シャニマスの芹沢あさひさんのホーム画面対話全部の感想。
キャラクターへの愛をトリビアリズムで代替してしまうのはあんま良くないとしても、二次創作でワーイと遊びたいからには最低限習熟しておくのが望ましい。
あと単に、芹沢あさひという個性が事務所のなかでどんな関係を育んでいるのか知りたいし。
興味は愛着の第一歩ではありましょう。
何の話だっけ。
まあ要するに、おシャニさんが急に(急に)追加してきたホーム画面でのアイドル同士の対話全342パターンのうち芹沢あさひさんに絞って全部チェックしつつメモしつつ感想を述べてみる試みです。
- vs櫻木真乃
- vs風野灯織
- vs八宮めぐる
- vs月岡恋鐘
- vs田中摩美々
- vs白瀬咲耶
- vs三峰結華
- vs幽谷霧子
- vs小宮果穂
- vs園田智代子
- vs西城樹里
- vs杜野凛世
- vs有栖川夏葉
- vs大崎甘奈
- vs大崎甜花
- vs桑山千雪
- vs黛冬優子
- vs和泉愛依
- 等と。
vs櫻木真乃
「あさひちゃんっ、
あっちの方で飛行機がしっぽ作ってたよっ」
「なんすかそれ!
面白そうっすね!
見にいってくるっす!」
「真乃ちゃんの鳩
どうしてピーちゃん
っていうんすか?」
「そんなに大した理由はないの
雛のころに『ぴーぴー』って
鳴いてたからなんだ……っ」
飛行機と芹沢あさひというと【空と青とアイツ】芹沢あさひだけど、青い空と飛行機雲をみて、(あ、あさひちゃんだ)と真乃が連想してくれていたのなら嬉しい。なんとなく嬉しい。
ツバサや星という形でなにかと空のモチーフをまとう真乃とあさひとの共通点は空で結ばれており、個性は違えどアイドルという結びつきを感じさせてそこんとこもなんとも爽やかな対話である。
芹沢あさひ学的見地でいうと、尻尾という比喩から即「飛行機雲」と連想できてなさげなあたりを覚えておきたい。
それともほんとに特殊な飛行機雲だったんかしら。ホーム画面での対話が実装された5月29日は奇しくもブルーインパルスが都心を飛んだ日だ。
ピーちゃんを雛から育ててたのは初出の情報? 櫻木さんのコミュはあんま読み込めてないので恐る恐るなんだけど。
vs風野灯織
「あさひ、なんの本見てるの?」
「………………
……………………
…………………………」
「わたしのこと
占ってほしいっす!」
「ご、ごめん。占いが好きなだけで、占うのは……
おすすめのサイトは教えられるんだけど……」
わーいアイドル同士の対話実装だーと喜び確認しにきたPが直面するまさかのガン無視である(大事な注釈*声を掛けられたことに気が付いてないだけであって無視したわけではない)。
相手に合わせるのが不得意なあさひなので相性の悪い相手とはとことん相性が悪くなってしまうという一例でしょうか。灯織さんは心を強く持ってほしい。邪魔しちゃったかな……とか気落ちしそうだけどしないでほしい。
そもそも。灯織も普段ならば本を熟読している相手に話しかけるという野暮は犯さないと思うねん。あさひが珍しいくらい静かで、(あさひが静かになるくらい熱中しているのは何に対してなんだろう)と、あさひに対する興味でもって何を読んでるのか聞いたんだと思うんですよ。
あ。その結果だと思うとかえって胸が痛い!
「占ってほしいっす!」にいまいち報いきれなかった点も後に気に病みそうな……ん? でも「占いの館」ってやってたよね灯織。
避けた? それとも先の体験で(占うのは……私には荷が重いのかな……)てなったとか?
いや灯織さんは悪くない心を強く持ってほしい。
vs八宮めぐる
「あさひ、この知恵の輪解ける?
難易度が一番高くて、誰にも解けなかったの!」
「ふーん? 貸してほしいっす
…………
……………………」
「『八宮めぐる』と『芹沢あさひ』」
って似てるっす!
あははっ!」
「……? あっ、本当だ!
漢字とひらがなの組みあわせ!
おそろいだねー!」
テキストとして認識している私らなら直ぐわかるけど、音声オンリーなのに即気付けるめぐるの頭の回転力。
あさひと知恵の輪はPとのコミュでも描写されている。「……できた」の音声は必聴。
ところで芹沢あさひのこのコミュのぼそっ……て感じの「……できた」がすごい好き。 pic.twitter.com/il8LLrae6i
— ぐしゃろごす。/エアコミケ本委託中よ。 (@tehihi) 2020年4月6日
そうしたパズルにやたら強いということは事務所内でも周知されているのか、それともめぐる独自に「あさひはこういうの好きだよね」と解釈したのかどっちかしら。
相当な難度なのか、早速自分の世界に没頭してしまうあさひだけど、めぐるちゃんならそんなあさひをニコニコと眺めててくれそうで胃に優しい。
vs月岡恋鐘
「びゅ~~~ん
ってかんじ~?」
「違うっすよ!
ひゅ~~~って感じっす!」
「恋鐘ちゃんの料理
美味しいって聞いたっす!
食べたいっす!」
「うん~!
今度寮に来んね~?
なんでもご馳走するばい!」
すれ違い芸の目立つ会話集のなかで数少なく共鳴できている側の例。
ただし、びゅ~~~ん。ひゅ~~~。と、余人には何の話か皆目見当がつかないけども。恋鐘さんがあさひについて行けるくらい感覚派の人間てことだろうか。
芹沢あさひは美味しいものには人並みに興味がある。
これは割と大事な知見である。あさひは給食のメニューのほとんどを持ち帰ったりしてて、単に「今食べたい気分じゃないから食べなかった」というだけなのか、それとも食欲自体が薄いのかどっちだろうなと判断の付かない部分があったので。
まあカレーに執着する描写とかあったけどさ。
だってカレーはカレーじゃん?
vs田中摩美々
「私、あれ好きなんだー
『すっす!』ってやつー」
「わたし、そんなこと
言わないっすよ?」
「虫捕まえたっす!
摩美々ちゃんのトカゲ
食べるっすかね、これ」
「そういうのは
受け付けてないんでー」
いや、言ってた。『すっす』、言ってたと思うけど……どこでだっけ。二次創作書いてて『すっす』って台詞を書きかけて……アリなんかな。すっす。て迷って、迷ったなりに保留してて……後に公式でも言ってるのを見掛けて安心したみたいなことが個人的にあって……あった気がするんだけど明確にどこで言ってたか言えなくて……言ってたような……。
まあいいや。
すっす。割と似てるので必聴である。
「そういうのは受け付けてないんでー」は冷たくあしらわれているようにもみえるけども大事なことだ。ペットは愛玩動物とも書くけど、オモチャでなくて生き物である。
あとあさひに限って言えば、食べるかもーっつって一度受け取ると「これは食べるっすかね。これはどうっすかね」て際限なく持ち込まれそげなところがあるし……虫を。
このあたりのあしらいっぷりは、チームまりあの経験が生きているのかしら。
スノーマジックイベにて、何かと裏側から気を回しがちな摩美々が、真正面からあさひに説教をしている冬優子と、それを素直に聞き入れるあさひとを見て何か思うところありげな姿が描写されていたりしました。
世話焼きな気質があれどもそれを表に出したがらない摩美々vs危なっかしさから周囲の気を揉ませがちなあさひ。
屈指の好カードと申せましょう。
vs白瀬咲耶
「やあ、あさひ
その美しい瞳は、何を映しているんだい?」
「咲耶さんっすね!」
「咲耶さんくらい
背が高いと
色々見えるんすか?」
「試してみるかい?
ほら、私の腕にどうぞ、お嬢さん?」
通じてるけど通じてない!
咲耶さんっすね! という言い切りが大変お見事なすれ違い芸。
傑作に数えたい対話の一つやね。
咲耶の内面でなく完全にみたまんまの「背が高い」という特徴から入るのもあさひっぽい。
私の腕にどうぞ? は抱き上げたのだろうけど「こっちの方がもっと高いっす!」とかで肩車にまで発展しててほしい。
153cmと175cm。あさひはやや平均(よりちょい下回ってる)
あ。そういや咲耶ちゃん、じゃなくて咲耶さん、なのね。
今んとこ確認できてる「さん」付けは、他に「夏葉さん」だけか。
あと一応プロデューサーさんも。
成人してたら「さん」なのかなとか思ったけど、咲耶はそもそも18才で、他18才もちゃん付けだし、雰囲気で呼び分けてそげ?
vs三峰結華
「あさたんのパワフルさを見習うべきか……!」
「冬優子ちゃんに
怒られるっすよ?」
「あさたん……
あさたんたん……
あさたんたんたん……」
「おー
順調に増えてってるね……!」
冬優子ちゃんに怒られるっすよ?
は、結構なビーンボールな気がする。冬優子にとって。
「あー。そっかぁ。これ以上ふゆゆの心労を増やすのも可哀想だしね……」とか察知してるよなしてなさげなこと言ってそう。
さらりと言ってはいるけど、自分がなぜ冬優子の怒りを(頻繁に)かっているか。その由縁をしっかり理解しているところに尊みを感じるよな。よな。
理解はしているけどもそれはそれとしてパワフルな生き様をとめられないのである。むしろ「冬優子ちゃんが本気で怒っているときは本当にダメなときっす」的な台詞から見るに、あさひとしては冬優子は安全弁の一種として信頼も寄せているのだろう。
歯止めにはならなさそうである。
冬優子の受難は続く。
最終的にあさたんたんたんたんたんたんたんたんたんくらいまでいきそう。もっとか?
あさひ当人のコミュの言及じゃないけど、三峰担当におかれては彼女のニックネーム集めが一気に捗って喜ばしかったりするのかしら。
vs幽谷霧子
「もう……
いいかい……♩」
「まだっすまだっすー!
あと100秒は欲しいっす!」
「あ痛っ!」
「わ……傷……!
ふー……
ふー……」
霧子さん100秒付き合うよな。絶対。
あと見付けるのむちゃくちゃ上手そう。
はしゃぎ過ぎて痛い目にあっている芹沢あさひも少し貴重な気がする。なんだかんだで、持ち前の反射神経と観察力とでうまいこと収めるのが彼女だし、まあこういうこともあるんだなと。
vs小宮果穂
「あさひさーん! 聞いてください!
向こうに面白いものを見付けたんですー!」
「何があったの!?
連れてって! 果穂ちゃん!」
「とぉーう!」
「わぁっ! ヒーローキックですね!
あたしも…っ
――とうっ!」
マブシイ。
P含め、他の年長者にはあさひの向こう見ずな行動力は悩みの種だったりもするけど、小学生ぢからに溢れた果穂ならばより純粋な遊び友達として同じベクトルを向けるのだ。
Pにはそれが出来ない。
いっそしてはならないのだと表明されたのが【空と青とアイツ】のコミュであるようにも感じるのだけど。
あさひの「とぉーう!」はモーニングコミュにも登場する。
果穂は果穂当人の視座と価値観でもって「わたしも!」と同調できたけれど、Pはそれが何なのか理解しきれないままコミュが終わる。
あさひとPとの立場の違いは折に触れて描かれている。
例えば感謝祭コミュのエンディング。一緒に踊ろうとあさひに誘われるも、当然ながらついて行けず「やっぱり下手っすね」と烙印を捺される。「一緒に踊るのはやっぱり……」と言葉を濁すけれども、それでも、或いはだからこそずっと見ていてほしいとあさひは語る。
必ずしも悲しいことではない。それは間違いないけれど、眩しくも少々ほろ苦い。
あと色んなところで言及されてるけど、あさひが果穂ちゃんには敬語を使わないのも。あさひは意識して敬語(?)を用いているのであって、それは傍若無人にみえるあさひも社会に順応すべく試みている証左であって……彼女なりに、軋轢と戦ってきた痕跡でもある。のだろう。
こう。マブシイとね。なんかね。それだけ涙腺にね……。
vs園田智代子
「あさひちゃん、見て見て……!
これね、この間見付けた写真なんだけど――」
「わ、すごい! 家が逆向きに建ってるっす!
どうなってるんだろ、これ!」
「チョコレート!
くださいっす!
甘いの!」
「おっけー!
――はい、どうぞ!
とっておきだよ~?」
急にギブミーチョコレートされてサッと取り出せるあたりからみえる園田智代子の意識の高さ。ええ。もちろん意識の高さによるものですとも。
わざわざきっちり「甘いの!」て指定するあたり、ゲーム性を重視して苦いのも用意したバレンタインがトラウマってるんでしょうか。
まあ最近はカカオマシマシなチョコも多いし。身体感覚の鋭敏なあさひさんですから、苦い辛い痛いあたりの不快感情は人一倍苦手そげよねと思ってるんですけどどうでしょう。
逆向きの家は、どこがなんで始めたのかわかんないけど色んな国でみられる展示物のことだろうか。家本体だけでなく家具や調度も、内装まで全て逆さまでインスタ映えするのよね。
急に何の話だろうと思ったけど、SNSも旺盛に利用する智代子さんだから、面白いものを見付けたんであさひにも教えてあげたってことでいいよな。
あさひの探究心はフィジカルだけでなくメンタルでも旺盛に働くので、そこんとこもしっかり把握されてる(してもらえている)感じが微笑ましい。
vs西城樹里
「あさひもなんか飲むかー?
ジュース、好きなの
選んでいいぞ~」
「ありがとっす~!
じゃあ~
これもらうっす!」
「樹里ちゃんって
弟いるっすか?」
「え?
や、弟はいねーけど……」
え。急に何。
弟はいねーけど、兄ならいるんだよね樹里ちゃん。
え、でも、急に何。樹里ちゃん方面になにかそういうコミュでもあんの?
樹里ちゃんは優しいな。
→愛依ちゃんも優しい。
→愛依ちゃんには弟と妹がいる(ので、世話に馴れているので優しい)。
→樹里ちゃんにもいたりしないかな。
という連想ってことでいいん……? でもそれなら「弟とか妹いるっすか?」だったりしない?
あさひと兄弟って話だと、Pとのモーニングコミュで「実は兄弟がいるんだ」という受け答えがあったりするけど、それと似た感じで樹里ちゃんと似たような人を見掛けたとか……?
いまいちコレだと確定は出来なさげだけど、まあ前者かな……。
面倒見いいしな樹里ちゃん。優しいし。
芹沢あさひの中にはちゃんと理論も理屈もあるんだけど、それを出力するのが少々苦手だから、時として突拍子もなく映る。
それをまざまざと追体験させてくれるて点では面白いコミュだ。
ところで樹里ちゃん年下によく奢るよね。
体育会系的な包容力でしょうか。
vs杜野凛世
「紙飛行機は……
重心の位置が……
肝要です……」
「わっ!
見たことない形っすよ!
あはは、すごいっす~!」
「凛世ちゃんみたいなひとを
『大和撫子』って
いうんすよね」
「ふふ……
あさひさんは……
ガーベラのよう……」
花の話題が出ると花言葉をぐぐらずには居られないタチのオタクなんですが、ガーベラの花言葉は「希望」と「前進」で、これがオレンジになると「神秘」と「冒険心」になる。時としてつかみ所のなさをみせるあさひに「神秘」を添える凛世さんの才媛っぷりがステキ。
力強い多年花で、色幅がとにかく豊富てのもそれっぽいかも。
そもそも花で例えての返礼は、大和撫子という最上級の賛辞からナデシコの部分だけを受け取る謙遜でもあるのだろう。惚れ惚れする如才なさである。
凛世は他の娘とも折り紙を用いた対話をしてるけど、一片紙片さえあれば相手に合わせて様々な形を用意できる折り紙は、凛世のもてなしの心を存分に発揮できるアイテムなのかも。それでまた「あさひには紙飛行機」というチョイスが清々しくてイイ。
ホームステイとかで異文化交流にいくときは折り紙覚えとくのがマジ鉄板みたいに聞いたことあんなー。まあ脱線はここまでにしといて。
vs有栖川夏葉
「夏葉さんって
どのくらい重いもの
持てるっすか?」
「うふふ、そうね……
あさひのことくらいなら
軽々抱えられるかしらね?」
「私、『破天荒』って言葉が
好きなのよ」
「へえ、そうなんすか」
そうなんすか。
じゃなーい。褒められてるぞー。あさひー気付けー。お前のことだぞー。お前ー。人によっては厄介としか見なさないキミのその性格を丸ごと認めて好意的に解釈してくれてるんだぞー。最上級の褒め言葉もらってるんだぞー。匂わせや言下とかそのあたりが苦手にしてもだなー。
抱えてもらったんだろうなーこの後。
放課後の面々は揃いも揃ってさすが対芹沢が達者。
あさひと付き合うには何より体力が必要なのだな。
それに……言うのも野暮だけど、放課後クライマックスは小宮果穂を中心として集い、そして小宮果穂の目標は『世界平和』なのだ。可能な限り多くの人々を笑顔にするべくを動機としてアイドル活動を行う彼女らは純粋であり、ある意味では限りなく純真である芹沢あさひと近しくて当然なのだろう。きっと。
vs大崎甘奈
「あさひちゃん!
裾が出てるかも」
「お、ホントだ
よく気付けるっすね!」
「双子だと
どんな面白いことあるっすか?」
「甜花ちゃんと
姉妹っていうだけで
最高だよ☆」
「教えてくれてありがとう!」じゃなくて「よく気付けるっすね!」というあたりの芹沢仕草。
たぶん教えてもらってもそれが良くない状態と認識してなくて直さないんじゃあるまいか。
いやそれはちょっと穿ち過ぎか。
「教えてくれてありがとう」よりも先に、甘奈ちゅわんのお洒落力を賛美するあたりにあさひ当人が気付かず備えた美徳がみえる。
あさひは面白いことを生き甲斐として生きているからこそ、それを生み出せる面白い人、すごい人、そうした人々の具備する優れた技能への賛美と敬愛とも強いのだな。
そういえば、双子ではあるけど強く個性が分かれてるのもあってか大崎姉妹が双子だとシナリオ上で強調されることってあんまない気がするね。それ以上に姉と妹というか。
vs大崎甜花
「せ、芹沢さん……
何、見てるの?」
「今は何も見てないっすよ?」
「わ!
すっごいもこもこ!
気持ちいい!」
「で、デビ太郎……
返して~……」
んん! 今までみてきたなかでまちがいなくいちばんキャラ相性で不利背負ってるね甜花ちゃん! 2:8くらいは行ってない!?
そーいや、ツムなんとか系かキャンディークラッシュサーなんとか系かわかんないけど、それ系っぽいパズルであさひが全一とった四コマがあったよね。
つまりゲームだ。
ゲームで勝ってマウント取りに行くんだ甜花ちゃん。
vs桑山千雪
「見て見て
てんとう虫……!」
「おおー!
なかなか大きいっす!」
「お酒ってどんな味なんすか?
酔うってどんな感覚なんすか?」
「えっとね……
やっほー♩♩♩
って感じ……!」
まず大きさに目が行くあたり、普段から昆虫採集を趣味にしてる人間っぽいリアリティがあるように感じる。そうでもない?
普段から対児童スキルを発揮してる千雪さんなのであさひ相手にも全く後手に回るところがない安心感。「やっほー♩♩♩」て表現もあさひ相手に極めて的確と申せましょう。
ところで、なんかこう……個人的な願望なんだけどさ。一定の年齢まで行ってて、かつ雰囲気がオトナっぽければ「さん付け」しているらしいあさひだけれども、千雪さんは「千雪ちゃん」って呼んで欲し味、ないです?
ご当人も「だって、オトナじゃないもの」的な宣言をされてたと思うけど、どこか童心のあるのが千雪さんであって、あさひはそこを見抜いたりなんだりで「千雪ちゃん」って呼んでほしいみたいな……な? どう? どうよ?
無念ながらおシャニさんの全テキストに習熟しているわけではないので既に「千雪さん」て呼んでたら泣く泣く諦めるけども。
そんな感じでさー。
自分よりも背が高くて、というか小学生としてみると規格外な発育で当人も「年上にみられるんですよね」て発言してる果穂ちゃ相手にも最初からタメで話しかけてて、ごく自然に年下であると察知しててほしかったりさ……なんかそういう……な?
vs黛冬優子
「あさひ、何してんの?」
「蝶、追跡してるんす」
「冬優子ちゃんって
冬だといつもより
優しくなるんすか?」
「何くだらないこと
言ってんのよ
ふゆは年中優しいわよ」
テキストの抜き出しじゃ絶対伝わらない「あーさーひー?」の声音。
冬優子会話の話を少しすると、愛依ちゃに話しかけるときの「めーいー?」声音の甘さと好対照スな。猫かぶりに神経を使っている彼女が事務所のなかで数少ない甘えられる相手が愛依ちゃんなのだなと再確認させられてだいぶニヤニヤできます。そういう見地だと、「あーさーひー?」も気を遣っていないという意味では安息地なのでありましょう。
ところで、蝶々の飛行モデルって物理的数式で表現しようとすると流体力学だの何だのかんだのがぐちゃぐちゃに絡まりあってスゴいややこしいみたいな話を聞いた気がする。
そういう、千変万化に形を変えるものに夢中になるあたりいかにも芹沢っぽいけどもだいぶ聞きかじりの話なんで見当違いなことを言っている可能性もある。
バタフライエフェクトあたりと混ざってる気もするカオス理論。
「冬だと『いつもより』優しくなる」ということはつまり、『いつも』も優しいということであって、あさひ的には冬優子ちゃんは優しいと感じてもいるのでしょう。
Pからの説教を通じて、本当に大事なことの為には我慢も必要であると学んだあさひはそれだけ他者の説教に耳を傾ける余地も生まれた。だから冬優子が怒ることには大切なこともあると、自分のために怒ってくれてたりもするのだろうと体得してるのだろう。かな。
「ふゆは年中優しいわよ」と、あさひが伝えたいのも要するにそういうことなのだろうけど、このすれ違いが微笑ましい。
vs和泉愛依
「ほらほら~!
待て待て~!」
「あはは!
捕まえてみるっすー!」
「愛依ちゃん! これ今日の習字で
書いたっす!」
「おぉ~!
上手くなってるじゃ~ん♩」
い
つ
も
の。
実家のような安心感てこのことスかね。
習字のお話も印象的。
【和泉流・書道心得】のコミュから引き継いだお話で。
恐らくは学校の宿題なのだろう書き初めを「まあ、こんなもんかな」と珍しく熱意の欠片も感じられない様子で片付けたあさひに、これまた珍しく愛依ちゃんが「あさひちゃん。これで本当にイイと思ってる感じ?」と(そこに正座)みたいなノリで指導を行ったーというコミュ。
いかにも興味の向かないモノへは余計なエネルギーを消費させられそげなあさひが、その指導によって感化され興味を持続させているのだ。
書道に、というよりも、半紙に向かう愛依ちゃんの居姿のかっこよさに惚れて書道に興味を持つあさひだったけど。それは我道邁進っぷり著しいあさひでも、他者の熱意に感化される感受性を持ち合わせているということでもあり。未だに続く熱意は、愛依ちゃんみたいにかっこよくなりたいというリスペクトもあるのだろう。
等と。
面白く興味深く出歯亀もとい見守って参りましたが。
自己の世界に浸りがちなあさひだから、他者とどのように対話するか、或いは他者からどのように対話を試みられるかには他の娘にはない興味と疑問と回答と発見と、あとスリリングさが御座いましたわね。
女子同士の花園でキャッキャウフフ中心ななかに投げ込まれる塩対応は正直どうしても痛快。わんぱくでもいい。元気に育ってほしい。
ノクチル分が追加されればまたパターンがx4されるし。
同じ感じで第二弾とか、複数人の掛け合いとかもよろしくねおシャニ様!
樋口円香さんのモーニングコミュ全寸評の前半戦。
樋口円香さんのpSSRが追加されまして。
そうか。SSRか。SSRか。SSRにはな。コミュがな。それとTureEndがな。TureEndがな。あるんだよな。TureEndが。
等と呟きながらガチャを回していたら、殺して裏庭に埋めたはずのおれが虚ろな目でいつのまにか隣に立ってて「まわすなら……限定だけにしとけ……」と呟いてきたので、手持ちの石を半分ほど溶かしたあたりでやめといたんです。
樋口さんは出てきてくれませんでした。
キャラクターの理解とはその過程そのものが娯楽の一種でしょう。加えて、一度頭に知識を入れたらば、入れる前にはもう戻れない。pSSRの樋口さんを知らない今だからこそ書ける文章もあるわけよねと、この機会を活かしてモーニングコミュ全般に対するメモ書き的寸評を書いていきます。
それでなくとも彼女のコミュは「狂犬のようだ」「初代アイマスの正解のわからなさを思い起こさせる」「これでなんでパフェなんだよw」と評されがちで、それら意見の大半には首肯するところだけども、それだからこその寸評でもあります。
以下、適当にどうぞ。
Morning 1
円香、おはよう
今日はいい天気だなあ
「はい」
か、会話が続かない……。
・午後は雨らしいけど
「はい。
知っています」
(よし、楽しく話せたな)
・朝食は食べた?
「……つまらない質問。
そこからどうやって会話を広げるのか、逆に見ものですね」
(まあ、普通に話せたかな)
・今日は何時に起きた?
「話しかけないでください
無駄な会話にエネルギーを使いたくないので」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
樋口円香とのコミュの基本的な対応が早速表出しているコミュ。
あらためて読み返すとやっぱすごいっスね。
「はい。はい。知っています」が全内容かつ即終了な会話がパーフェクトになるあたり面食らってしまうけれど、その内実はバッドコミュである「無駄な会話にエネルギーを使いたくないので」に注目すればひもとける(気がする)。
全く文字通りに受け取って「今は会話をしたい気分じゃない」と解釈すればいいのだ。
バッド・グッド・パーフェクトの順はそれぞれ話題が広がりそうな順番である。
「そこからどうやって会話を広げるのか」は逆に、会話が広がりそうにないから安堵してのグッド判定であり、「はい知ってます」も即終了だからこそパーフェクトなのだ。
加えて、今日は何時に起きた? は一言で片付けるのが困難であることに加え、彼女のプライベートにも通じそうな話題ともとれる。それは樋口円香にとって二重の逆鱗である。
(会話が続かない……)と感じた時点で、会話を続けるのがイヤなんだなと察知してやり、短く切り上げる。それも相手を気遣う態度ではある。
個人的に、樋口円香は朝に弱いんじゃないか疑惑を持ってるのだけど、そうだとするなら、尚のこと本調子ではない相手をムリに付き合わせるべきではない。そっとしておいてやるべきところはそっとしておくべき。
その点で、即終了した会話のパーフェクト判定は気遣いの結果であり確かにパーフェクトなのだ。
そもそも可能な限りPと会話したくないだけ疑惑も強いけども。
Morning 2
円香、おはよう
「おはようございます。
私のことは構わず、どうぞ仕事に集中してください」
(よーし、それなら仕事の話を……)
・ユニットについて
「……みんなにも関わることですか?
従うかどうかは聞いてから考えますが、とりあえず、話してください」
(よし、楽しく話せたな)
・仕事の資料について
「はい、わかりました
みておきます」
(まぁ、普通に話せたかな)
・レッスンについて
「あなたに話せることがあるんですか?
余計なアドバイスなら結構です」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
むしろ「構うな。仕事でもしてろ(意訳)」に対し(よし。仕事の話なら円香に構えるだろう(意訳))という態度にでるPのタフネスに興味を引かれるところだけども。
対話を短く切り上げられる「みておきます(だから話しかけるな)」でグッド。領域に立ち入ろうとしてきたPを手厳しく牽制する「あなたに話せることがあるんですか?」でバッドと、このあたりはいつも通りだが、例外的に「みんなにも関わること」には興味を向けざるを得ない円香がみてとれる。
会話を短く切り上げられるコミュでパーフェクトになる彼女が積極性をみせるほどに、彼女の中心にあるのは幼なじみである彼女らなのだ。これは記憶しておく必要がある。
Morning 3
ちょっとコンビニに行ってくるよ
円香の欲しい物とかあったらついでに買――
「無いです」
(即答だ……)
・飲み物とか
「あるので大丈夫です
お構いなく」
(よし、楽しく話せたな)
・思いついたら連絡して
「しません。
貸しを作りたくないので」
(まぁ、普通に話せたかな)
・よかったら一緒に
「は?
欲しいものは無いと言っているのに、なんのためですか?」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
食い気味の「無いです」が印象的。コレは比較的わかりやすいですね。いいから構うな型コミュ。丁度ウザさがパフェから順にグラデーションになってます。
よかったら一緒にに対する「なんのためですか?」は警戒心も露わで、彼女が事務所に来た理由である「監視のため」を改めて思い起こさせます。
ところでRのサポートコミュとか、コンビニ絡みのイベントが散見されますな。活動範囲の狭い娘なんじゃろか。そういや、部活動をやってないらしい浅倉透よりも更に早く帰宅して(浅倉透の部屋にいたり)するし。
Morning 4
「これ」
……宅配便?
「他に誰もいなかったので、私が受け取っておきました」
そうだったのか
・助かったよ
「……こういう時は対応してもいいんですか?
勝手に受け取っていいものか、判断できないことに後で気付きまして」
(よし、楽しく話せたな)
・ありがとう
「いえ。
それでは」
(まぁ、普通に話せたかな)
・……中身は見た?
「……私がそこまで非常識だと思いますか
それとも、見られたらまずいものでした?」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
簡素! グッドなんか「これ。いえ。それでは」で済んじゃうぜ!
バッドはともかく、グットとパフェとに差があるのだかないのだか。
敢えて差を探すならば、当人の言った「勝手に受け取ってよかったのか」という悩みは事実で、不安があったのだろう。それに対しての「ありがとう」はただの社交辞令とも解釈出来るけれど、「助かったよ」には受け取ってくれたことの謝意として具体性がある。それによって不安が払拭されてこその(少しほっとした)くらいのパフェ判定なのだろう。かな?
基本的に真面目なのだな樋口円香さんは。
もしくは、迷惑を掛けるという形で借りを作りたくないのか。
結局中身はなんだったん? オナホとか?
Morning 5
「……窓を開けますね」
ああ、どうかしたか?
「空気がこもっているので。換気のために」
そうか、気付かなかった
ありがとう
・いい風だな
「はい。
……気持ちいい」
(よし、楽しく話せたな)
・肌寒いかな
「そうですか?
私はちょうどいいです」
(まぁ、普通に話せたかな)
・外がうるさいな
「空気を入れ換えている間くらい我慢できないんですか
それに、うるさいというなら、
あなたの声の方がよほど耳障りです」(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
個人的イチオシのコミュ。なにせ素直。樋口円香がめずらしく素直。
そんで少し不平を言ったら……そこまで言わなくても……という勢いで噛みつかれるのもイイ。イイですね。イイよな。な?
風通しの良さを好ましく思ったり、自分の過ごしやすい環境に執着したり、あとそもそも迂闊に触ったら強烈に威嚇してきたりなど諸々樋口円香さんはなんか猫っぽいところがあるように感じる。
このコミュだけでの判断は性急だろうけど、樋口円香は自分の好きなものに相応に執着するタチなのかもしれない。そもそも事務所に来たのも浅倉透の様子を見に来たからだし。
ならば彼女との接し方も、彼女の好きなものを無理なく尊重してあげられればいいのだろうけれど……そもそもその警戒心の強さで、樋口円香自身が自分の好きなものを迂闊に晒さないあたりが難儀なところ。
――ここから親愛度上昇――
Morning 6
「……。
今日の事務所、……いい香りがします」
言われてみると確かに……。
「…………」
・花瓶の花かな
「あ、新しい花……。
ちゃんと世話をしている人がいるんですね……」
(よし、楽しく話せたな)
・コーヒーかな
「……それはいつもですよね。あなたのせいで
私が言っているのは違います」
(まぁ、普通に話せたかな)
・柔軟剤かな
「え、あなたのシャツの……?
はぁ……言うんじゃなかった……」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
環境の変化に敏感なところも猫っぽいよねとか。
柔軟剤の香りというとフローラルなものが多くて、それが故のすれ違いという芸の細かさがいい塩梅のコミュである。
このパフェは少々特殊で、Pと樋口円香の関係というよりも「ちゃんと花の世話をしている誰か」への興味による好感度上昇と推察できる。事務所そのものへの興味と言ってもいい。それはひいては、アイドルという仕事に対する興味ということだろう。
誰でしょうね花の世話してるひと。もちろん(起きてさえいれば)手間暇惜しまず事務所の世話を焼くはづきさんもだろうけど、これまでのテキストからみると順当なのは幽谷さんで、sSSRの花咲耶あたりが印象的だ。だいたいトゲトゲしている樋口円香がああした控えめ美少女の前に連れ出されるとどんな対応や反応になるのかなかなか興味深いところではあるがそれは今後のテキスト追加を待つとして。
風が気持ちいいといってみたり、花の世話に心を砕いたり、円香さんは存外ナチュラリストだったりするんかしら。小動物(小糸)にも優しいし。むしろ喋らなかったりそこにいるだけだったりのコミュニケーションの不要なものへの心の寄せ方にも感じるけども(独自研究の恐れ。
あと、「コーヒーかな」「それとは違います」という、Pに理解されなかったという点でグッドになるあたりのややこしさにも注目しときたい。
Morning 7
「今日は朝から出かけるって言ってませんでしたっけ」
ああ、そうだ
そろそろ出ないと――
「あの時計、止まっていますよ」
えっ!
・ありがとう!
「……はいはい。
せいぜい頑張って、コメツキバッタみたいに謝ってきてください」
(よし、楽しく話せたな)
・まずい!
「やっぱり気付いてなかったんですね。
だとしても、時間間隔が無さすぎじゃないですか」
(まぁ、普通に話せたかな)
・う、嘘だろ!
「大声、出さないでください
……教えなければよかった」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
ここまでの寸評全部ムダでやっぱ樋口円香はPが嫌いなだけなんじゃねえかなーとか改めて思わせるコミュ。
大声が嫌いなあたりも猫っぽいよねとか思いますが別にこの企画は樋口円香の猫っぽいところを探していくものではありません。
とはいえこのコミュの場合、選択肢というよりも、そもそもPの仕事(スケジュール)に気をかけてくれる様子が関係の進展を思わせるなと。やっぱり「教えなければよかった」とも呟いているわけですが。
そうしてみれば「ありがとう!」に対する「はいはい」も、素直に(素直に?)お礼を受け取っているとも解釈できますね。
Morning 8
どうした? なんだか退屈そうだな
「……スマホの充電が切れたので」
ああ、それならコンセントを使えばいいよ。
充電コードは?
「……あったらとっくにしています」
・貸してあげるよ
「いえ、あなたに貸しは作りたくないので……
………………少しだけ借ります」
(よし、楽しく話せたな)
・無くしたのか?
「家に忘れただけだと思います。
あ、もしかして透の家……? それかレッスン室とか……」
(まぁ、普通に話せたかな)
・忘れ物とは珍しいな
「別にいいでしょ
ほっといてください」
(うっ……しまった。別のことを言えば良かったな……)
・寸評。
透? 透て?
普段は「浅倉」呼びなのに、独白だと「透」なの?
つまり一時期までは「透」と呼んでたのに、どこかを境にして意識して「浅倉」に変えたってことで、独白だとまだその癖が出てくるってことなの?
そういえばて思って四コマ振り返ってみたら、浅倉透は小糸は小糸ちゃんて呼んでるし、他サポートコミュでも雛菜は雛菜で名前呼びなのが確認できるね? じゃあ浅倉透が名字呼びなのは樋口にだけなのね?
なんででしょうね。何かを境に樋口円香が名字呼びに変えたことで浅倉透もそれに付き合って変えたとか?
だとしたらなんで変えたんだろうなあ……まあ……妄想は色々広がるけど……今回はそういう話じゃないんで……。
さらりと「透の家とか?」つってるけど、そんなに入り浸ってるのかな。そういえば四コマでもサポコミュでも普通に浅倉透の部屋に先に居て「おかえり」っつってるし。おみやげにメロンとかいう高級なもの持たされてるあたり、樋口円香のご両親は共働きかもしくは片親で、お隣の浅倉さんちに子守を頼んでてそのよしみがまだ続いてるとか……? んん。気になるけど現段階だとどう考えても穿ちすぎになるよね……それに今回はそういう話じゃないんで……。
あんだけ「借りは作りたくない」と公言してきたのに、ついに折れたのはそんだけスマホに執着のある現代娘だからなのか、長い三点リーダーの後に(いいかげんこんなことで張り合っても仕方ないか……)と関係が進んだことを象徴しているのか。
スマホへの執着は、或いは、浅倉透(ら)との連絡手段が(一時的にではあれ)なくなってしまうと気を揉んでるのかなーとも思えるんだけどどうでしょうね。
ついでに、忘れ物とは珍しいな「ほっといてください」という弱みの見せたがらなさも覚えておきたい。
さて。前半は近からず遠からず。
どこぞの文字書き趣味が初めて官能小説短編集を書いた記録。
という名のあとがき。
たぶん世界中でおれにしか興味のない話題だと思うけど、「webにあげるわ」と約束をしておりましたので。
何の同人誌のあとがきかというと、ココには成人指定なモノは載っけてはならないそうなので言明はしませんが、もしも万が一興味が向かれた方がいらしたら「宵待月黒猫塔。 メロンブックス」とかで検索してみるといいかも知れません。
あとがきというかネタばらしというか。
性的交渉をともなうお話を書いたことがこれまでなかった……というわけでもないんだけど。文字書き趣味に費やしてきた半生て期間に比べると相当少ないのはたぶん事実で。相応の回数になってきた同人誌作りでも、ばっちり十八禁と銘打った本を出したのはまちがいなくこれが初のことでした。
要するに私の初めてなわけです。
なので色々とメモしておきたい的な意図のあとがきです。
ネタばらし的な意味合いも多分に含まれますので読後感を大切にしてくださるかたは読み飛ばしどーん推奨。
・動機。
私の文章はいちいちクドい。
世の娯楽のほとんどは、ユーザーの負担を軽減する方向に動いてってる。故に小説もまた可能な限り削ぎ落とし彫琢された文章にすべきだろうとの自覚はあれども、うわーいと脳とキーボードを直結させるのが楽しくて文字を書いてるんだから、そこを自重し削れと言われても難しいところがある。と。いう悩みを頭の片隅にぶらさげたまんまアダルトビデオを眺めてたら、ふと。
官能小説ならそれが読む目的でもあるんだからねっとりと地の文書き込むのも読者サービスになるんじゃね? どうなん? と思いついた。
・きっかけ。
コミケで出すつもりだった本が間に合いそうになかったので次善策が必要になった。どうしようか。そういえばこないだ官能小説ならーとかどうのこうの言ってなかったっけ。
ふむ。
やったことのないことは取りあえずやってみれ精神で動いているので、経験のない一八禁短編集てのも。ナシではないのか。試してみる価値はあるかも知れませんぜ。
と。いざ筆をのばしてみると書いても書いても終わらなくて泡吹きながら書きました。
そもそもが、長文を書きたーいそれを我慢するのが苦手ェーとか抜かしてるやつに(官能小説なら)長文書いても許されるんじゃねとかいう動機を渡したらばこんななるのは自明なことだった気がする。
ねっとりとした描写が許されたかどうかは読者諸賢に判断をお任せしたく存じます。
・書いてみると。
さすがに初めてのことで諸々の迷い箸がありました。例えば語彙の選択。チンコとかワレメちゃんとかコミカルな方面だと雰囲気から浮くし、黒い密林に馥郁と香る肉厚の花弁が真珠の如く艶やかに濡れそぼりーとかだとそれはそれで滑稽というエロでもグロでもある一線を越えるとお笑いになってしまう問題。
文章のうえでさえ空気を読むのってムズい。
その線でいうと。喘ぎ声も……コレでいいのかな。ただの擬音といえばただの擬音なんだしこんなところでそんな悩むのも……いや、喘ぎ声はサービスの一環だし効果的な表現……そもそもあんあんみたいな喘ぎ声ってリアリティの面ではどうなん? いやそこはもうファンタジーに振り切っていいだろう。等ぶつぶつと。
あと。やっぱ。
いつも以上に正気じゃ書けない部分がありましたわね。ヒトって四六時中エロいこと考えてたら集団生活が送れなくなるんで、たぶんそういう、「我にー、返れー!」みたいなことを定期的に警告してくる機構が脳みそに仕込まれてるんじゃあるまいか。
けども書いても書いても終わらないうえに〆切まであるんじゃそんなことも言ってられない。とにかく、意識的に、このストッパーをぶちやぶるべく、躊躇うな! 踏み抜け、アクセルを! とか唱えながら書いてたらいつのまにかポプとかピピとかいう類いのJKが頭に住み着いて『つっこむぞ、つかまれッ!』て見事なハンドリングで竹書房でもないぼくの理性を定期的にぶっとばしてくれました。
ありがとうAC部。
・副作用。
今まであんまアイドルを性的な目線でみたことがなかったんで(マジ)その扉を開けてしまえば……特にライラさんが。なんかしばらく直視できなくなりました。えろすぎる。
あとエロ動画等みてても連想が働くのか書き最中のお話の展開に思考が流れたり、その動画からヒントを見出そうとしてみたりで、とにかく、目的を達するまでにむやみに時間が掛かるようになってしまった。自慰って集中力の必要な行為だったのね……。
それから。私は二次創作はだいたい「このキャラは! こんな性格で! こんな内面と反応だと思うんですがどうですかァー!」みたいな論文を書くよな気分で書いてるんだけど。芹沢あさひさんの場合はまだ公式に深掘りされてなく、ある程度手探りで、ひいてはある程度自分の理想に寄せる形で書けたりもするわけですが。エロい話でそれをやるとなんかだいぶ危険な気がしますね。
自分の性癖の理想に近付けることが出来る。みたいな。
これはヤバい気がする。正直相当色々と楽しい。やべえ。そうか。エロ作家先生のみなさまがたはこんな世界に生きていたのか……。
逆に言えば、二次創作である限りキャラの造型は一次元という大優先設定があるわけで。それを墨守してはほんとに自分の趣味の性癖を反映させきれないところもあるんだろうなと。催眠ジャンルの流行る理由がわかった気もしました。
・タイトルの由来。
察しがいいか、担当のプロフ暗唱余裕勢ならとっくに登場アイドルの年齢とスリーサイズとを並べたものと気付かれていることかと。
話が書けそうな三人を並べてみるとみごとにティーンで揃ってしまいまして。ハイならともかくローが二枚。それどうなん? とは思いつつ。でもまー創作上の人物の年齢はフレーバーに過ぎず、いやむしろ概念上の存在だからこそ属するところを定める数字は大事で。いやしかしロリだとか学生だとか、属性ばかりに注目しては個人を蔑ろにすることに繋がりかねんよなとかぐるぐるした後に。
でもコレは官能小説だし。
いうなれば、その人物の、『女性である』という部分を強く強くクローズアップしたものなのだから。そこんところの俗悪さは敢えて受け止めないとダメなんじゃないか。
じゃあ。ということでスリーサイズという数字を、人格(や物語より)も前に出してみて。加えて表紙絵にはメジャーをモチーフに入れるようお願いしてみました。ありがとうイラストを請け負ってくれた宇賀井さん。
三人のお話はそれぞれバラバラに思いついたものであって、テーマとして用意したものは特になかったのですが、振り返ってみれば『アイドルとやっちゃうことの責任や代償』みたいな話に終始したように思います。これは偶然でなく、彼女らは何よりもアイドルとして我々の前にあるわけで。立場・境遇・環境は、思った以上に人格と不可分であるのかも知れません。
・そもそもがぶっちゃけて言えば。
『登場人物にある程度の愛着を持つと、その二次創作作品におけるエロを受け付けられなくなる』という人種が世の中に何割かいますけど。私もそっち側の人間なんスよね。
そんな癖を持つ人間が、それでも、エロを通じてこそ描ける側面だってあるはずだろうと歯を食いしばりがちに書いたのが今回のお話群だったりします。そのうえで、掲げたテーマが『せっかく官能小説に挑むのだからエロ描写からは逃げるなよマジでわかってんだろなお前』みたいな。
ライラさんのお話。
はやめに読書趣味に目覚めた少年少女はその意味もわかんないウチから男女の情事を読んでたりする。読書初心者向けと勧められるショートショートな短編集には社会派ブラックユーモアも多くて、男女の情事もテーマになりがちだからである。私の場合は阿刀田高先生の短編集がそれで――『不倫相手のご婦人の飼ってたオウムが、そのご婦人の喘ぎ声を覚えてた』みたいな話を小学生時分のおれは何を思いながら読んでたんだろ。
初めての官能小説を書くべーと腕まくりをすれば、自分の中の原初体験を訪れ直すのも自然なことで、かなり直接的に先生の作風を参照してる気がします。まあ書き終わったあとで気が付いたんだけど。女性の部屋まで移動するシーンから入るあたりモロな気がする。
とにかく初めてのガチエロ小説であって勝手のわからなさに苦心しながら書いてましたけど、手をとめてぼんやりと「ライラさんは、もうちょっとこう……」だの「ライラさんはなあ……」とか考える時間が多かったのは、馴れてなかったからでなく、やっぱそれがライラさんだったからだろうなと。
そのぼんやりの果てに落ち着いたのは、エロに対して、積極的でも消極的でもなく、エロどころかこの世のほとんどのものをほがらかに受容する姿でした。エロもその一環でしかないような。
一言で言えば観音様。
お話としては正直……ここまで持ち上げて落とすつもりはなかったんだよう。甘えようとしたら幾らでも甘やかせてくれるライラさんにずぶずぶになってるうちに甘々になっちゃって……挙げ句に、「いやコレ、ライラさんの二次創作だからという理由で手に取ってくれるライラさん担当のひとに悪くない?」とか怖くなって書いてる最中にオチを変えたくなって。いや読者に忖度するくらいなら筆を折るぞおれはだのと揉み合って。
その挙げ句に娘さんが生まれました。
最初からこのオチが思いつかない私はエロの才能がないと思う。
話の決着がついてるよにみえるのに続くエレベーターのくだりはそういう経緯なんだけど、このシーンでもポプとかピピ的なJKが「躊躇うな! 踏み込め!」とか言い始めてイヤ出てこなくていいよと。
晶葉さんの話。
世の中の仕組みの変遷にともなって、性別の意味や垣根が段々薄くなってってるのは確かなことだと思うけど、それでも、今現在でいう男性的な・女性的な役割って分担という意味でやっぱり求められ続けるんじゃなかろうか。私は元々、男らしいとか女っぽいとかいう言葉がどうにもキライで忌避しがちだから、性別てのがどんどん透明になってくのは歓迎したいとこではあるんだけど。それでも結局なくならないのならば、個人個人が、おれは男を、おれは女を、と、ロールを選べるよな世の中になればいいんじゃねえか。そんで相手の選択をこそ尊重できればいいんじゃねえのかな。
男であることを、女であることを、めんどくさいと思わなかった人間はたぶんいないよな。
このへんの個人的なうだうだは、池袋博士の話だけじゃなくてライラさんの性愛の儀典云々のくだりにも滲み出てます。狭義な社会的役割に殉じようとするその姿勢だってきっとそれなりに美しいんじゃないのか。
もしくは、エロ小説という、その人格の持つたくさんの要素のなかから性別て部分を恣意的に抽出した話を書く事への言い訳というか……このへんにだらだら思考を費やしてしまうあたりマジでエロの才能ないんちゃうか俺。
池袋晶葉さんに対して。私はデレマスのなかでも彼女こそが屈指に性的劣情を催させる人物であると評してやまないのですが。彼女は芯が通ってるくせにその境界をふらふらしがちで、どちらかに揺れる度に普段は目立ってない属性が弥増すというか……。自助自立してるのにときたまPには弱みをみせる。自己さえ分析の対象だから、虚勢でもなく天才を自称できるけども、不得手な分野も自覚してるからその自覚があるだけ弱気にもなる。そういう、こう。無頓着な部分が。何がいいたいかというとおれは足癖の悪いおんなのこが大好きだ! 男でも女でも自分の性に無頓着なやつが好き!
なので、晶葉さんのお話だけは今回用に思いついた話でなくて、長いこと頭にあったやつでした。具体的にはムーンライトバニーとして再登場した際に匿名掲示板の話題の流れで思いついたまんまを投稿して好評を得たやつがベース。ほんま古いな。
とかいう割には。ぶっちゃけると、今回のお話において池袋博士のエミュレーションが十全に遂行されてるか、少々自信がない。口調はもちろん、オチとしてこれが相応しかったのかどうか。だって池袋晶葉担当のみなさん揃いも揃ってガチだからそういう方達にお出しすることを思うと萎縮しがちというか……具体的には、Pのことをどのくらい「助手」呼ばわりするのかとか。
ゲーム本編のテキストを参照すると、結構な割合で名前呼びだったりするんよね。ユーザーネームを参照する都合だと思うんだけど。そのあたり踏まえて、作中でのP称は少々の揺らぎを含ませたまんまにしてます。
他、個人的な体験としては。
三つのお話を書くに際して主観視点と三人称視点とを意識してばらけさせてみて。晶葉さんの場合は三人称=神の視点を意識して書いた部分多めなんですが、触手に嫉妬しながら書きました。たぶん染み出てるとおもう。
あさひさんのお話。
この話を書いた当時の話ではない出来事なので少々フェアじゃないんですが。このあとがきを書いている最中に、限定pSSR芹沢あさひが追加されましてね。
この話って、ざっくり言えば『あさひが世間の常識に背した興味を抱いてしまい、しかしそれを承知で叶えてあげた』という話じゃないですか。
それなのにね。公式はね。【空と青とアイツ】芹沢あさひのPは、『あさひが世間の常識に反したらば、あさひと世界とを繋ぎ止める為にその願望を捨てさせる』て決断をしたんですよね。
泣いたよね。
あさひさんはその存在自体がなんかもうおれの個人的なテーマに刺さる。すごいささる。
それはそれとして。
長年の疑問じゃあるんですよね。なんでセックスって表立って話題にしたらダメなのか。隠されるのか。特定個人とだけ許されて、それ以外の人間と行うと罪にさえ問われるのか。もちろんそれらには(なんせ法で整備されるくらいだし)答えが各々用意されてるわけですけど。そのへんの回答に行き着いたとしても、それでも社会と個人とを比べたら常に社会が優先されてしまうことだとか、建前で隠され続けてる事実だとか、例えば原初の商売は売春だったんだぜと常識の移り変わりで左右されがちなことだとか。何かと釈然としない部分は残ります。
そのへんのワガママを全部あさひさんに背負って貰ったような話。
たぶん私は死後、一四才に『XXXXXXから大丈夫っす!』と叫ばせたやつ専用の地獄に落ちる。
改めて読み返すと、エロに至るまでがやたら長いですねこのエロ小説。エロシーンに到達してからはずっとエロいことしてるからご寛恕頂きたいですが。
まあ一四才のアイドルとセックスするのにかかるのは一五〇〇〇文字と書けばそれでも短い方じゃないっスかね。書いてる最中はほんと可愛いなこいつ。ほんと可愛いな芹沢あさひはとか呟きながら書いてました。書いてる当人的には「待つの苦手っす」て言ってるシーンが最カワシーンなんですが伝わってるでしょうか。
ところで、お話てのは基本的に「目的」「障害」「達成(獲得・挫折)」の三段階で構成されるわけですが。終始優柔不断で右往左往して美少女に振り回されてばっかなこの男がなんでこんな可愛い娘を物語上のトレジャーとして獲得できるんですかね?
なんか理不尽じゃない?
なんでこのひと自分の書いた話にこんな腹立ててんの?
まあ。そのへんは。Pがあさひを獲得したというよりも、あさひがPを獲得したと解釈すべきなんでしょう。捕食されたと言い換えてもいい。
だからあさひが獲得したー、とも言える初体験ふくめセックスシーンは可能な限り彼女のわがままを叶える形にしました。Pが割とオトナらしくリードしてみせてるのはそういうことです。全部あさひの為です。だから「気持ちいいか?」だの「大丈夫か?」だのの台詞は言わせないように……したつもりなのに読み返してみると結構言ってやがんなコイツ。ダメじゃねえか。
芹沢あさひは自分の欲求にとても素直で、素直なだけに一直線で、それが寄り道や脇道にみえたとしても、後から付いてくるような形で或いは当人さえ気付いてない本当にほしいものを手に入れてしまう。公式の用意したバレンタインイベもホワイトデーもそんな感じであるよう思います。そういう天才でもあるのかなと。
だから極々個人的な打ち明け話をすると、芹沢あさひにはPに恋慕してほしくないんですよね。というかそもそもあんま特定個人に懸想して欲しくないというか……一番や二番や、本音や建て前とかそういう器用さとは無縁な娘でしょう。今でこそアイドルがいちばんだけど、それが一番でなくなるとそのままどこかに行ってしまうような、そういう危うさこそが、こう、極々個人的なな? やべ。あとがきじゃなくてただのクソデカ感情表明会見になってきた。
ただそれでも、公式の展開やこの話を書いてみたりとか人様の創作を通じたりとかで、あさひに必要なのは、あさひをこの世界に繋ぎ止める重石的な存在なのかなと。そんでPこそがそれを担うべきであって。だから、あさひを繋ぎ止められるならば、この世界に属している人間が彼女の興味をひかなければならず。その結果が恋人だろうがなんだろうが構いやしねえやと。最近は思います。
そのへんの話を続編で書けたらなあ。書けるかなあ。
追加のお話。
再版・製本印刷を機会に追加で書いてみました。
なんでだろね。……いや、なんでだろ。
この本を再版するにあたって誤字脱字など校正をしてみれば「……エロ描写から逃げるな。をテーマにした割に、セックスシーンの途中で場面転換してるよね。それどうなん?」と疑問が湧いてたところに、人様からこの本を激賞頂きまして。わーいと舞い上がった勢いそのままになんか書いてました。
あんま説明になってない気がする。
まあ。コピ本でなく、印刷屋さんを経た形で残るんだからできるだけ完全版にしたいよね的な……?
それぞれ、場面転換の都合でぶつ切りになったセックスシーンを追補する形で書き継いでおります。だから本編に追加しようと思えば追加できたんだけど、リズムやテーマを崩しかねない部分もあるかもなと思い、独立させ尻尾に追加しました。なおのことなんでかいたのかわかんないな。
このあとがきのお口直しとして、お口直しになるかどうかは正直わかんないものの。まあとにかく、よろしければご賞覧ください。
エンドロール。
二次創作は原作から生まれるものであって、その物語を原作にお返しするのも作法の一つかもしれません。リセットという形であり、だいぶ乱暴にも思いますが、そうした所作を思い追加してみました。
「あれー?」と感じられた方は、読まなかったことにしてくださいなんつって。
そっ
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=660479
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=12764042
余談:樋口円香の趣味は昼寝ではないかという推論。
なんとなく思ったことをまとめてみたらちょっと長くなったので別に記事に。
樋口円香は趣味と特技を『別にないです』としてある。
そう書かれたらば往年のSNKあたりの格ゲーのプロフィール欄遊びを喜び愛読してた種類のオタにはかえって興味の元になるのである。よってその事実が明るみにでた際に「ほらーおれは円香が事務所にきた当日には気付いてたもんねー」とどやる為に書き留めておきます。
そんな事実がなかったら朽ちるに任せておきます。
以下、論拠を並べていきましょう。
たぶん図星なのでは。あるいは「あ。返答が楽な答えだ」「やっぱこいつ、アレだな」くらいの親愛度上昇かも知らんが。
個人的には、『家事とか?』て回答したときの「……察するに、あなたは休日しか家事をしないようですね」て返答がすごくいい。イイ。
もうひとつですね。
「休日をくれ」という約束イベを達成すると以下の反応になります。
寝て過ごしたね? と思ったんだけど、どうだろうか。
逆に、夜更かしして何かしてたとも解釈できるけどさ(深夜アニメとかかな(その趣味はおおむねまにあっている。
他に何かしてたかとか考えると……往年のキャラいじり系二次創作界隈なら透の盗聴だのストーキングだのになりそうですね?
だいたいただの直感じゃねえかて感じだけど。
まああともうちょっとあるのよ。
これもモーニングコミュです。
こうなる。回答したくないから(朝寝坊したから)会話を打ち切ったとも解釈できやしまいか。ただまあこのコミュに限らず万事この調子なんですが。
因んで、「朝飯食べた?」を選ぶと「つまらない質問。そこからどう会話を広げるか見物ですね」と切って捨てられますが、これはこれでねぼすけさんで食べ損ねたんではぐらかされたみたいな解釈もしようと思えばできます。
私からの報告は以上です。
以上です。
で。まあ更に関係ないんだけど。
樋口円香がずいぶんと珍しい反応をする朝コミュがある。
これも相俟って。
……なんか妙に猫っぽいねこのコとか思う。
(筆者は極端な猫好き)
ノクチルはシャニマスから投げつけられた時限爆弾かも知れないみたいな話。
ツンデレ気味なキャラクターからツン成分が損なわれていく度に落胆を味わっていためんどくさい性癖を持つ者どもよ! 今こそ集い眼にみよ耳にきけ! 樋口円香こそ我らにくだされた福音である!!
という気分なんだけどこの気分はあんま本文には関係ありません。
アイドルマスターシャイニーカラーズにおいて、4人とアナウンスされている新規追加アイドルのうち2人目が来たその当日の空気感としてメモしておこうかなみたいなやつです。
まずはタイトルの通り。ノクチルとはそう名付けられた時限爆弾なのではあるまいかという話をします。
ボマーに気をつけろよ。
ノクチルは『幼なじみの四人組』との既報がある四人組だけど、じわじわと公開されてきた情報を参照してくと、花盛り女子4人きゃっきゃうふふ百合ん百合んみたいなフレグランスでなく、ちょっと濁ってる部分がある。
以下にひとさまの指摘を引用させて頂くと。
この4日間で判明した樋口円香さんの浅倉透さんに対する「感情」のまとめです pic.twitter.com/6Xshmrjq40
— あたなかちゃん (@Atanaka_Chan) March 31, 2020
考えてみれば、アレだよな。
幼なじみって『家が隣同士だった』『小学校あたりからずっと同じ学校を通ってる』『親同士の付き合いで顔を合わせることが多かった』等で、状況により繋がれた関係であり、自らが選んで結んだ関係ではないよな。とも感じます。
自分で選んだわけでもなく気が付けば与えられていた関係。
それって案外、脆いよな。ただ環境がそうであったからという結びつきは、環境が変われば簡単に壊れてしまうのでは。
現実にも、義務教育という制度を経る私らには高確率で各々に幼なじみは存在するけど、小学校・中学校で友人だと感じていた彼らや彼女らと長じた今でも連絡を取り合ってるひとってどのくらいいるんだろう。
だから。例えば。
4人のなかの誰かが、その関係を重荷に感じていたとすれば。
4人のなかの誰かが、その関係を維持しようと腐心していたからこそ成り立っていたとすれば。
4人のなかの誰かが、その関係をよりももっと強い繋がりを望んでいたとすれば。
4人のなかの誰かが、その関係を自然なものとして捉えすぎてて、いつかなくなるものと気が付いていないとすれば。
意外なくらい簡単にほどけてしまいそうな関係ではある。
結ぼうとするもの、ほどこうとするもの、或いはそもそも自然にほどけてしまうもの。
そうでなくったって、環境てのは望むも望まざるもなく変わってしまうものであるし。
んん。
幼なじみというスタートラインは、ゼロじゃないだろうけど。プラスともマイナスともいえない部分があるのか。
というのが解禁前の前情報でぼんやりと感じていたことで。
透、円香と順にWING編のシナリオを読んでいくと予感めいたものが強くなった気がする。
浅倉透はPと出会った過去と、Pがいつか思い出す未来とに想いを寄せている。
樋口円香は変化することをただ厭っているように思える。強引に言えば現在にこだわっている。
もうすでに、未来と現在という形で相克が起きている気もする。
どうなんだろね。
まあ私のカンは大抵はずれるんだけどさ。
敢えて、初見のイメージで誰が気になるかをいえば樋口円香さんでしたけどね。
何がいいって顔がいい。
・浅倉透のWING編シナリオを読んでみて。
体温がない。というのが最初の印象。
興味や関心や情熱というものに無縁というか、大げさにいえばそういうモノが存在することそのものを体験したことがなかったんじゃないか。
だから、形式から物事を理解しようとするし(だって、新人は偉い人には自分から挨拶に行くんでしょ?)、執着がないんでプレッシャーもなく緊張もしないし、目標がない割に言われたことはちゃんとこなすから感想が希薄で、何を考えているかわからないといわれる――どころか、「感想を誰かに伝えることが、こんなに喜ばれるなんて思いもしなかった」とかいう。言ってたっけ。言ってた気がする。まあ言ってなくてもわざわざ二枚のDVDの感想を伝えるためだけに休みの日を押して事務所まできたわけで。
そのへんは多分それだけ、言わなくてもわかってもらえる関係性に今まで育まれていたからでもあるんでしょう。
欲しいものがないから、何かを選ぶだけの基準を持ってないから、与えられたものを唯々諾々と受け入れる。
だから多分、浅倉透にとって、人生そのものがそんな感じのものなんじゃないのか。
人生なんて大仰な言葉を持ち出したけど、これは実際に浅倉透自身のコミュの題名として採択されている言葉である。
どこまで続くかもわからないジャングルジムを、なんで昇るのかさえわからずにただ登り続ける。
人生て割と苦難の連続でめんどくさいことだらけだよな。
しんどいし、楽しくもないけれど、ただもうどこかそういうモノなんだととっくに理解しているから、しんどいとも楽しくないとも感じず登り続ける。
ただ、これはどこまで続くんだろうという疑問だけを背負いながら。
そういう浅倉透に、いつかのプロデューサーが言った『じゃあ、登りたくなったらくればいいよ』という一言はとても大きなものだったんじゃないか。
ただ与えられるままに、そういうモノだとの感想以上のモノを持たずに、そこにあるからという理由だけで継続してきたこと。
それに対して『自分で決めればいい』という選択肢と、『先に登ってるから』という道筋を与えられた。
結果的に浅倉透は、自らの意思でジャングルジムを登ることを決めます。
『一緒に登ってくれるひとがいるなら』或いは『プロデューサーがいつか思い出してくれるかな』と、未来を向けての志向を始めたと解釈できます。
自分が感じたことをしっかり相手に伝える。反射と反応を返す。
これがおそらく、浅倉透が選んだ『透明な自分』からの脱却。
参加性を持って物事に望む。いいことだよな。喜ばしい。祝福したい。何目線の意見だかわかんねえけど。
ただ。
『自分で選んだわけでもなく気が付けば与えられていた』ってのは、この文章中、既に表現として人生ではなく別のモノに用いた。
『幼なじみという関係』にである。
んん。
・樋口円香のWING編シナリオを読んでみて。
あ。やべ。
頻出するキラーワードに「あー。やべー。ぞくぞくする。このコまじ逸材。ぞくぞくするわ。ぞくぞくするわ。ぞくぞくするわ」みたいにばっか思っててシナリオそのものの感想が希薄だと今気が付いた。
樋口女史のキレ味もそうだけど、その舌鋒に対してのれんに腕押し的に「えー。でも円香は才能あるし」「いやいやしかしアイドルってのはいいもんだぞ」つってタフネスをみせるPの態度が、シナリオ上の憎たらしさを軽減できてる気がする。ヘイトコントロールというか。
このへん、Pの素質というよりも、シーズン2と3の合間あたりに、プロデューサーも(円香とはこう接するべきだろうか……)みたいな方針を定めているように感じる。概ね妄想だけど。
あと、「ミスター・オールドタイプ」とか「ミスター・好青年」とかの変化球気味な口癖でキャラ立てにくるあたり往年のエロゲ(という呼び方が悪ければビジュアルノベル)技法に通じる気がする。あんまその方面には詳しくないから適当いってますが。
あとプロデュース後にホーム画面戻ると大丈夫かなこの娘ほかの娘らとうまくやれてけるかなと割と素でハラハラする。
まあでも。シャニマスというキャラの掘り下げや展開がやたら丁寧なベースにこういう娘がきてくれるということがね。個人的にね。とてもね。喜ばしくてね……。ツンデレ気味なキャラクターからツン成分が損なわれていく度に落胆を味わっていためんどくさい性癖を持つ者どもよ今こそ集い眼にみよ耳にきけ。
性癖の話は別にいい。
いいとしても。
案外、樋口円香当人のWING編のシナリオから読み取れることはそんなには多くないのかも知れない。
結局のところ、情熱という熱量を厭い距離を取ろうとし続ける彼女が、それなのに最大の積極性をみせたのはオープニングシークエンスの「浅倉透の安否を確かめる為に事務所へときた」シーンであって、最大の見所もここにある気がするからだ。
そのへんの書き方はさりげに丹念で、シナリオの開幕は日のあるうちから始まり、カチリと事務所の灯りが落とされるまで待ってからお話が始まる。これはつまり、事務所のみえる位置で、樋口円香が日の落ちるまで待ち続けたか、もしくは日が落ちるまで逡巡したまま動き出せなかったか、の、描写と察せられる。どのみち相当な執念をみせられるわけだ。開幕から。
彼女にとって最大の動機であり執着は浅倉透に他ならず、そしてWING編のシナリオではそこは微かに触れられるのみで、つまり彼女の核の部分はあんまみえてこない。
なのでこっから先は大部分が妄想なのだけど。
浅倉透と樋口円香の両人は、情熱て概念に対して淡泊て点で一致している。
けども違いも大きく、一方は「情熱という存在そのものを意識したことがなかった」と察せられ、一方は「情熱という存在そのものを(なぜか)嫌っている」
誰が言ったか。スキの反対はキライじゃなくて無関心らしい。その言に則れば樋口円香は情熱という熱量には興味津々となる。
じゃあなんでそんなに興味津々か。なんでそんなにキライなのか。
樋口円香がいまのとこ最大の執着をみせたのは浅倉透という存在にである。
執着とは情熱とも言い換えることもできる。樋口円香は浅倉透に情熱を向けているがその情熱そのものを厭っている。
んん。つまり。
情熱を否定し、遠ざからなければ、浅倉透に情熱を燃やしてしまい、幼なじみという一線と、同性という一線を越えてしまうから……?
親方ァー。ここに百合豚がいますぜェー。
オウ丁度いいってもんだぜえ。ウチのカカァが今日はトンカツを食いてえとか贅沢抜かしててヨゥ。
ぶきぃー百合の何が悪いんじゃあー。
まあ妄想はどうでもいいとしてさ。
樋口円香が浅倉透に執着しているのはシナリオ上の事実である。だから多分、察するに。どこか。樋口円香は幼なじみという関係が儚いものだと勘づいているんじゃなかろうか。
言われるままに唯々諾々と大抵のことを受け入れるくらい(そこまでではない)目的意識の希薄にみえる浅倉透は、それだけに何も言わなければずっとそこにいてくれそうな感もある。
それでも、そんな彼女が情熱というモノに気が付いてしまったら。
多少なりとも現実に妄想を寄せて考えてみると、幼なじみがアイドルとしてスカウトされてそれどころかデビューするなんざ相当な事件であって、変化である。
付け加えるなら、しかも、あの浅倉がである。
その変化を歓迎しないから――変化などして欲しくないから樋口円香は事務所の前まできたのではないか。
だからこそ、浅倉を、自分を変えてしまいかねない情熱とかいうエネルギーを内燃させて活動するプロデューサーという人種にああした態度をとり続けるのでは無いか。
妄想を重ねると、ノクチル(と呼ばれる前)の幼なじみ四人組の中心は浅倉透なのではあるまいか。樋口円香の執着に加えて、市川雛菜からは慕われて。小糸ちゃんはカワイイ。
浅倉透が中心となって繋がり合う関係なのだから、その中心が外れてしまえばほどけてしまう。円香のみせる執着と危惧は、透個人だけでなく、四人のその関係性に――? とまで考えるとだいぶただの妄想になってくるけども。
ただ、いずれにせよ、それでなくとも。
まだ分量の決して多くないテキストのなかで、樋口円香はたまに『将来』という言葉を口に出す。
樋口円香の感じていた「幼なじみの儚さ」とは、例えば卒業や就職といった将来に対する不安でもあるかもしれない。環境とは望むと望まざるとに関わらず好き勝手に変わってしまうものであって、そのあたりの将来の不安てのは時間さえ経過すれば必ず間違いなくどうしようもなく訪れるものである。
そのあたりから、なんとなく。『時限爆弾』という言葉を連想するものである。
浅倉透は、自分で選んだわけでもなく気が付けば与えられていたものから一歩を踏み出した。
樋口円香は、自分で選んだわけでもなく気が付けば与えられていたものに執着をする。
彼女は、変わりたいと望んだ。
彼女は、変化なんかしたくないと嘆いた。
ただ、変化なんて時間が過ぎれば勝手にやってくる。
市川雛菜は、福丸小糸は、あと数日でそれぞれ解禁される。
そのあたりからも時限爆弾て言葉を思い浮かべるよねとかいえばそれなりに文章がまとまる気がする。
ニュー・アイドル・シネマ・パラダイス 『永遠に美しく…』
架空のラジオ番組の特別エピソードという体でやっております。
涼「お。それじゃ本日のお題だね。
『メリル・ストリープ出演作品で好きなモノをひとつ』だってさ」
奏「あら。簡単そうで難しそうな題ね。ただ作品が好きなだけでなく、あくまでメリル・ストリープを中心に選ぶ……。
そうね……演技を楽しむという意味なら、少しひねくれてるけど『プラダを着た悪魔』なんて丁度いいんじゃないかしら。
気軽に観られるガールズムービーなんだけど、それだけに演者はみんなキャラクターを前面に出した、記号的で、わかりやすい演技をしてるのね。
そのなかでただ一人、メリルだけは……なんていうのかしら。わかりやすさのレベルと質が違うの。こう、『本物が一人混ざってる』といった感じで」
梅「わ。お、面白そう……みんなゾンビの格好してる、なか、で、ひ、一人だけホンモノさんがいる、みたいな?」
涼「その例えはちょっと違わないか?
でも、アタシも観たことあるけど確かにアレはなー。メリル・ストリープの役がまさしく『プラダを着た悪魔』当人で、タイトルロールだから仕方がないところはあるけど、作品そのものを食っちゃってるというか、観た後にメリルの印象しか残らないような強さだったね」
奏「でしょ? アン・ハサウェイのファッションとか見所のもちろん多い映画でもあるけど。あ、ところでお題の一作品を選ぶなら私は『アダプテーション』ね」
涼「なんだそりゃ。そういやまだお題の話だったな。
それじゃあアタシは『マディソン郡の橋』で。小梅は?」
梅「え。あ、わ、私は……それじゃあ、えーと……『ファンタスティックMr.FOX』とか……?」
奏「『マディソン郡の橋』、ね……」
涼「……なんだよ。ニヤニヤして」
奏「何でも無いわよ? ただ、涼がラブロマンスの名前を挙げるのは珍しいなって思って」
涼「奏はさあ。言及されるのは照れくさいから早めに話を切り上げたーってのを察してくれるタイプだと思ってたんだけどな?」
奏「あら、買いかぶられちゃってるわ。涼の機嫌が悪くならないうちに、タイトルコール済ませちゃいましょうか」
梅「え? ら、ラブロマンスのお話、は、もういいの……?」
涼「いいよもう。小梅まで乗っかってくるなって」
奏「ハイ。ニュー・アイドル・シネマ・パラダイスへようこそ。
このラジオプログラムは、速水奏と」
涼「松永涼と」
梅「白坂小梅、の」
奏「アイドルというロマンスを追う三人が、映画へのラブをラブリーに語る番組です」
涼「……いいけどさ。なんか奏さ。今日、機嫌がいいっていうか、はしゃいでないか?」
奏「はしゃいでるかしら。言われてみればそうかも知れないわね。今日のテーマって『永遠に美しく…』でしょう?」
涼「ああ。小梅のリクエストでな」
梅「わーい」
奏「そう。小梅のリクエストでね。今月は、小梅誕生日おめでとう企画として四週連続ホラー特集でお送りしてるんだけど。小梅の口から、ロバート・ゼメキスなんてメジャー作品の監督名が出てくるなんてって、ちょっと思っちゃって……オスカー監督よ? 作品・監督賞も取ってる、ハリウッドの王道よ……!?」
涼「うんまあ。そこは否定しないけど。ちょっと前まで3Dアニメ畑に行っててメジャーってイメージは最近はない気もするけど。それはそれとして、なんで感極まってんだ?」
奏「……少しだけ昔話をしていいかしら」
梅「え、うん。どうぞ?」
涼「ああまあ。どうぞ」
奏「小梅ってカワイイわよね」
涼「そうな」
梅「え? あ、えっと、え?」
奏「初対面の時のあの、胸に花の咲いたようなときめきを今でも覚えてるわ。その瞳を見た途端に、私の目に鮮やかに翻っていった、ダコタ・ファニング、クロエ・モレッツ、アビゲイル・ブレスリン……ハリウッドを色めき立たせた、天才美少女のイメージ……不思議よね。まだ挨拶さえしてなくて、小梅がホラームービーが好きだなんて知りもしなかったのに、そのイメージはみなホラームービーへの出演でスターダムにあがった子役達で……」
涼「あー。うん。ゾンビランドのアビーほんと可愛かったな」
奏「だから、弾む胸をなるべく抑えて、私に出来る精一杯の自然な演技で、一緒に映画でもみないって誘ったの。『どんな映画が好みかしら?』そう尋ねたときの答えがね――」
『――人がたくさん死ぬ映画なら、なんでもいいです』
涼「あっはっはっはっは!」
梅「え? え? い、言ったっけ……言いましたっけ、そ、そんなこと……?」
奏「笑い事じゃないわよ。こんなに愛らしい13歳にそう言われたときの私の心境を思い遣ってほしいわ」
涼「あー。まあ、ね。いやでも、今でこそ笑い話じゃないか。笑い話になってるならいいんじゃないか? それに、アレだろ。なあ小梅、コレさ。来月あたりからレンタル開始になるホラー映画の一覧なんだけどさ。この中から観たい映画選ぶとしたら、どれがいい?」
梅「え、えっと……うん。……人がいちばん死にそうな映画が、いいな……」
涼「ホラ。」
奏「しかも笑顔で言ってるわね。ともかく。ともかくよ。それからしばらく、こう、なんていうのかしら。少し変な情熱にかられて、暫くのあいだ、ヒューマンドラマ的な映画を小梅にあれこれオススメしたのよね。もう少しでいいから、その可愛さに見合った、明るくて暖かい場所に連れて行ってあげたくて……それももう、なんだか懐かしい。そんな日々を思い出すと、小梅がこんなメジャータイトルを持ち出してくれたことが、なんだか嬉しくって……ね?」
涼「ただのめんどくさい映画オタクだね」
奏「否定はしないわ。意外に思われるかも知れないけど、私にもそういう面倒くさい部分があるってことね」
涼「そのへんの奏のめんどくささはファンのみんなもだいたい気付いてるんじゃないかな」
奏「…………そうなの?」
奏「……え? そうなの?」
涼「ま、とにかく、そんな小梅がチョイスしたのが『永遠に美しく…』と」
梅「で、でも、どんな理由でも、オススメした映画で喜んでくれるのは、う、嬉しいなって……」
涼「そうだな。小梅が喜んでくれるならなんでもいいや。
ひとまず作品紹介から済ませていこうか。
お話の中心になるのは、マデリーンとヘレンという二人の女性。長年ライバル関係にあった二人の対決は、ヘレンがこの人こそと決めたフィアンセをマデリーンが略奪し、結婚までしてしまうことで決着したように思われた。哀れヘレンは失意のまま健康を損ない見る影もなく太り、療養生活を過ごす……そこから時は流れ、すっかり愛の冷え切った夫婦生活を贈るマデリーンの元へ招待状が届く。
それはヘレンの自伝出版記念のパーティーだった。
己の勝利を確かめるため、或いはかつてのライバルの零落を笑うため出席したマデリーンは、しかしそこで、まるで衰えず実年齢とかけ離れた若々しさと美貌を備えたヘレンと出会い……って。
掻い摘まもうとしたら前半全部話しちゃいそうだね」
奏「まあ、そういう女性二人の愛憎劇が中心にあるってことね。
『永遠に美しく…』は1992年のアメリカ映画。バックトゥザフューチャーの成功によりもはや映画史に名を残すことが約束されたロバート・ゼメキス監督作品。そんな巨匠が、ブルース・ウィリス、メリル・ストリープ、ゴールディ・ホーンを主演に迎え、当時最先端のSFXで描くのは、不老不死の秘薬を巡る女の強さと醜さを描いたブラックホラーコメディ……ですって」
梅「ごーかー」
涼「そうな。監督も主演陣も豪華……だけどさ」
奏「そう。豪華よね」
涼「さっき奏が『小梅がメジャー作品を薦めてる!』って喜んでたけど、内容は、まあ……内容だよな」
梅「きれいな女の人二人が、薬のおかげで不老不死になって、首がぶらんぶらんになったり、お腹に大きな穴があいたりする」
涼「メジャーか?」
奏「ええっと。それはまあ。で、も! ストーリーラインはオーソドックスよね。二人の女性による恋の鞘当てで」
涼「それはそうかな。交わされる会話も軽妙でキレ味がよくて、いかにもハリウッド娯楽大作って感じで肩肘はらず観れるね。ジャンルとしても、一応まあホラーに分類されそうだけど、スプラッターなシーンもほぼないし、だいぶ安心してヒトにオススメできるかな。指や手首がゴキとかベキとかあるけど、あれくらいだったらアクション映画ならザラにあると思うし」
梅「う、うん。か、階段に突き落とされて、ごきべきぐちゃぽきべきどちゃばきばきずだだだだーみたいな、シーンとか」
奏「……そこがまあ、唯一といえば唯一かしら。ね」
涼「テーマも普遍的。て言っていいよな。老いに対する恐怖と、若さへの執着」
奏「そうね。Time goes byというか」
涼「でもこう……正直いうと、そういうテーマって、ちょっとピンと来ない部分もあるんだよな。過ぎた時間は取り戻せなくて、だから歳を取ることは確かに怖いことでもあるけど、この映画で言ってた『春だけを追い求めて参りました。秋と冬から逃げて』みたいな台詞で……逃げ出す程かなって、ちょっと思わないか?」
梅「うーん……えっと……それは……」
奏「涼はロックンローラーだからよね」
梅「ね」
涼「ええ? なんだそれ。No Future とか、Don't trust over thirtyとかか? なんていうかさ、そりゃ今日が終わるのは怖いけど、その怖さも受け入れて、明日がこなくっちゃ成長もないって思わないか?」
梅「わー。ロックンロールだ……」
奏「ね」
涼「えー。なんだよもう」
梅「涼さん、や、やっぱりかっこいいなって……」
奏「ね」
涼「まあいいやもう。でもま、実際のところ、所詮は青二才のアタシたちじゃ本当の意味で老いの怖さみたいなものはわからないかも知れないな」
梅「じ、事務所に、戻れば、おとなのひと、多いから、もしかすると教えてくれる……?」
奏「んー。その方向に話を進めるのはちょっとよしておきましょうか。でも、そこはそれ。アカデミー賞最多ノミネート俳優ことメリル・ストリープの演じるマデリーンが、その表現力で、スクリーンを通じて私たちに、老いることがどれだけ怖いか、若さというものがどれだけ執着に値するかを伝えてくれる」
涼「ああまあ、そうかな。あのシーンとか……。浮気相手の、若くてハンサムな男のところにいくんだけど、そこで『自分の歳にお似合いの男でも探せよ!』とかこっぴどく振られちゃって。大雨の中をアクセル全開のスピードで道路を飛ばしながら『あんまりよ……こんなの、あんまりよ……!』てすっごい泣いてるシーン。コメディ寄りではあるんだけど、なんか本気で可哀想に思えてくる」
梅「あ、そ、そういう話なら、あの……ライバルの、ヘレンさんが、スゴくキレイになってて……それのせいで声を掛けるのをやめて遠ざかろうと振り返ったシーンの……あの、表情が、顔が、すっごい格好良くて。すごい好き……」
奏「そうね。あの、悪鬼羅刹みたいに表現出来そうな形相よね……ホントに、メリル・ストリープはいくらでも尊敬できる女優だと思うわ」
涼「メリル・ストリープって確かブロードウェイスターでもあったと思うんだけど、開始冒頭から、『旬のとっくに過ぎ去った舞台俳優』みたいに扱われてるけど、それに関しては?」
梅「あ、あの、『マデリーンってまだ生きてたんだな』みたいな、映画全体に、掛かりそうな、ひ、皮肉っぽいこととか、言われてて……」
奏「あのシーンはあのシーンでね? こう、如何にもダメな舞台で演技もチープな女優『という演技』が惚れ惚れするのよね……!!」
梅「ふふ。か、奏さん、メリルさんのこと、大好きなんだね」
涼(どんどんただの映画オタクみたいになってるな)
涼「まあでも、アタシ個人の見方になるんだけどさ。マデリーンもヘレンも、不老不死に手を出してしまった理由は、若さとか美貌とかよりもずっと、ライバルへの対抗心というか……嫉妬みたいなものが強い気がするんだよね」
梅「ああ……」
奏「そうね。それはあるかも知れないわね」
涼「それならアタシもだいぶわかっちゃうんだよな。対等だと思っていたのに、もしかするとずっと先を行かれてるんじゃないかっていう焦りとか、チャンスを掴んだ連中と自分を比べたときのみじめさとか、怖さとかさ」
奏「まあ、ね。私たちはアイドルだから、競い合うことは日常とさえ言える。でもそれも、一つのカテゴリじゃなくて、それぞれの得意分野という形で、ある意味じゃ分散されてるから救われている部分もある」
梅「うん……あ、アイドルって、色々だよね……」
涼「それが、アイツにだけは、コイツにだけは勝ちたい、負けたくないって狭いところに入っちゃって、そのうえで『負けてしまった。もうどうしようもない』て実感してしまったとしたら……想像してみたら少しゾッとするよな」
奏「実際、作中でもこれだけ美貌を競い合う二人なのに、お互い煽りあう事ばかりに費やされて、周囲にひけらかしたりはしない。それはまあ、映画としての尺の問題もあるかも知れないけれど、ずっと二人だけの世界ともいえるかしら」
梅「ヘレンさん、も、キレイになりたいっていうか……マデリーンさん、を、殺しちゃいたいっていうことばっかり、か、考えてるようにみえる……よね……」
涼「そうなんだよな。マデリーンにしたって、せっかくブルース・ウィリスを、ていうか作中の名前でいうとアーネストを奪ってるのに、いざ婚約したらずっと冷たい扱いをしてたみたいだしさ」
奏「そうなのよね。せっかくブルース・ウィリスが演じてるのに、ここまでのあらすじでも本当に存在感がないくらい。あ、でも、登場人物としての存在感はすごかったし、映画としてもすごく大事な役割と言えるわよね」
涼「こう、眉を寄せて、困り顔ばっかりしてるだけじゃないブルース・ウィリスの演技って貴重な気がするよな」
梅「い、いいひと、だしね……」
涼「……いいひとっていうか、アレは……」
奏「そうね……いいひとっていうか、ただの優柔不断というか……」
涼「小梅がああいう男とお付き合いしたいって相談しに来たらアタシは反対する」
奏「私も」
梅「え、ええ……!? え、で、でも、あ、お、お付き合いとか、そ、そういうんじゃなくて……死んじゃったひとを、お葬式の、ために、きれいにしてあげる、ステキなお仕事もしてて」
奏「エンバーミングは大事で大切なお仕事だと思うわよ? おくりびとよね。でも……」
涼「アーネストの場合は、自分の仕事も下にみてたからなあ。『スプレーでシュッと一吹き』だぜ?」
奏「そもそもの話、この映画のほとんどの問題は彼が優柔不断でさえなければ起きなかったのよね」
涼「な。小梅。優しさってのはとても大事なことだとアタシも思う。でも、それと優柔不断とは間違えたらダメだからな。本当に」
梅「ええ、え、ええっと……な、何のお話してるのか、わ、わかんなくなってきた……」
梅「でも、えっと、でも、ね……? アーネストさん、が、最後の最後に、とても、すごく、大事なことを決めるよね……?」
涼「ああ。そうだな。確かに」
奏「さすがにネタバレだから伏せるけど」
梅「うん。でも、あの、決断、って、優しい……んじゃなくて、優柔不断だから、決められたことなのかな……とも、思うんだ……」
奏「なるほど。そうかも知れないわね。自分の優柔不断で散々な目にあい続けて、自分の弱さを知り尽くしたからこそ、選べた『逃亡』があの決断だった。そうとも言える気がするわね」
梅「そ、それでね……? あの、ちょっと、お話が飛んじゃうんだけど……この映画の、不老不死っていうテーマで……改めて、なんで、死ぬのって怖いのかなって考えたことがあって……。
考えると、少し、不思議な気分になるんだ……死んでも直ぐにいなくなるわけじゃないのに。死んだらどうなるかって、死んだ後のあととか、私も、みんなもわからないのに、なんでそんなに怖がるんだろう。それを不思議に思っちゃうと、ホラー映画みてても、なんだかどんどん、不思議な気分になって……」
涼「そうだね。ほとんどのホラー映画は、死ぬことから逃げる話とも言えるよな。死ぬことが怖くないと成り立たない」
梅「うん。だから、なんでだろ……って。それでね。たぶんだけど……なんで死ぬのが怖いかっていうと、みんな、忘れられるのが怖いんじゃないかな、って、思うの……」
涼「ああ」
奏「そっか……そうね。そうかも知れないわね」
梅「忘れられるのが怖くて、いなかったことになっちゃうのが怖いから、歳をとるのが怖いし……ライバルに、嫌がらせをしてでも、自分のことを忘れさせないようにしたくなって……幽霊さんとかが、誰かを驚かしたり、呪っちゃったりしちゃう、のも、もしかすると、そんな理由があるのかもって……」
涼「かも知れないな。みんながみんなそうじゃないかも知れないけどさ。『あの子』も寂しがり屋だっていってたっけ?」
奏(あら。今、マイクがノイズを拾ったわね)
梅「私、は、あのことか、みんながみえるから、そこにいるのがわかってるから、もしかすると、ね? もしかしたら……私は、死ぬのは怖くないかもしれない。けど……けど、涼さんや奏さんや、みんなや、みんなと、お話できなくなって、そのせいでいつか忘れられるって想像したら、すごく怖い気分になって……死ぬのは怖くないかもしれないけど、忘れられちゃうのは、私がいたんだよってことが、わからなくなっちゃうのは、きっとすごく怖いなって」
涼「うん」
梅「だから、この映画の、最後の、教会のシーンで、神父さん? が、言ってくれたことに、なんだか答え合わせしてもらった気分になったの……」
奏「……そうね。『永遠に若く生き続ける秘訣』ね。この作品そのもののテーマかも知れない」
梅「うん。だから、それが、私が、ステージに立ちたい、歌を歌いたいって思う理由……なんだろうな。きっとって、思ったの。『私はここにいるよ』『みんなもみえてるよ』って、みんなに言いたいって」
涼「そっか。そうだな。ライブは自分を全部ぶつけなきゃダメだしね。『アタシはここにいるぞ!』って。あー! なんか歌いたくなってきたな!」
奏「私も、明日のグラビア撮影が楽しみになってきたわ。楽しみじゃないお仕事なんて、ないけど、ね」
涼「いいね。写真にも残るから一石二鳥かもな。グラビア撮影かー、正直苦手だけど、もうちょっとそういう仕事持ってきてくれって頼んでみようかって思えてきたよ」
奏「プロデューサー、今の、ちゃんと聞いてた?」
梅「きいてた?」
涼「即座に言質を取ろうとしないでくれ」
梅「ハイ。と、ということでニュー・アイドル・シネマ・パラダイスも……そろそろ、閉幕のお時間です……お足元にお気を付けて、お帰り、ください、ね」
涼「で、どうだった小梅? 誕生日おめでとう月間は?」
梅「楽しかった……た、楽しかった……!」
奏「そうね。ホラー映画ならではっていう楽しみ方も色々と堪能させて貰えた気がするし、来年も楽しみね」
涼「お!」
梅「わ!」
涼「言ったな奏。聞いたぞ? 3月はホラー映画特集で定例化か?」
奏「ハイハイ。二言はないわよ。それでは最後は、小梅が『永遠に美しく…』でいちばん好きな台詞でお別れです」
梅「『車の場所、おぼえてる?』
……ば、ばいばーい」
デレマスにはまって8年程経過した今になって初めてライブ(大阪公演Day2)に参加したんだよ日記。
読んでタイトルの如く、たいへんドライブ感に溢れる日記です。
初物に対してそわそわするおっさんの心理を順になぞるにせよ、飛ばしてライブの模様を確認するにせよ、心してどうぞ。
色々準備。
もしくは能書や出発前の準備。
あるいは「ご用意できませんでした」を一度も経験してないのはアカンのちゃうかと思ったみたいな話。
・0から1へ移行するのには莫大なエネルギーが必要らしい。
何の話かというと、今回の大阪公演が私にとって初めてのシンデレラガールズのライブへの参戦であって、ペンライトを振り回す類いのコンサートへの初参加だったて事で。七年だか八年だかジャンルに所属しながらなんで今さら「初めて」なことを経験するに至ったかその理由から書いておく。
・私にとっての「オタク」て定義は、生活よりも好きなモノを優先してしまう人々のことである。
で。私はオタクを自負しているので好きなモノには正直かつ誠実でありたいと思っている。
で。あくまで私個人の話なんだけど。デレのライブ終了の度に、TLを賑わせるレポートやセットリストに「羨ましい」「なんでおれはその場にいないんだろう」と感じた感想をそのままいちいちついったにこぼすのは誠実なことなんだろうか。
自己欺瞞じゃないのかしら。
何が。
何がというと。こう。
「羨ましがるんならせめて一般抽選くらい申し込んでおけば?」と思うんよね。
トラプリのナマトラパル。森久保が小梅ちゃんの代わりに叫んだらしい「へいきちゃんとみえるからー!」、或いは演者さん同士のふれあい、現場で初披露された楽曲、当日発表のサプライズ。等々。
羨ましいと感じた数はそのまま後悔の数である。
なんで私はその場にいなかったのか。せめてLVとか手段は色々あったろうに。
浅薄な後悔である。なぜなら私はそのライブへの参加申し込みをしてないからである。
羨ましいと思う対象へ、面白いと思うモノへしっかりコストを支払う。
それこそが好きな対象への敬意なのでは? オタクとしての矜持なのでは?
それをせずに羨ましいアピールって何に対するアピールだ?
せめて「ご用意できせんでした」を体験しとくべきなのでは?
それでもって初めて羨ましがれる立場になれるのでは?
ということで大阪公演の両日に申し込んだら、二日目のいわゆる千秋楽をご用意頂きました。ワオ。
・まあ好きなモノへの敬意とかそういうお話とは別に、今の今まで「やったことのないことはやってみれ」精神で生きてきたのに未だペンライトを振るタイプのライブを「なんかこう……わかんないし、空気感とか……」みたいに尻込みしたまんまなのもそれはそれでどうなんとかあったんだけども。いやおっちゃんもな、若い頃はな、一端の音楽通気取ってハコモノのライブには茂く足を運んでたんやけどな……。
・まとめりゃ自意識の肥大してる人間は何かとめんどくさいよなみたいな話。
・参加が決まったからには準備をせねばなるまい。
どこからが準備なのかわからんところがあるけど、最初にやったのは同行者の確保。二枚ご用意頂いたので。
最初は身内に声をかけたけども諸々の事情で難しいと断られ、結果的にはデレステ稼働からまもなく「音ゲーだから」という理由だけで遊んで嵐のように全曲フルコンして嵐のように去ってったけども「なんか推しのイベントがあるらしいね」と数年越しに戻ってきた直後に総選挙9位を射止めたナターリア担当の音ゲー星人@たぶん今がいちばんデレステの楽しい時期な知人に渡りが付いた。
氏は去年あたりから積極的にライブ参加しており、先導役としてもきっと頼もしかろう。
次にやった準備は、ペンライトの購入。
アイマス関連のライブはそのへんのレギュレーションがちょっと厳しいらしいよとか聞いてたけれども、ちょっと検索したらむしろその厳しいレギュレーションに当て込んだと噂される半ば専用商品的なペンライトが見付かった。MIX Panla PRO。ここでいうPROとはプロデューサーのプロだと噂は語る。まあ噂だけど。資本主義経済の輪転をみた思いである。
そのついでに、ペンライトとサイリウムの違いを知る。サイリウムてのは触媒と薬剤の封入された……云々。おまけで「サイリウム」は社号であって商標名や名詞でもないらしく、ついでに倒産済みだとか。キャタピラと無限軌道の違いみたいな話は色んなところに転がっているのだな。
到着次第すこしいじってみれば、LEDを活かした色彩切り替え。メモリー機能。誤動作防止機能に、ムダななく安全設計の電池ケース部などなど。完成度の高さに感心する。実地試験を経て洗練された機能なのであろう。たのもしい。男子は棒状のモノを握るとそれだけで心高ぶるところがある。
あと動画でも予習してみた。これ名作動画だと思う。
www.nicovideo.jp
その次にやった準備は、予習用のプレイリスト制作。
まあ予習ったって日頃から音ゲーでぺしぺし叩きつつ永久記憶に結びつけてはいるけども……でもまあイベントも適度にサボりがちだけれども。最新最近の曲ともなると自信がないのも事実だけども。
まあ特に準備せず現場参戦してサプライズに身を任せるって方法もあるけどさ。なにせ初めてのことなんだから準備まで含めて楽しみたいじゃないですか。
要するに形から入るタイプのオタなのよね。
予習用セットリスト制作てのは要するに、京セラドームがどんな楽曲で我らを迎え撃つべく陣を敷いているかの予想てことである。
なんか妙な喩えしてるぞこのひと。
方法としては、色々考えられたけども参加される演者全員の名前を「ふじわらはじめ(https://fujiwarahaji.me/)」さんの楽曲検索にぶっこんでリストアップ。
たいへんありがたいデータベースで。このご恩は総選挙の投票券で報いたいと思います。
そこからひとまず、参加演者さんの関連楽曲を全部抜き出して……とかいう作業をしてたら4時間経っても終わらず……ああ。そりゃそうだ。演者は32人いて、デレマス全員の声優さんは80人ちょいだ。そっから五人ユニットの参加曲とか選んでいったらもうぶっちゃけ全曲リストに入るじゃねえか……。
自分がバカであることを再確認するのは何度目であってもさびしい。
四時間のムダの後に、クサい感じの曲のみのリストアップに切り替える。
つまり総当たり式からガチの予想に切り替えるわけだけども。とはいえテーマに大きく「Rock」と掲げているので絞りやすいはず。先行した7thライブでもだいぶコンセプチュアルなセトリだったしね。で。それら幕張・名古屋の公演を参照して傾向をみるに……ソロ曲控えめ、重複曲はかなりの例外……CDリリースの近い曲はクサいし、CD未リリースでもバベルあたりは……おいおいあすらんの双翼ってライブ未演奏かよコイツはカタいな……ユニットで揃うのはTPとPCSと……ん? カバー曲は除外していいよなと思ってたけども最近の曲はCDに封入されてる……特に西川貴教曲はほぼCDカットされてるうえに演者が全員大阪参加……今年はコラボイヤーとか言ってたしなー……。
楽しい。
最終的にはああこれ生演奏で聴きたいああこの独唱ドームで聴きてえああこのユニット曲はどっちかといえばこっちが聴きたい等ただの欲望にまみれただけのリストがアップされていく。
その次にやったのは、名刺の準備である。
デレに限らず、アイマスのライブの古来から伝わる風習であるらしい名刺交換。
少しばかり憧れがある。
アイドルマスターというジャンルがその他のジャンルと一線画してるところはこういう参加性だよなとか思う。ファンではなく、プロデューサーであり、推しではなく、担当なのだ。
ということで少しばかり頑張ってドットなど書き下ろすつもりだったけども直前にリリースされた「グランブルーファンタジーヴァーサス」が思いのほか楽しくて……正直、どこか「いうてアークゲーだしなあ(アークシステムワークスが制作する格闘ゲームはいまいち趣味にあわないことが多いんだよなあくらいの意味)」とか思ってたんだけど、思ってた以上に、初心者もガチで囲い込むでェという圧がシステム面から感じられる調整でさ。
シャルロッテことぷにあなに注ぎ込んでしまった。余暇を。
結果としては名刺を諦めるかコミケ用のサークルカットを流用するかの二択を迫られて後者を選択。
大急ぎででっちあげて、夜を通してプリンターを稼働させて。
睡眠不足で始発の大阪行きに乗り込んで。
一番大事な準備であるところの体調を整えるてのをやり損ねた。
当日日記。
お金の節約のため鈍行列車である。
乗り換え二回の片道三時間ほど? 眠るつもりが眠れなくていいやもう電車の中で眠ればいいやと電車に乗るも結局眠れないとかもう何度繰り返したんだろういい加減学習した方がいいと思うと後悔しながらでもJRは貨物扱いもせずおれを運んでくれる。
そんで。ぼんやりと感じつつ、寝不足で自制を欠いた脳みそでほんとに独り言として漏らしたかも知れない事柄として。
「……実感わかねえなー」
てのがあった。
これからね。
ライブにいくんだよ。
五〇〇〇〇人が収容される大阪のドームでね。
小梅ちゃんとか、涼さんとか、たくさんのアイドルのお歌を聴きに行くんだよ。
実感わかねえな。
まあそれもそうかも知らん。なんせ初体験な出来事だし。
基本的にわたくしは想像力に欠如した人間なので、初めての体験にはあまり想像が及ばない。期待に胸を膨らませようにも何に期待すべきかがいまいちわからない。
私は何を見に京セラドームまで行くんだろ。
さりとて不安があるでもない。それはもうきっと楽しいことが起こるに違いない。間違いなく面白いものがみられるに違いない。だから不安はとくにない。
数字で表せば10を満杯として期待2に不安ゼロみたいな。
実感わかないな。でもまあ。
楽しいといいね。面白いといいね。何かをみられればいいね。
・大阪。
同行者さんと待ち合わせついでにアイマスPフェスタ(https://imaspfesta.net/)に参加してみようと話し合っていた。
アイマスPフェスタてのは有志が「ウチのアイドルをよろしくおねがいします!」とフライヤーを配るんでよかったらおいでくださいという合同企画だそうな。
名刺交換のくだりでも言ったけど、こういう参加性こそアイマスがアイマスたり得ている由縁だよな。せっかくの機会と表現するに相応しかろう。と。
待ち合わせ場所に選んだんだけども地下改札降りて直ぐに相当な行列が確認されてて。ついでに開場30分前倒しで整理券配布という盛況ぶり。
ちょっと迷うとこだけども。
整理券は30分刻み。会場は全員入れ替え制。並んだとしても小一時間はかかるまいか。
ライブの会場は15時からだし、余裕もいいとこだろう。
よし並ぶか。
結論から言えば並んで大正解だった。
感嘆すべきは列整理のオペレーションだろう。
地下鉄入口と共用の、4人並べば一杯になりそげな通路は二度三度四度と曲がりくねり、階段を経由した先は最大で10人程度しか乗れないエレベーターが三つ並んでいる。恐るべきことに同ビル屋上では別イベント(結婚披露宴!)併設であるらしく、その客と混同される。
正直、卒倒しそうな悪条件だと思う。
けども列形成も列整理も見事なお手前でスムーズに進行した。これは並ぶプロデューサー諸氏の行儀が良かったのももちろんあるだろうけど。
等とオペレーションに感心した後に訪れたのは怒濤のお渡し会である。
会場は入場から一方通行。引き返し禁止の完全入れ替え制。
だから流れ作業的に順々に販促物をもらってはいお疲れ様でしたー程度のことなのかなと思ってたのだけど。内容をいえば実際その通りで。ただし熱量が段違いだった。
さほど大きくはない会議室を壁伝いぐるりとまわる。
それだけの合間に巻き起こった「よろしくおねがいします!」「よろしくおねがいしまーす!」「ウチの担当をおねがいします!」「よろしくおねがいします!」の旋風。
差し出される各々の工夫を凝らした、フライヤー、ショッパー、ポケットティッシュ、ミネラルウォーター、あめ玉、小冊子、あるいは昨日の同イベントで既に頒布終了したので気持ちだけ等……頒布物ひたすら受け取るだけのひとまわりなのに完全に翻弄された。
なんというか、あてられた。
正味、10分もかかんなかったんじゃないか。
ほんとにぐるりとまわって頒布物をもらうだけだったので。
だけどもとにかく、なんかもう頒布する側もテンションがちょっとおかしくなってなんか面白くなってたんじゃないのかアレ。
とにかくとにかく翻弄されるひとときで、もう、わはは、わははははと笑うしかない状況で、ひたすらニコニコさせられた。
いやちょっと、いい体験だったわ。
・それはそれとして雨である。
大阪は難波にはペンライト専門店があるらしい。店名は『でらなんなん』
観光気分でそちらに寄れば、雑居ビルの隙間を通り抜けていく感じの入り口に、傘を差した人々のそれなりの行列。そんな境遇でも率先して「じゃあ並びますか!」と言ってくれる同行者さんに感謝したい。
雑居ビルのワンフロアの長辺の9分目のところに縦に線をひいて、大きな方を倉庫、残りを通路兼店舗にした構えで、壁面片方にペンライトを揃えて反対側にはアイドルのいわゆる生写真が並ぶ。ペンライト専門店とはいえ畑の違いを感じるところだけど、店内にはデレマスの曲が流れ、しかもたぶん今日の演者でちゃんと揃えているよう感じられた。入り口にはプロデューサーの名刺交換用のボードも掲げられ、しっかり盛り上げに参加してくれるよう意思を感じた。
時間にはまだ少々余裕がある感じの昼前。昼食の摂取は不可避。同行者さん曰く、京セラドーム付近にいいカレー屋があるんだけど並ぶかも知れないしそうとなれば売り切れもあり得るラインで、でもなんとなくカレーという気分だし、ああそういえばそこそこ歩くことにはなるけど進路方向に北海道発祥の有名スープカレー店であるとこのマジックスパイスがあるんでそちらにいきますかと提案を頂き、これを了解。
ご賢察通り、案内の10割を彼に依存している。感謝したい。
薬膳、薬膳と呟きつつ相当な辛さのスープカレーをすすりつつ、『わかってほしいんだけどよォ……表現ってのの根本はなあ……自己救済でなあ……つまりアレだよ。十人一辺通りの救済じゃダメなわけよ……個人個人にあわせた、百万人の為ではない、ただ一人にだけ刺さるような……その点において小梅ちゃんはな? 生と死とのあわいにたゆたい、自ら闇を抱えたまま明るいところに立つべく歩む『暗くても、大丈夫なんだよって、みんなに、伝えたいから』と決意した小梅ちゃんにおける救済ってのはな……? こう……な? わかって欲しいんだけどよォ……』等延々クダを撒く。
同行者さんには感謝しかない。
・そのまま歩いて京セラドームにまで向かいまして。
商都らしい運河跡を思わせるよな河川の向こう岸に全天候型の屋根がみえた。
ははあ。アレがバッファローズの本丸ですか(※知ったかぶり)
球場に繁く脚を運ぶ類いの趣味を持ち合わせてないのであんまわかんないとこだけど、こういう建築物の密集地にいきなりポンとあるのは珍しい類いなのではあるまいか。
ドームってでっかいなービッグサイトとどっちがでかいー? だの
なんか思ってたよりマスクしてるひと少ないねーだの、
同人誌即売会で不思議と目にするレプリカユニフォームもこういう場だと相応しいねだとか、そういえば羽衣小町モデルの傘とか販売されてなかったっけだのと思いついたまんまの適当な感想をだだ漏らしつつ。
余裕があれば球場周りを一回りしてみたいところだけど、入場時刻はもう過ぎているし雨傘で人口密度も数割増しだしで到着そのままの脚で入場する。
・コンクリ打ちっぱなしにカーブを描く通路。今日はあんま実入りのなさげなフードコート。客席入り口に控えた案内嬢さんに席位置を案内してもらえば、ホームラン性の打球がよく飛んできそげなセンターやや右より座席。ステージに目を向けた視界のど真ん中を寸断するポールがなんとも凄惨ではあるが、その根元の機材席を丸々覗ける面白い位置取りではある。
座席の傾斜はなかなか急で危なっかしさも感じるけれど、それだけグラウンドに近いとも取れるし前の席の後頭部に視界を遮られずに済む。ただやっぱこの足場で立ちっぱで足踏みとかペンライトぶんぶんするのって怖くないスかそうでもないスか。
マウンドの上空に霧状の空気がもやってる。まあ雨だし人いきれもあるだろうなかに透ける客席はまだまばら。しかし既にそこかしこでウルトラオレンジの火の手があがっている。
空気感。
さて。未だに。
実感が湧かない。どっかふわふわしている。
私は何を観に来たんだろうか。
けれども、なんかこう。
そこかしこに揺れるペンライトの明かりをみると妙な嬉しさがこみ上げてくるよなと気付けば。
アイドルとはファンが存在するからこそ成り立つ面がある。
それはアイドルマスターというコンテンツでも変わりは無く……まあデレマスというジャンル内ではときたまその存在はマスクされたりもするけども。ともかく。
その存在はあそこで揺れる、もしくはこの手元にあるペンライトという存在に象徴される。
そうだね。
なんかこう。まだ言葉には出来ないけれどもコレを観に私はここにきたのかも知れん。あるいは。
等と思いながら予行演習と称して人生で初のUOを折る。
・アイマスブランドの各種宣伝動画の合間合間にデレマス曲が流れる。
それを肴に同行者さんとこの曲が聴きたい、あの曲が聴きたい、この曲の譜面が天才なんですよね、このユニット曲はあるだろうかこの曲をやってくれなければおれはhatenaの匿名ダイアリーにお気持ち表明をするつもりだなとと話しつつ。
その場内放送にさえコールが入り、ペンライトが揺れ、あるいはUOが焚かれ始める。
一体感という意味では既に相当なものだ。スゲーな、場を暖める為の前説とか完全に不要だわ。プロデューサーの参加感さすがだわと。
事実に基づいて記憶を追えば、場内放送が終わって、各種京産の紹介とそれをP一同で読み上げる儀式(儀式)にちひろさんの諸注意があったはずなんだけど。
場内放送の「イリュージョニスタ!」の時点でもはや遠慮無く燃えて染まるUOの発色。五〇〇〇〇人近くがそれぞれ一本百円だからこの瞬間でも五百万円近い空間的価値が……とか野暮な思考は置いといて。それを初体験した人間にとっては最高潮に近く感じる声量のコールが溢れて、記憶にある中だともうそこから直に幕があがりライブがスタートした気がする。
本番。
流れる「ガールズインザフロンティア」のイントロ。ああおれにとってこのイントロはこの瞬間に、この瞬間を意味する形に、もうずっと元には戻らない変質をしたのだと直感する。
「Unlock Starbeat」に、テーマ曲を頭やトリでなくこの位置に持ってくるのかと感心する。
演じてくれるに違いない。そうと確信してはいたものの心構えのまだ出来上がってない冒頭のこのタイミングで歌われる「Lunatic Show」に理性が追いつかず振り回したペンライトに同行者さんから(ペンラは胸の位置で振ろうね)と手振りで諫めて貰う(感謝しかない)。小梅ちゃんと輝子の中の人達が肩を組んだのは幻だったろうか。ほんとにみたんだろうか。なんか「近い! 近い!!」とか絶叫してたような記憶もあるが。
「義勇忍侠花吹雪」の、ロックという言葉の持つかっこよさとは解き放たれた雰囲気でのびのびとかっこつける三人がかっこよくて、ああしかしこのギターソロもっとちゃんと聴かせろ歓声はいいからソロ終わってからにしてくんねえかなとかワガママをいいつつ歓声をあげたり。
新曲! 新曲に違いないわ! とは思えどもMCまで川島さんと巴お嬢の曲だと気付けず惜しいことをしすぎた「Gaze and Gaze」と、逆にその次の「生存本能ヴァルキュリア」はちとちよとが歌っていることに気が付いて涙腺に亀裂を感じつつも、ああ、それでもダメ絶対音感不足と演者さんのご尊顔をあまり覚えてないのとで歌い分けを追い切れず誰がどの歌詞を歌い上げてるかああいちいちメモしたいという衝動に駆られつつ「Trust me」の火を付けろ発火て歌詞と同時に壇上へ吹き上がる炎と同時に焚かれるUOに、ロックとパンクの境目ってどこだろうなとか思ったり。
正直なところを言えば曲についての細かい感想は覚えてない。
いっぱいいっぱいだったからである。記憶を大雑把にザッピングすると観客席の映像ばかりで、せっかくモニターに映されたステージの模様もほとんど覚えてない。
周囲から浮きすぎずかつ自分にとって心地よいペンライトの振り方だとか気にしてた気がする。しょうもない。経験値不足。
とはいえ、ペンライト文化っていいもんだなとこの時点で相当実感してた気がする。
曲やキャラクターのテーマカラーと揃えて演者にエールを送り、リズムに合わせて振り回し曲に乗って演者の声を受ける。
一方通行だけども双方向でもある。
ここにいるぞ。応援してるぞ。聞こえてるぞという五〇〇〇〇人分のかたまり。
そうだな。これを観に来たんじゃないかという気がする。
私個人の体験でいえば、ヴァルキュリアが流れたときは属性色よりも「ここは白だ。絶対に。白だ」と確信しMIX Penla PROをカチカチ言わせたり。同行者さんからメモリー機能使えば信号機は即出せますよとご教示頂いたけども、この、なんか、曲や演者ごとに合いそうな色を探す行為がちょっと楽しくてさ。
それでも。何を観に来たかはふわふわしたままではあったけど、それでも「何か」はみたのだ。
それはもうおよそ「何か」としか表現出来ない類いのもののようにさえ感じる。
それの下地は新田美波こと洲崎綾の歌う「Voyage」で整えられていたようにも感じる。前に前にと主張するロックナンバーが続いた後の、とにかくしっとりとたゆたう、このやたら優しげなおねえさんは誰だろう……いや知ってるけど……的気分に浸れる空間。ドームを埋める観客の前で、ソロで、しかもアコースティックで歌うとかいうガチ歌唱力の求められるシーンに純度の高い敬服の念を覚える。
当人のイメージカラーも、属性色も、海をモチーフとした歌も、ゆったりとしたアレンジも全て青いペンライトを揺らすのに相応しい曲だった。
そこから。
ソロアレンジだからこそ浸透し、深まる曲間の沈黙に、イントロの流れる前から、ステージに近い距離から順にペンライトが赤く染まっていく。その理由は、彼女のトレードマークである赤いリボンがみえたからだと後に教えて貰えた。
牧野由依の、佐久間まゆの「エヴリデイドリーム」だ。
引き続き、ソロ曲を、ソロ歌唱で、生楽器によるソロアレンジで。しかもバラードアレンジが強く利いている。
鍵盤の叩く正確な音に声で寄り添い、さらに一歩前へ、スローテンポに溜められるだけ溜めて。
愛しい貴方。放さない。ずっと。愛してる。大好きだよ。それでいいの。何もしなくても。
すごいな。
この女性は、たぶん、五〇〇〇〇人を前にしながら、きっと、たった一人の為に歌っている。それでなければこの情感が、いっそ緊張感さえ漲るこの息苦しさが説明できるだろうか。
無論その一人とはプロデューサーのことだ。佐久間まゆという個性を知っているからだろう、そう想像させられる。
五〇〇〇〇人の揺らすペンライトはある程度は統率されているけれども、個人の自由に大きく委ねられる。
それなのに。
真っ赤な色ばかりで、きっと一つの赤色で染まっていたのはソロ曲だからというだけではないんじゃなかろうか。
彼女の為に、とにかく赤い色を、同じ赤でも、いちばん赤い色を。皆が彼女の為にひたすらただ最も赤い色をと探した結果じゃないのか。
たった一人の為へと込められた歌、一人の為へと一色に染められた空間。
その世界観がメドレーとして延長される。
マジか。
続いた「マイスイートハネムーン」はポサノバアレンジだった。軽快といえば軽快な曲調にやっと呼吸が出来るような趣もあったけれど、歌詞の内容がそれどころではない。何せ一方的な懸想で歌われたエヴリデイドリームに比べて「ハネムーン」だ。もう、持って行かれる。連れて行かれる。
言葉はもう必要ないわ。目隠しして夜を待つの。いつまでも。
一人の為に歌われた歌で一色に染められた世界観。そんな甘さに誰が抵抗できるだろう。いや、赤いペンライトを振っている時点でもう、もはや。
鍵を掛けて愛を閉じ込めましょう。二人描く夢は一つ。募る思いつかまえて。
教えてハーフムーン。愛はどうして形を変えていくのでしょう。
注がれる情感に、愛に、ただ酔わされるような。歌詞は情念と緊張感を増していく。
これが未来。これが運命。逃げられない結びつき。ですよね?
ほとんどモノローグのような歌唱が、その情感が極点に達した瞬間。歌がやんで、演奏がとまった。
「何か」を観たのはその瞬間だ。それはもう「何か」としか表現が出来ない類いの。
曲の静止とともに、五〇〇〇〇人分のペンライトも静止した。
誰も何も音をたてず、きっと、完全な静止が。
溜めて、溜められている彼女の感情と、それを支えて導く演奏との沈黙の、その破れる瞬間を待ち受け止める為か。この歌の邪魔せず、一体でいたいという感情か。それともただ呑まれただけだったろうか。とにかく、本当に、ただそれだけの事実として、きっとまちがいなく、五〇〇〇〇人がペンライトを赤く灯したまま静止させた瞬間があった。
あったんだよ。
それを「何か」という以外に何と表現出来るだろう。
とにかく、だから。みたんだよ。その瞬間、何かを。
MCがはさまってなんというか命拾いしたような心地にもなってた。
そんだけ世界観に呑まれていて、そこから半ば開放されたような反動でか、そういえば外、雨降ってるんだなとか思い出した。もしかするとあの沈黙の瞬間、ひとによっては雨音を聞いたかも知れない。それはさすがになかろうか。
予習の際、オリジナルのメンバーが揃っている曲んなかでこれ聴きたいけど難しいかもな聴けたら嬉しいな曲として覚えていた「夏恋 -NATSU KOI-」がほんと嬉しかった。しかも、おーおおおーおおおーのコーラスをコールでやりてえなとか思ってたらそのまんまのことが起きてコレも嬉しい(バイブス記念日)。
難しいかもなとか思ってた理由は冬なのに夏恋だからである。同じ理由で Spring Screaming も難しいかもなー Frost と二択ってのも有り得るしなあとか思ってたら後にそれ一日目でどっちもやりましたよと教えられてやっぱ両日か。両日参加なのかと歯噛む。
「Sun! High! Gold!」雪美! 雪美ちゃん!! ところでりあむ仕草完璧だなりあむ! そうねこういうのがいわゆるライブ向き楽曲ね! 嬉しいけどところでおれ同じ総選挙曲なら夢をのぞいたらも好きでさ! と言ったらそれ一日目でやりましたよとか言われて歯噛噛噛噛。
「Palette」は生演奏で聴けていちばん嬉しい歌だった。PCS楽曲でいちばん生演奏で聴きたい曲だよなと予習時から期待してたのでなんせチャールストンだからなチャールストン(雰囲気だけで言っている)。
「Twilight Sky」のHeartbeatバージョンはまさかの選曲で。MCで「実はCDにね……」と目をそらし気味に語ってたけど知ってるぞでれぱ音頭だろう。ラジオ曲はまあないよねーと予習から外しただけにいいサプライズだったけど、まさか、だりみく二人であの二色のペンライトで染められたトワスカがみれるとか、同じ会場のどっかにみく担当の知人がいるはずなんだけど彼の心臓は保っただろうかと案じつつ。
「双翼の独奏歌」はなんとライブ初披露ですよ。予習時にこれまでのライブで未演奏と知って驚いたけども、まあこれやってくれないと匿名ダイアリーにお気持ち表明するレベルだったけど。ステージの端っこと端っこで歌う様がいわゆる解釈一致で楽しかったのと、MCでの「言っていいですか! (青木志貴・内田真礼の二人でいると)なんかあのへんの人達が楽屋でスゴく煽ってくるんですよ!」からの「今度は、二人でお揃いのアクセサリーとか……したいなって」「うんやろう」だとか。それを煽る高森奈津美・青木瑠璃子もイヤリング揃えてたりとか。ルナショで肩組み合った二人とか。ちとちよ二人の涙とか、フォーリンシーサイドの二人の涙とか。さすが千秋楽ともなればみなさんテンションがおかしくなってませんかというか結婚しろ案件というか。
「アンデッド・ダンスロック」に感じたのはなんかこう、やすらぎとか表現できそげな感情だったのはなんだったんだろうね。安心感とも違う、すごいひたひたと満たされてく感じの充足。あるべきものがあるべきかたちであるべきところへおさまった、完全な円。こう、なんか、そんな感じの。
言葉にすれば「ああおれはここに骨を埋めるんだ。大阪とか、京セラドームとか、なんかそういう形のあるところじゃなくて。ここに。アンデッドダンスロックという曲で示された、りょううめという関係性の接点に、接続部に、そこに、ここに、おれの骨を埋めるんだ……」みたいななんかそんな。
聴く側もいい具合に暖まってたかギターソロ等の部分部分ちゃんと聴けてちょうよかった。
「毒茸伝説」「∀NSWER」と、前半部から後半部まで輝子というか松田颯水というかの七面六腑っぷりがスゴいしいちいちパフォーマンスも優れてて優れている。果てしなく今さら言うことでもあるめえが、輝子担当は輝子を誇るべきだと思うし松田颯水がなかのひとを担当してくれている事実に感謝すべきだと思う。そりゃあもう今さら言うことでもなかろうけど。
「Trinity Field」すごく正直に言えば Trancing Pulse のが聴きたかったけれどもしかし、しかしだ。福原綾香の難しい音域にも一切の躊躇いなく挙げられる声、 松井恵理子のとにかく一歩でも前へと張り上げられる声、渕上舞の差し色とでも表現したくなる鮮やかに存在を主張する声。もう刺される覚悟でクソ正直なことをいうとこの三人の単独ライブがほしい。
ここですごくどうでもいい私個人の個人的なアレをいうと、ちょっとだけ死にそうになっていた。物理的に。なんでかというと水分補給を怠っていたからである。
二月半ばとはいえ、降雨の湿度と、それにより閉じられた天井と、五〇〇〇〇人の熱量とでたぶん湿度がヤバくなってたんだと思う。汗がほんとに蒸発しない。
体力面に自信のなくなったおっさんだからそれはまあ事前に飲み水は準備してたのだ。お茶と水をそれぞれ。それなのに、なんでだかわかんないんだけどそれが二本とも消えちゃってんのよねー……私の身の安全のみならず、こんな足場の不自由な場所でペットボトル転がして誰かが踏んづけでもしたらと怖い想像も涌くし、MCの合間合間にそれこそペンライトの明かりを頼りに足下だの荷物だのを散々探し尽くしたんだけど……。
元より潤沢とはいえない体力、睡眠不足、水分不足。残りは何曲あるのだろう。生きて帰れるかしら……とかいうのはまあオタクにありがちな冗談だけども。今まで諸々体験した体力的限界に照らしてもまだ余力があるのは確かだけど。
残りの曲はいつだって多ければ多いほどいい。とにかく人様に迷惑かけるようなこともしたくない。だけども今ポカリ飲むとスゲエ美味えんじゃないかな。
あのピアノのイントロがきたのはそんなタイミングだった。
察しのいい誰かさんの(……マジか)という呟きはきっと我知らず漏らしたものだろう。おれも多分まったく同じ事を口走ってたと思うし、あの静けさの中でのざわめきの9割くらいはその(マジか)という呟きだったんじゃないか。
予習てのはしておくモンだ。予習リストを作ったときの思考で、カバー曲は……最近はCDにカップリングされてるし、ステに実装されてるのはアリ寄りかな……逆に言えばステ未実装な、jewelry曲はナシとして……。
そんな間違いがあったからこその衝撃ではあったけど、しかしそれを犯してたから確信には至れず、MIX Penla をカチカチと鳴らし赤い色を探しながら、こんなときも働く自意識が、いやここまで驚いといてハイやっぱ違いましたじゃ周囲から浮くし恥ずかしいし……と泳いでいた眼が、既に、とっくに、次に来るその曲を確信して、両手に持ったペンライトを交差させて高く掲げているPをみつける。
真っ赤な「X」の字だ。
あー。マジかー。
もう余人にはきっとわからない、万感の思いとしか表現出来なさそげな星輝子の、松田颯水の絶叫が響く。
「紅だァーーーーーーーーーーーー!!」
あーもーいいやもう死んでも。
もったいない話だけどももう記憶がない。ほんとにない。とにかく今日イチで腕を、ペンライトを振り回した感触しかないし、ありったけを折り尽くされただろうウルトラオレンジの焼き付くような灯りと、あとなんか錯覚かもしれんけど色んな場所で色んなものが壊れる音がちょいちょい聞こえた気とかがするけどもうしょうがねえよもう。ほんとおぼえてない。
ラストに最大のピークを見事に持ってこられた大トリに「純情Midnight伝説」を用意するセトリがほんとに心憎い。職人技の一種だと思う。ロックってやっぱ基本的にトガってて攻撃的な曲で、それが放出され尽くした最後にこのひたすら楽しいロカビリー。笑いながら泣ける。終わってほしくないとかいう未練を吹き払ってくれる。
演者のカーテンコール。
星希成奏の夢見りあむ仕草ほんま完璧でほんとに完璧だと思う。なまじ地頭がいいから帰って考えすぎて一周して考えなしな行動になってるあたりとか、素晴らしいディレクションであったなと。
東山奈央の「やっと大阪に帰ってこれた」とか「次にお会いするときは同い年かしら?」とかの川島さんを大事にしてくれっぷりとかさ。
松田颯水の「シンデレラガールズ達はたくさんいて、とがってるコもたくさんいて、Pの皆が『とがっててもいいんだよ』って言ってくれたから今日、紅を歌えました」て言葉はほんとおれがデレマスに求めていることそのものに言及してくれたし。
福原綾香の「沈黙さえ音楽になるんだなって」て言及には今思い出しても涙が出そうになる。
千菅春香が……正確なニュアンスは思い出せないけど「カッコよくてかわいくて、とにかく、前に進もうという意思がロックなのかな」みたいな……佐倉薫の涙とそれを励ますように揺れるペンライトとかだな……ああほんと。演者がそれぞれ全員の挨拶があったはずなのにほとんど覚えてない己の記憶力とキャパの低さが嘆かわしいところだけど。
個別の挨拶だけじゃなくて、演者さんの各パートの歌い分けや知識が足りなくて言及の出来ない演奏まで含めて書き残せない箇所や取りこぼしはとんでもない量があるだろうし、たぶんそれは円盤をみても取り返せないものであるようにも思う。
ライブってのは体験のモノであって、体験のモノとはそれが強烈であればあるほど感想はどこか均質になり、感想を述べようとしてももはや起きた出来事をそのまま言うしかなくなるんじゃなかろうか。
それはどこかもったいない事のようにも感じるけれど、私があの京セラドームでみた「何か」は、あの瞬間にしか存在せず、あの瞬間その場に居合わせた人々だけが触れられたものだろうから、きっとそれはそれでやたら貴重なものなのじゃあるまいか。
終わって。
アンコールで歌われる定番曲は、定番曲であるだけに聴き慣れている部分も多く、現実に帰らせてくれる作用もあるように思う。
帰りたくないけどさ。
順次退場のアナウンス。時間を確認すれば午後八時とかいう冗談にしか思えない針の位置(日付跨ぐ直前かなくらいの感覚だった)。見下ろせる機材席には、機材ブーススタッフに感謝を述べるP達。通路のコンクリートは一面結露していて、そこかしこに使用済みのケミカルライト捨て場であるとこのUO塚が散見された。
雨の降る中を一駅歩いて新幹線の通る駅まで移動。もしも今回の公演に何か注文を付けるという恥を許して貰えるならば千菅春香のソロがなかったのが悔やまれるけれど……この気持ちは私の中で風化して朽ちるまで誰にも何にも明かさずおこう……とか思ってたけどついったのトレンドに「One Life」てあがってて思わず笑ったりとか、あーそーいえばLove∞Destinyもなかったなーだとか。同行者さんの見送りを兼ねてラーメンを啜りつつ、思えば一方的に話してばかりでなんかこうもう少し私は話を聞いてくれるひとの存在に感謝すべきよなとか熱した後特有のテンションの落ち込みを経験しながら安宿に移動する。
ビジネス街と観光地と盛り場と住宅地との境目が薄い感じの独特な街をふらふら歩きつつ、もちろん頭では体験した出来事を反芻している。
終わった。楽しかった。生き延びられた。生きてるよな。走馬灯にしては賑やかだったしな。
そこで少し面白い経験をした。自己観察というか。
確か正常化バイアスとかいう名前の付いている作用じゃなかったか。
日頃の癖で、起きた物事を文字にして整理すべく試みてるけれどもそれがなかなか追いつかないようで……初のデレステライブである。そりゃ整理はしときたいけど……ええと……せめて一言でまとめようとして出てきた言葉が。
「期待してた以上だった。けど、想像してた以上じゃなかった。気がする」で。
何言ってんのコイツ。
今をしてみればそう思う。しかしそろそろと隠しようも無く疲労を感じていた頭でそのときコイツはそんなことを確かに考えていたのである。
宿にチェックインして。噂される新型コロナも怖くないわけでもないし(2月半ばはそんなテンションだった)と大衆浴場では汗だけを流して終えてカプセルホテルの妙に落ち着く狭くて近い天井を眺めながら思わず口を突いてでた。
「そんなわけあるかい」
想像してた以上じゃなかったっつって。そんなわけあるかい。じゃあお前は一人の女性の歌声とそれを支えた演奏が五〇〇〇〇人のペンライトを静止させたあの瞬間を、エルドリッチロアテラーの歌声から感じたのが安らぎだったことを、たった二人で歌われたオウムアウアを、楽曲でもMCでもバイプレイヤーとして立ち働いていた村中知を、東山奈央と花井美春の目配せを、とにかく諸々を予測できていたとでもいうのか。
そんなわけあるかい。
思えばそれは、脳みそが情報を整理しきれず、飽和しちゃったもんだから「ああ知ってる知ってる」みたいな態度を取らせることで平静を取り戻そうとした働きだったのではあるまいか。
それが証拠に、ついったにて有志が早速あげてくれたセトリを眺めながらライブの記憶を時系列順に思い出してなんとか情報の整理に目処が付いてきたらば今度は感情が追いつかなくなって、処理しきれない感情が涙腺から漏れてべそべそと泣いた。
「あったんだよ。みたんだよ。ほんとに。みたんだよおれは……何か、こう……何かを。ほんとなんだよ……何かとしかいえないけど、ほんとにみたんだよ……」とか誰に対してかわからん繰り言を漏らしつつ無性に泣けるままうつ伏せで寝た。
ええとししたおっさんにあんま許されない夜の過ごし方な気もするが、事実なので仕方ないし、あれだけ華やかで楽しかったライブの日記がこんな終わり方なのもどうかとも思うが、まあ仕方ない。仕方ないんだよ。
とにかく、何かをみたんだよ。何かを。
翌日は何も予定がなかったので同じく大阪参加された知人さんを呼び止めライブの感想戦の後に「ボイス総選挙のことは家に持って帰ってからゆっくり考えようかなって……」と仰ってるのに呑気に個人的には彼女に声が欲しい最近はあの勢力がヤバい前総選挙のスコアではこの娘がキてると話してはやっと事の重大さに気付いた気分になって「なんていうか……まあ、みんなが幸せな結果になると……なれば、いいのに、ね……」とかちょっと救いがたいテンションになったりして解散した後にコミケ用ディスプレイとして偶然かばんに入れっぱなしだった小梅ちゃんと一緒に『都心圏内で巡れる! 大阪心霊スポットツアー!』をひとりで企画して無性に炭水化物と塩っ気を食いたいという欲望の赴くままにマクドのポテトのLサイズ3つをレンタル電動チャリの前かごに乗っけてひたすら自転車漕いで回って後に帰りました。