでスリーサイズという数字を、人格(や物語より)も前に出してみて。加えて表紙絵にはメジャーをモチーフに入れるようお願いしてみました。ありがとうイラストを請け負ってくれた宇賀井さん。

 三人のお話はそれぞれバラバラに思いついたものであって、テーマとして用意したものは特になかったのですが、振り返ってみれば『アイドルとやっちゃうことの責任や代償』みたいな話に終始したように思います。これは偶然でなく、彼女らは何よりもアイドルとして我々の前にあるわけで。立場・境遇・環境は、思った以上に人格と不可分であるのかも知れません。



・そもそもがぶっちゃけて言えば。
『登場人物にある程度の愛着を持つと、その二次創作作品におけるエロを受け付けられなくなる』という人種が世の中に何割かいますけど。私もそっち側の人間なんスよね。
 そんな癖を持つ人間が、それでも、エロを通じてこそ描ける側面だってあるはずだろうと歯を食いしばりがちに書いたのが今回のお話群だったりします。そのうえで、掲げたテーマが『せっかく官能小説に挑むのだからエロ描写からは逃げるなよマジでわかってんだろなお前』みたいな。


ライラさんのお話。

 はやめに読書趣味に目覚めた少年少女はその意味もわかんないウチから男女の情事を読んでたりする。読書初心者向けと勧められるショートショートな短編集には社会派ブラックユーモアも多くて、男女の情事もテーマになりがちだからである。私の場合は阿刀田高先生の短編集がそれで――『不倫相手のご婦人の飼ってたオウムが、そのご婦人の喘ぎ声を覚えてた』みたいな話を小学生時分のおれは何を思いながら読んでたんだろ。
 初めての官能小説を書くべーと腕まくりをすれば、自分の中の原初体験を訪れ直すのも自然なことで、かなり直接的に先生の作風を参照してる気がします。まあ書き終わったあとで気が付いたんだけど。女性の部屋まで移動するシーンから入るあたりモロな気がする。

 とにかく初めてのガチエロ小説であって勝手のわからなさに苦心しながら書いてましたけど、手をとめてぼんやりと「ライラさんは、もうちょっとこう……」だの「ライラさんはなあ……」とか考える時間が多かったのは、馴れてなかったからでなく、やっぱそれがライラさんだったからだろうなと。
 そのぼんやりの果てに落ち着いたのは、エロに対して、積極的でも消極的でもなく、エロどころかこの世のほとんどのものをほがらかに受容する姿でした。エロもその一環でしかないような。
 一言で言えば観音様。

 お話としては正直……ここまで持ち上げて落とすつもりはなかったんだよう。甘えようとしたら幾らでも甘やかせてくれるライラさんにずぶずぶになってるうちに甘々になっちゃって……挙げ句に、「いやコレ、ライラさんの二次創作だからという理由で手に取ってくれるライラさん担当のひとに悪くない?」とか怖くなって書いてる最中にオチを変えたくなって。いや読者に忖度するくらいなら筆を折るぞおれはだのと揉み合って。
 その挙げ句に娘さんが生まれました。
 最初からこのオチが思いつかない私はエロの才能がないと思う。
 話の決着がついてるよにみえるのに続くエレベーターのくだりはそういう経緯なんだけど、このシーンでもポプとかピピ的なJKが「躊躇うな! 踏み込め!」とか言い始めてイヤ出てこなくていいよと。

晶葉さんの話。

 世の中の仕組みの変遷にともなって、性別の意味や垣根が段々薄くなってってるのは確かなことだと思うけど、それでも、今現在でいう男性的な・女性的な役割って分担という意味でやっぱり求められ続けるんじゃなかろうか。私は元々、男らしいとか女っぽいとかいう言葉がどうにもキライで忌避しがちだから、性別てのがどんどん透明になってくのは歓迎したいとこではあるんだけど。それでも結局なくならないのならば、個人個人が、おれは男を、おれは女を、と、ロールを選べるよな世の中になればいいんじゃねえか。そんで相手の選択をこそ尊重できればいいんじゃねえのかな。
 男であることを、女であることを、めんどくさいと思わなかった人間はたぶんいないよな。
 このへんの個人的なうだうだは、池袋博士の話だけじゃなくてライラさんの性愛の儀典云々のくだりにも滲み出てます。狭義な社会的役割に殉じようとするその姿勢だってきっとそれなりに美しいんじゃないのか。
 もしくは、エロ小説という、その人格の持つたくさんの要素のなかから性別て部分を恣意的に抽出した話を書く事への言い訳というか……このへんにだらだら思考を費やしてしまうあたりマジでエロの才能ないんちゃうか俺。

 池袋晶葉さんに対して。私はデレマスのなかでも彼女こそが屈指に性的劣情を催させる人物であると評してやまないのですが。彼女は芯が通ってるくせにその境界をふらふらしがちで、どちらかに揺れる度に普段は目立ってない属性が弥増すというか……。自助自立してるのにときたまPには弱みをみせる。自己さえ分析の対象だから、虚勢でもなく天才を自称できるけども、不得手な分野も自覚してるからその自覚があるだけ弱気にもなる。そういう、こう。無頓着な部分が。何がいいたいかというとおれは足癖の悪いおんなのこが大好きだ! 男でも女でも自分の性に無頓着なやつが好き!


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 なので、晶葉さんのお話だけは今回用に思いついた話でなくて、長いこと頭にあったやつでした。具体的にはムーンライトバニーとして再登場した際に匿名掲示板の話題の流れで思いついたまんまを投稿して好評を得たやつがベース。ほんま古いな。

 とかいう割には。ぶっちゃけると、今回のお話において池袋博士のエミュレーションが十全に遂行されてるか、少々自信がない。口調はもちろん、オチとしてこれが相応しかったのかどうか。だって池袋晶葉担当のみなさん揃いも揃ってガチだからそういう方達にお出しすることを思うと萎縮しがちというか……具体的には、Pのことをどのくらい「助手」呼ばわりするのかとか。
 ゲーム本編のテキストを参照すると、結構な割合で名前呼びだったりするんよね。ユーザーネームを参照する都合だと思うんだけど。そのあたり踏まえて、作中でのP称は少々の揺らぎを含ませたまんまにしてます。

 他、個人的な体験としては。
 三つのお話を書くに際して主観視点と三人称視点とを意識してばらけさせてみて。晶葉さんの場合は三人称=神の視点を意識して書いた部分多めなんですが、触手に嫉妬しながら書きました。たぶん染み出てるとおもう。

あさひさんのお話。

 この話を書いた当時の話ではない出来事なので少々フェアじゃないんですが。このあとがきを書いている最中に、限定pSSR芹沢あさひが追加されましてね。
 この話って、ざっくり言えば『あさひが世間の常識に背した興味を抱いてしまい、しかしそれを承知で叶えてあげた』という話じゃないですか。
 それなのにね。公式はね。【空と青とアイツ】芹沢あさひのPは、『あさひが世間の常識に反したらば、あさひと世界とを繋ぎ止める為にその願望を捨てさせる』て決断をしたんですよね。
 泣いたよね。
 あさひさんはその存在自体がなんかもうおれの個人的なテーマに刺さる。すごいささる。

 それはそれとして。
 長年の疑問じゃあるんですよね。なんでセックスって表立って話題にしたらダメなのか。隠されるのか。特定個人とだけ許されて、それ以外の人間と行うと罪にさえ問われるのか。もちろんそれらには(なんせ法で整備されるくらいだし)答えが各々用意されてるわけですけど。そのへんの回答に行き着いたとしても、それでも社会と個人とを比べたら常に社会が優先されてしまうことだとか、建前で隠され続けてる事実だとか、例えば原初の商売は売春だったんだぜと常識の移り変わりで左右されがちなことだとか。何かと釈然としない部分は残ります。
 そのへんのワガママを全部あさひさんに背負って貰ったような話。
 たぶん私は死後、一四才に『XXXXXXから大丈夫っす!』と叫ばせたやつ専用の地獄に落ちる。

 改めて読み返すと、エロに至るまでがやたら長いですねこのエロ小説。エロシーンに到達してからはずっとエロいことしてるからご寛恕頂きたいですが。
 まあ一四才のアイドルとセックスするのにかかるのは一五〇〇〇文字と書けばそれでも短い方じゃないっスかね。書いてる最中はほんと可愛いなこいつ。ほんと可愛いな芹沢あさひはとか呟きながら書いてました。書いてる当人的には「待つの苦手っす」て言ってるシーンが最カワシーンなんですが伝わってるでしょうか。
 ところで、お話てのは基本的に「目的」「障害」「達成(獲得・挫折)」の三段階で構成されるわけですが。終始優柔不断で右往左往して美少女に振り回されてばっかなこの男がなんでこんな可愛い娘を物語上のトレジャーとして獲得できるんですかね?
 なんか理不尽じゃない?
 なんでこのひと自分の書いた話にこんな腹立ててんの?
 まあ。そのへんは。Pがあさひを獲得したというよりも、あさひがPを獲得したと解釈すべきなんでしょう。捕食されたと言い換えてもいい。
 だからあさひが獲得したー、とも言える初体験ふくめセックスシーンは可能な限り彼女のわがままを叶える形にしました。Pが割とオトナらしくリードしてみせてるのはそういうことです。全部あさひの為です。だから「気持ちいいか?」だの「大丈夫か?」だのの台詞は言わせないように……したつもりなのに読み返してみると結構言ってやがんなコイツ。ダメじゃねえか。

 芹沢あさひは自分の欲求にとても素直で、素直なだけに一直線で、それが寄り道や脇道にみえたとしても、後から付いてくるような形で或いは当人さえ気付いてない本当にほしいものを手に入れてしまう。公式の用意したバレンタインイベもホワイトデーもそんな感じであるよう思います。そういう天才でもあるのかなと。


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 だから極々個人的な打ち明け話をすると、芹沢あさひにはPに恋慕してほしくないんですよね。というかそもそもあんま特定個人に懸想して欲しくないというか……一番や二番や、本音や建て前とかそういう器用さとは無縁な娘でしょう。今でこそアイドルがいちばんだけど、それが一番でなくなるとそのままどこかに行ってしまうような、そういう危うさこそが、こう、極々個人的なな? やべ。あとがきじゃなくてただのクソデカ感情表明会見になってきた。
 ただそれでも、公式の展開やこの話を書いてみたりとか人様の創作を通じたりとかで、あさひに必要なのは、あさひをこの世界に繋ぎ止める重石的な存在なのかなと。そんでPこそがそれを担うべきであって。だから、あさひを繋ぎ止められるならば、この世界に属している人間が彼女の興味をひかなければならず。その結果が恋人だろうがなんだろうが構いやしねえやと。最近は思います。
 そのへんの話を続編で書けたらなあ。書けるかなあ。

追加のお話。

 再版・製本印刷を機会に追加で書いてみました。
 なんでだろね。……いや、なんでだろ。
 この本を再版するにあたって誤字脱字など校正をしてみれば「……エロ描写から逃げるな。をテーマにした割に、セックスシーンの途中で場面転換してるよね。それどうなん?」と疑問が湧いてたところに、人様からこの本を激賞頂きまして。わーいと舞い上がった勢いそのままになんか書いてました。
 あんま説明になってない気がする。
 まあ。コピ本でなく、印刷屋さんを経た形で残るんだからできるだけ完全版にしたいよね的な……?

 それぞれ、場面転換の都合でぶつ切りになったセックスシーンを追補する形で書き継いでおります。だから本編に追加しようと思えば追加できたんだけど、リズムやテーマを崩しかねない部分もあるかもなと思い、独立させ尻尾に追加しました。なおのことなんでかいたのかわかんないな。
 このあとがきのお口直しとして、お口直しになるかどうかは正直わかんないものの。まあとにかく、よろしければご賞覧ください。

エンドロール。

 二次創作は原作から生まれるものであって、その物語を原作にお返しするのも作法の一つかもしれません。リセットという形であり、だいぶ乱暴にも思いますが、そうした所作を思い追加してみました。
「あれー?」と感じられた方は、読まなかったことにしてくださいなんつって。 





 そっ
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