大洗女子の搭乗車輌の理由とかその2。

 そういえば、ガルパンて戦車の性能に関してあんまりネガティブな話しないよね。
 特に大洗が保有する戦車は視聴者にもそこはかとなく伝わるだろうけどどれもこれもなかなかになかなかな性能なんだけど、本来のコンセプトにある「弱小校が強豪に立ち向かう」みたいな物語のスパイスとしては、そのあたりの話を強調しない方がかえって不自然な気がする。
 とはいっても完全にないわけではない。「個性的な戦車ですこと」だの「こんな戦車ばっかり連れてきて、カチューシャを笑わせるつもりなのね!?」だの。


 おそらくは敢えて控えめな部分なんだろうと察せるところではありますが、そこんところを敢えて、わざわざ、「らしい」「じゃないかな」「と誰かが言ってた」とエクスキューズ満載の知識でまとめていこうと思います。




38(t)戦車 故郷を守る。という大義。

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 秋山殿のいうとおり、(t)は重さのことではなくて、ドイツ語でチェコを指すTschechischのT。
 三八年式チェコ製戦車。


 一次大戦を終えてオーストリア・ハンガリー帝国から独立を果たしたチェコスロバキアは、政治的軍事的に不安定な地理上の要請から元より大急ぎで武装の近代化を図っていた。けれども結局、脅威を増すナチスドイツに欧州を、あるいは世界経済安定のための人身御供のように併合され、自国を守るべく設計された最新鋭戦車はすべてドイツ軍の為に生産されることになった。というヒストリカルな経緯を持つのでこういう名称。

 
 性能面はどうだったかというと、戦間期において工業力という点ではどの国もどっこいどっこいだった中で、軍需工場を多く抱えていたチェコは各国から一歩先を行く技術を有していた。そんなチェコが先んじるべく開発を急いでいたのだから、当時としては・軽戦車としては・という但し書きこそ必要なものの、高水準かつ機械的信頼性に長けた上々の完成度だったらしい。
 ドイツ自国肝いりの三号戦車・四号戦車の生産が遅れるなかで、別の生産ラインから製造される38(t)は機甲師団の車輌不足を補い、緒戦は主力として立派に勤めを果たし、大戦後期まで自走砲や対空自走砲に改造されながら戦い抜いた。その評価はチェコ併合による最大の恩恵はこの戦車にあった」という誰かさんの言葉に表されている。


 という話なんだけど、メタなお話をするとこれだけ献身的な戦車になんで、あの、生徒会チームことカメさんチームが搭乗してるかがちょっとわからない。
 戦車長兼装填手兼砲撃手兼、砲塔手動回転要員というお仕事を桃ちゃんに押しつけたかったからなのか。
 それとも、三突・四号戦車にレアなポルシェティーガーまで保有してるのを思うと、かつて大洗に存在した戦車道チームはドイツ戦車に傾倒してたーなんて裏設定があるんかなーとか。


 或いは……ナチスドイツの領土的野心に翻弄された38(t)の開発経緯が、物語初期の生徒会チームの横暴(曰く正当な権利)に重なるからでしょうか。
 恫喝めいた併合、そうして麾下に入れた存在にすがらざるを得ない状況。因果なものやね。
 いずれにせよ、国を守るというのは(チェコスロバキア・ドイツのどちらの視点にたっても)大変なことでありますな。



38(t)改 ヘッツァー仕様 為政者は常に夢をみる。

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 上述の通り、38tは終戦までに様々な派生系を生んだ。軽駆逐戦車に分類されるヘッツァーもその流用系の一つである。

 ……というのは、かつて戦車模型解説書に頻出してた間違いらしい。らしい、というのは私自身そーした記述を読んだことがないからだけども!
 詳しく言うと、38tが偵察用車輌として改修を試みられたもののお蔵入りとなった、その38t改の設計を流用し開発されたのがヘッツァーであって。38tから直接ヘッツァーに改造された例は全くない+38tから改造するのは相当無理がある。というのが史実だそうだ。


 少しだけ遠い世界の話だけど、このへんの戦車模型由来の誤解というものはそれはそれである種のおじさんたちにロマンや郷愁を感じさせるものだそうで。かつて戦車模型ブームを生きた少年にとって、戦車知識は模型を通じて得るものだった。その一方で、資料不足や販売戦略などの都合でもって模型についてくる解説書が史実的に正しいとは限らない時代でもあった。
 例えば、ヤークトティーガーという戦車が、有名な将校の名を取って「ロンメル戦車」として売り出されたものの当のロンメルさんはその戦車に乗ったことなんて一度もなかったりとか、そういう話?


 作中では「ヘッツァー改造キット」を購入してきて、いかにもプラモデル的な改造を施してるけど、この、多少現実面にムリがあろうがかつてのプラモデル少年達のあこがれを実現するーみたいな遊び心もまたガルパンが叶えたかった戦車ロマンの一つなのかも。そうでもないかも。
 かくいう私は戦車模型一度も造ったことないのが微妙にコンプレックスなんだけどなーまあそのうちねー。


 で。先に書いたけど、このヘッツァーちゃんは駆逐戦車である。
 砲塔がないので、細かく分類すると、通常言われる戦車とは別な区分となる。
 だけども三突ちゃんの分類である「突撃砲」でもない。「駆逐戦車」である。
 じゃあ突撃砲と駆逐戦車の違いは何かというと。当時のドイツ軍の偉い人たちがこんな会話をしてたらしい。


砲兵科「戦車いいなー。ウチにもくれよ。そもそも戦車って歩兵補助のための兵器だったんだから戦車科ばっかりに持って行かれても困るんだけど」
戦車科「ヤだよ。ただでさえ戦車の生産追いついてないのに。砲兵科は素直に砲を人力ででも引っ張ってろよ」
砲兵科「えー? そういうこという? じゃあ生産性あげるために砲塔造らずに車体に直接大砲のっければ、ほら。これ戦車じゃなくて大砲じゃん。歩兵とともに突っ込むから突撃砲と名付けよう」


 この突撃砲がすばらしく使い勝手が良かった。
 そこからしばらく。


戦車科「……突撃砲、調子いいよね。装甲厚くできるし対戦車砲のっける余裕あるし。ていうかさ、ウチがいちばん対戦車戦やんなきゃいけないからそれ、欲しいんだけど」
砲兵科「何言ってんだよ。砲なんだから砲兵科のもんだよ。悔しかったら砲塔のない戦車でも造れば? それでなくとも三突の工場爆撃されちゃって今後レアモノになる可能性あんのに」
戦車科「ひどいこと言うなあ……じゃあアレだ。三突工場が燃えた代用にチェコで製造が計画されてる無砲塔の新車輌。アレを対戦車用ってことにしてしまおう。そうだな。名前は駆逐戦車とかそのへんで。戦車戦車」
砲兵科「なんでそういうことするの?」


 という話で実質的な違いはないみたい?
 まあ突撃砲なら歩兵支援なんで榴弾とか撃つのに適した砲が、駆逐戦車なら対装甲用に砲身の長い砲がーとか傾向は分かれるだろうけど。



 余談が続いて性能面の話が後回しになってしまったのでざっくりまとめると。
 たいへん便利に使い回していた三突のメイン生産工場が爆撃を受けて大慌てしたドイツは、急ぎチェコの工場に生産を依頼する。しかし設備の問題でそう簡単に同じ車輌は造れない。ならばと、お蔵入りになった38t改修型を元に無砲塔車輌を製造しよう。という流れでもって急造されたのがヘッツァーたん。
 砲撃力も稼働率も良好で、しかも生産性も燃費もよろしい。困窮の兆しが見え隠れしていたドイツ軍には何もかもありがたい仕様でここぞとばかりに量産されたものの、急造品だけあって欠陥も少なくなかったらしい。
 一つは装甲が薄いこと。せめてもと傾斜装甲にしてとても愛らしい外見になったはいいものの、おかげで狭い。
 そして軽戦車だけあってエンジンに不足があり、見た目のコンパクトさの割には速度が出せなかった。ここに来てカメさんチームの別に果たされなくてもいいカメという面目が躍如された。
 あと、元々が軽戦車の車体に偉い人からの要求を満たすべくムリに砲を積んだもんだから、重量バランスがとれず静止状態だと右に大きく傾いてたらしい。なんてプリティー。
 ついでに、右から装填を行うよう設計されていた砲を急造設計のアヤでそのまんま搭載したあげく左側から行わなければならず、これも兵隊さんからは大不評だったそうで。
 38tからの一人多重兼任から解放された桃ちゃんはまだまだ受難の役目が続くようだけど。



 都合良くまとめるならば、為政者の都合を現場の工夫と努力とで補わなきゃなんない戦車である。
 これまで伏せていた廃校の危機という問題を仲間と共有し、同じ目線で戦うことを受け入れた会長が改めて搭乗するのに相応しい車輌、と言えるかも知れない。



B1bis お硬いだけじゃ生き残れない。

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 ガルパンではいまいち活躍の機会がないフランスの車輌。二次大戦最初期の戦車である。
 分類上では重戦車。こんなだけど。
 こんなだけど、とはいうものの、大洗の所有する戦車のなかではポルシェティーガーに次ぐ装甲厚を誇る(P虎が終戦間際に出てきたことを踏まえると、大戦初期にこんなモンを用意できていたというのはなかなかとんでもないことに思えるけど……そのくらい大洗の車輌の防御力がいまいちという話でもあるだろうか)。
 史実にて配備された二次大戦緒戦だとドイツ戦車では貫徹不能な重装甲を誇っていた。まあ緒戦のドイツ戦車ってどこでもこんな話があるけど。
 しかし、後世の視点から見ると、その重装甲思想が仇となりドイツの前に屈してしまった、という話になる。


 設計は先進的だった。
 二次大戦の極々初期から対戦車を視野に入れた長砲身を装備し、車体に据えた短砲身も限定的な旋回に限られたものの、車体そのものの旋回性能が優れていたため(なにせハンドルで操縦できる)照準は比較的容易。
 床下脱出ハッチや機械室との隔壁など搭乗員の安全にも配慮した設計も加えて、装甲厚のみならず防御面にも秀でていた。
 要するに、攻防ともにドイツ主力である三号戦車や四号戦車を上回る性能だった……にも関わらず、フランスはドイツの侵攻を阻むことはできなかった。
 その所以を一つ一つ追っていくと、いかにジャーマンタンクスの戦術思想と設計とがいかに優れていたかの証明ばかりになる感じ。

 一つは通信装備の差。ドイツは全車両に音声通話可能な設備実装とリッチなことをしてたけど、一方B1bisはモールス信号による通信が基本で実戦中にそんなことやってる暇なんぞなかったと察せられる。
 一つは搭乗員による作業効率の差。同時代、ドイツは三人乗りの砲塔を設計し、戦車長は指示に専念できるよう画期的な戦術をとっていた。けれどもB1bisの砲塔は一人乗りであって、砲手も装填手も射手も指揮も索敵もみんな一人でやらなきゃなんない。
 ……とかいうとどこぞの桃ちゃんと一緒だね。いばりんぼなガルパンキャラは過密な作業量を求められるという法則?
(まあ桃ちゃんは会長がサボってるからってのもあるけど!)

 もう一つは索敵効率の差。砲塔ののぞき穴の数が限られている上に、この砲塔にはハッチがなく、色んな戦車長がやってる上半身を出して周囲の監視ーという行為ができない。外の様子を子細に知りたければ後部の搭乗口から身を乗り出すという危険行為が必要となる。
 これに関していえば優劣の問題というよりかはそれを進んでやってのけたドイツ戦車長連中がちょっとクレイジーだったけの気もするけど。

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 欠陥となる不便さも女子高生がやるとカワイイ仕草になるんだからずるいよね(なにが。


 極めつけは運用思想の差でしょうか。
 ドイツは戦車の集中配備と運用を目的とした機甲師団をいち早く実現させることに成功したけれど、フランスは要塞の建設など国境の防衛に力を割いた結果、戦車は歩兵補助という思想から脱するのに遅れ、B1bisという運用次第ではドイツ戦車を圧倒できそうな車輌を歩兵部隊に分散的に配備することしかできず、結果として、一対多の状況を強いられ各個撃破されてったそうな。



 まあ、上述の格差は別にフランスが悪かったわけでもなく、各国どこも似たり寄ったりな境遇でみんなドイツの電撃戦にはびびらされたのだと察せられる。

 性能として優れた部分はあったものの、ドイツの戦車運用思想から大きく外れていたB1bisはフランス陥落から追加で生産されることはほぼなかったそうで、多少似通った境遇の38(t)と比べると結構な扱いの違いではある。
 そういえば生徒会チームも風紀委員チームもそれぞれ指導するべき立場な訳で、そこも似通う部分はある。それぞれの分岐になんとなく思いを馳せてみたくなるね。
 要するに、頑固(硬く)て不器用。そういう意味では風紀委員チームが搭乗するのに相応しい感じがする。するね。するよな。
 
 


三式中戦車(チヌ) 現実を知らない箱入り娘。

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 二次大戦末期の日本車輌
 あたまのひん曲がったトゲのようなアンテナのようなそれは機銃架。カワイイ。戦車道には無用だからと取っ払われてるんでしょうね。
 砲身根元下部の出っ張りは野戦砲を流用したんでただ余ってるだけの部分で特に意味はないらしい。カワイイ。
 八九式のしっぽとか、チハたんのハチマキとか、日本車輌にはカワイイポイントが多いことでありますな。
 アメリカさんが圧倒的工業力で大量生産しまくってるM4シャーマンに対抗すべく急造された日本陸軍最終兵器。ただし、生産時には送り届けるべき戦場ももはや遠く、本土決戦用に温存されたまま終戦を迎えることとなった。


 それにしても。
 ドイツ軍が「T34やべー。T34やべー」ソ連の傑作戦車にびびってるのと同じ頃。
 日本は戦車のM3スチュアートに泣かされてて
 連合軍がティーガーやべえ。まじやべえ。M4を束にしてぶっつけてもかなわねえ」と青ざめてるのと同じ頃。
 日本はそのM4の装甲を貫けるよう必死に戦車開発してたという話な訳だけど。
 なんだか侘しい。
 まあティーガーは同盟国の武器であって、連合国主力のM4のラインに合わせて戦車を新造するのは自然なことではあるけども。


 性能をざっくりいうと、攻撃力はM4シャーマンとそこそこ並べる。装甲は正直薄い。機動力も重量に比して出力が足りてるとはちょっと言い難い。くらいの性能に収まる感じでいいのかな。
 他、欠かせないステキ特徴として(ガルパンではまだ描写の機会がないけど)砲撃は縄を引っ張って行う。という点がある。
 M4の装甲を貫徹できる砲を求めた結果、野戦砲を流用するのが手っ取り早いと判断されそれを搭載したからそんな仕様だそうで。問題点としては照準を定める砲手はこの縄を引っ張れない。だから、撃発手という役目を誰かに負わせるか、その人員が確保できない場合は主に通信手が引っ張る予定だったらしい。
 要するに。
 戦車長が敵機の方向を指示し、砲手がそれに狙いを定めて、撃発手が合図に合わせて紐を引っ張って発射。と。
 うーん。チームワークを問われますね(控えめな表現。
 役割としては、戦車長兼通信手のねこにゃーが縄を引っ張る役目なんだろうか。


 ただの憶測だけど、TVシリーズにてももがーが、腕力が足りずむぎーってなってたあの描写は、この縄を引っ張る部分でも同じような描写をしたかったのではなかろうか。それがお蔵入りになった理由まではわかんないけど。
 であればこそ、劇場版の筋トレ描写に繋がるんじゃねーのかなー。どうなんかなー。


 そんで、なんでこの三式中戦車にネトゲチームが乗っかってるかを照らし合わせてみると。
 温存されてたわりに温存されてたほどの活躍ができなかった……とか(TVシリーズ11話)
 仮想戦力とのシミュレーションばかりで実戦となると……とか。なんだかアリクイさんチームに申し訳ない感じの推察ばかりになっちゃうな。




ポルシェティーガー 少女は泥にまみれて笑う。

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 二次大戦最中に設計されたドイツ車輌。の、俗称。
 ここでいうポルシェとはポルシェ博士のことであって、(私のような)クルマに詳しくない人間でも名前は知ってるかの高名な自動車メーカ-のポルシェのポルシェである。
 まあ今でも名の知れている自動車メーカー(というか重工業メーカー)はだいたい二次大戦に関与してるけど。当然と言えば当然か。

 かの高名なティーガーには競争開発による設計案が二種あった。いうなればティーガーの腹違いの兄弟というか、生き別れというか。
 それの競争に負けた側がこのポルシェティーガー。 
 選ばれなかった理由は明白で、そもそもまともに動かなかったのだ。

 ドイツは緒戦の勝利にて戦車運用の戦術的正しさこそ証明したものの、フランスでもイギリスでも敵車輌撃破に苦心した事実は無視できなかった。
 なので、それまで重視していた走攻守の調和した設計思想を一時的に放棄し、重火力・重装甲をコンセプトとした車輌の開発を急ぐこととなる。
 そこで問題になるのはやはり重量。
 単に足が遅くなるという話に留まらず、それだけ負荷がかかるモノを故障なく、スムーズに動かす必要がある。
 ……ならば、その負荷の大部分がかかる変速機を取っ払っちゃって電気モーターで動かしちゃえばいいんじゃね? というのがポルシェ博士のひらめきだった。

 しかし博士の発案は実らなかった。先進的に過ぎたのか、開発期間が足りなかったのか。
 大質量を動かすための大電流を生み出すべくがんばったエンジンは火を噴き、モーターは焼き切れた
 エリカが「この失敗兵器!!」と罵倒したのは彼女の口が悪いのではなく単なる事実なのだな。

 なので、本来であれば「幻の試作機」くらいに収まるはずの車輌だったのだけど、なぜだか採用試験をパスする前に車体が発注・製造されてたらしい(これの理由は博士が成功を確信してたからとか、ヒトラー総統のお気に入りだったからとか、それだけ実戦配備を急かされていたからとか色んな説を聞くね)
 ただでさえ物資に困窮する戦時中にそんな大量な鉄の塊をムダに寝かせるわけにもいかないんで、戦車とあらばとりあえず突撃砲に改造するドイツの例に漏れず、ポルシェ博士のファーストネームをとって「フェルディナント」と名を冠した重突撃砲として生まれ変わったそうな。

 余談を続けると、このフェルディナントは運用部隊からの評判がスゲー良かったらしい。
 指揮官からは「最高かつ最強の兵器」とまで評され、一方、相対したソ連兵は以降ドイツ側の突撃砲を全て「フェルディナント」と呼ぶようになったほどの衝撃だったとか。
 後に更なる改修を受けて「エレファント」と渾名されることとなるそうだけど……虎は生み出せなかったものの、象を生み出すこととなったこの博士はやっぱり天才だったんかなーという気になってくる。
 象を産みだしたに飽き足らず、ネズミ=「マウス」まで設計してるんだけどね。ポルシェ博士。


 とかで。なんでポルシェティーガーレオポンこと自動車部チームが搭乗してるかはもはやいわずもがなである。
 なんつったってスポーツカーで高名なポルシェの名を冠する戦車だし、これだけ整備に手間のかかる車輌もそうそうあるまい。
 それに加えて、あの宮崎駿監督がかつて連載していた「雑想ノート」の一篇である「泥だらけの虎」のオマージュも込められていると思う。
 昼も夜もなく、砲声の轟くただ中だろうと工具を手放すことなくかけずり回った整備兵のお話で、彼の随伴する車輌がポルシェティーガーなのだ。


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 ユーモラスながらも凄惨さの伝わる筆致。
 一方、これが自動車部となると、故障の度に、どこか嬉しげに、ほがらかに修理をするのだ。これはこれで、戦車道っぽくはある。