バーナード嬢曰くの3巻のリアルタイム感想前半戦。

 感想と言うより反応。
 読んでる最中に思ったことを即メモ書きしていくただたんにやってみたかっただけの行為です。



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・表紙絵。
 でもね、ド嬢。それがなければ読書家にはなれないんだよ。
 ていうかそこは「ドグラマグラ」あげてよー。
 人生変えられた本というと少し違うけど、さわ子はあの瞬間から読書家への一歩を確かに踏み出したんじゃんよー?


・表紙絵のインパクトはともかく、帯の時点でもうメモしたい。
「ド嬢は自分よりも読書家になっているんじゃないか……? と不安になっている読者もいるかも知れませんが」
 まったくその通りです。

 まったくその通りだけど、おれだっておれのそばに神林しおりがいたらそうなってたよ?


・人間臨終図鑑。面白そう。
 風太郎せんせが資料として集めてたついでにこれまとめたら面白いんじゃね? と思ったからまとめたみたいな流れなんだろうか。


トルストイ!? あの有名な!
 さわ子さんドストエフスキーと区別付いてなかったりしませんか。
 中編だから読みやすいっつっても罪と罰よんだ限りじゃ改行少なめのびっちりした文体でみためより文章量多いぞ。


・死をテーマにした小説。で、個人的な読書体験が即浮かばない読書筋の衰えが悔やまれる。
 なんかあったはずなんだけどな……すぐに浮かんだのは星新一小松左京筒井康隆の御三家が「おれたちの中で最初に死ぬのは星さんだよね」「いいひとだもんな」「そんで最後まで生き残るのは筒井」「だろうなー」とか話してた通りになったねとかそのくらいだけどこれ別に小説じゃないし……。


・ダロウェイ夫人が二人の挙げている小説に似て逆パターンかな。
 意識の流れを丹念に追う手法は似通っているけど、最終的には生きる活力を得る方向で終わったと思う。
 実際んところはそれを原作にした映画の「めぐりあう時の中で」のが印象に強い。映画の方だとヴァージニア・ウルフさんが入水自殺するシーンから始まる。


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・読書家二人で交換しあっちゃってハミ子にされて拗ねるさわ子だけどこれ大事な変化だよね。
 読書家二人のやりとりにちゃんと参加意識を持ててるってことだもんな。以前なら「読書家っぽくてかっこいいな二人」で済んでたところですよ。


・現実に引き戻される神林しおり可愛くない?

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・死ぬには良い日だってことですかね。トルストイの死に方。
 若者に檄飛ばして割腹自殺した三島由紀夫とどっちがどのくらいだろう。


・近代付近の作家って自殺した作家とそうでない作家で大別できる気がしてしまう。


・しつこいくらいしゃしゃり出てくるんじゃない? と、ひねた言い方しかできない神林しおり。
 やった! と素直に言える町田さわ子。

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・年の離れた弟がいるので赤ん坊の泣き声は身近にあった。気がするんだけどあまり思い出せないな。
 観察をしたことあった気はするけど、しかしここまで透徹とした視線であったはずがなく。


・「スランプ」な町田さわ子を慰める遠藤だけど、やはりド嬢周辺の人間はド嬢が読書家たろうとしているのを応援したがっているのか。


・私は電車に乗ってると妙に読書に集中できる。環状線のある地方を割と素で羨ましく思うくらい。
 生活の中でそうした強制的な余暇があんまなくなったから読書から遠ざかってるのもあるんかなー……環境は人を作るよなー……。


・教科書にも載っているお話をなにその変な話とはなんだ。
 夜の間に壁を伝い伸び屋根裏に潜む盗賊どもに近付き匂いを漂わせてくるノウゼンカズラの描写とかまさしく小説的であり文学ではないかとか書いたけどこれ羅生門ちゃう偸盗や。


・「本を読め」という神林しおりのコマが素で泣けるんですよ。
 もう神林しおりはさわ子に対し「いいから読め!」と暴力を振るわないんですよ。
 そんなことしなくたってさわ子が読むのをもう知ってるし、彼女が持つ読書への敬意ももう理解しているのだから。
 バーナード嬢曰くという作品全体のなかでも大事な一コマになると思う。


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 ああ、読書家の友人とともにアルコールランプを読書灯に読書するさわ子の幸福げな表情をみたまえよ……。


・文学はもはや文学史となり歴史であって偉人も多く、為に読書家は名作名画への敬意も欠かさないのだ。
 礼節が紳士を作るんだよ。たぶん。
 すいませんシリーズ通してあんまみたことないのに 「ルーカスはディズニーが作ったスターウォーズを気に入ってないらしいよ」とか話題の種にしてすいません。


・コイツみたいなことを考えてしまった。
 大丈夫だよ誰の心にも町田さわ子は偏在しているから。


・おらうーたん。検索した。そうか世界最初の名探偵か……。
 一生読まないからネタバレしてもいいやって私もやったことあるな。
 正確には、このゲームは遊ばないと決意してプレイ動画でエンディングまで観たんだけど。スゲエ後悔した。
 むちゃくちゃかっこいいBGMがさ。すげえ大事なシーンで流れて、ああ実際にプレイする機会があればこれ異常の衝撃と感動を覚えただろうに、おれは自らその可能性を閉ざしてしまったのか。今生での機会を自ら潰してしまったのかとそれはもう悔やんだ。
 Heartful Cryて曲なんだけど。


・おれネタバレを忘れるのけっこう得意。
 読んでない本のネタバレなんて身につかないからいつか忘れる。て実践的でいいね。


・ネタバレはマナーとかの問題でなく、作品とその作品に触れる体験に対する敬意であって自己規範の話だと思う。
 ネタバレしてたって面白い作品は面白いのであるからに。


・青春感じゃねえよ青春そのものだよ!!!


ツノゼミ早川いくを著のへんないきもので知った。
 それ単体で本に出来る勢いなのね……。


・神林しおりの「暑い」
「燃料投下」の実例というかもはや具現化をみた。

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・あーもー神林しおりかわええよーもーなんだよ萌えマンガかよー。


推理小説ってつきあい方が割と難しいよねと叙述トリックの話。叙述トリックがすごかったんだよーとかいうとネタバレになるわけだし。
 割と小説ならではな手法になるんかな。エンタテイメント。でも映画でもそういうのはあるにはあるかとタイトルがいくつか浮かんだけど伏せておく。


・オイルランプの実証主義(?)はSF畑と捉えればいいのか推理畑と捉えればいいのか。
 なににせよ「現実はこうでした」というネタばらしもなんだか名著の匂いだ(?


・古本屋で買った本に朱引きがしてあって、しかもそれが自分の気になったところに先んじて引いてあって、読みながら気になってしょうがなく読書に集中できなくてちくしょう前のこの本の持ち主はどんなヤツだったんだとイライラしながら読み終えたら自分の蔵書印が捺してあったという井上ひさし先生の話が好き。


・お前らエブリディ読書会じゃねえか。


・学研まんがシリーズが図書室通いの一歩という本読みは少なくないはずだぜ……あと世界の偉人シリーズとか。
 あさりよしとお先生のまんがサイエンスシリーズを読んで、後々の後々にるくるくを読んでしばらくして「え。あ、まんがサイエンスのひとじゃねえかこのひと!」とか気が付いたりするよね。


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・思いつきだけで生きてるのがよくわかるトンボと戯れる町田さわ子のシーン。
 秘密の共有を持ちかけるとかしおりちゃんむっつりだわー……そのくせに積極的だわー……。


・読んでもらえないの! つって髪を振り乱す神林しおりチョーかわいくない?

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・「お茶菓子つまんでガールズトーク! 楽しそーだな!!」という絶叫にこのこの将来が垣間見えた様な気がした。


・今んとこド嬢が取り扱ってない本読みあるあるに、『なんか大事にしすぎててかえって読めない小説』ってのがある気がする。
 ルグィンの闇の左手が私にとってそこそこそれ。他芥川作品を全部読んでから読もうと決めてしまった河童と或阿呆の一生とか。

 ……別にあるあるじゃない可能性もあるな。


・沈黙映画化しますねそういえば。メル・ギブソンに自作自演マゾ映画とらせてる場合ではない。
 しかしさわしおに比べて遠藤長谷川は全然進展しねーな。


新潮文庫はyondaとか色々キャンペーン張ってて立派よね(……て思ったら2014年でもうキャンペーン終わってた
 いやべつに他出版社がキャンペーン張ってないわけでもないのだが。


高慢と偏見とゾンビとか、ごく最近な話題が入ってるとなんとなく驚くアレ。
 作品と現実とが地続きに思えて少し不意を討たれる感じの。


・たぶん今頃アメリカには(名著)とゾンビてタイトルの本が豪華客船を沈ませかねない勢いで量産されているのだろう。
 あるいはそれの結実が高慢と偏見とゾンビなのだろうか。


・大丈夫だよ神林ちゃん世の中にはそれで結局アンドロイドが電気羊の夢をみるのかどうなのか知らないのにタイトルに借用したり、
 たった一つの冴えた方法がなんなのか知らないまんまタイトルに借用したりする’同人作家とかザラにいるから。


・なんとなく古本屋さんの文庫棚を眺めてるときに目に付いたらどうせ100円やそこらだし何冊も重複買ってたりする本があったりしませんか。
 私にはありました。古橋秀之ブラックロッドという電撃文庫です。


・膝を折って古本屋の棚を凝視する神林しおり以上に神林しおりらしい可愛らしさに満ちた存在があろうか。

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・本の価値はただの流通価値だからねー。
 どんだけ素晴らしい思想の書かれた本であっても必要なのは紙代と印刷代と流通費用だけってのはなんだかなんとも。


・さわ子の読書家っぽく振る舞いたい話も久々な気がする。
 それこそ「本の価値は自分で決める!」というしおりの反応と同じエピソードに収められていて好対照である。


・ガチ古書店新古書店と違って、古書店には「たくさん印刷されてない専門書の流通を助ける」て作用があるからね。
 古本屋が存在する限り、その本はいつかは必要とされている人のところへ届くのよ。そのあたりの話も過去の話になりつつあるけども。


・古本屋でこの本の値段いくらだろうと背表紙をみたら登場人物一覧の一人に赤線が引いてあったのはみたことある。買わなかったけど。
 図書館で借りた本に同じく登場人物に赤丸が書かれてて、オイオイ公共物だぜと思ながら読み終えたけど犯人でもなんでもなかったという体験談を聞いたことならある。


・それ面白いです。と感想を述べるだけに済ませてる長谷川さんかわいくない?

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グレゴリ青山というひとの書いた古本屋バイト体験談マンガに「仕入れてきてとりあえず積んであるだけの本にお客さんが群がってくるのはなんで?」てネタがあったね。
 店員からしてみてもあるある話なのか。


・雪国とぽっぽ屋がおれのなかで混ざってる。どっちも読んだことない。


・地の文っていいよなー……。


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・ 冷えた神林しおりの手を町田さわ子が暖めたというお話は微笑ましくみえる一方で、看過しがたいほの寂しさを感じるのは私だけだろうか。

 しばらくずっとさわ子としおりという関係が描かれたこのマンガにおいて、忘れものを取りにその場を去るという偶発時により神林しおりは久々の孤独を得る。

 読書は体験で、その読書をした環境もまた体験であり思い出である。
 より純粋な、書物の魅力に耽るならば環境という可変な要素は雑味であるかも知れないけれど。

 それだとしても、峻厳な世界を描く小説と、かじかむ手とを重ねてみる神林はその小説世界に浸り、一体化している。
 その瞬間の神林しおりは、読者と物語とが同化した純粋な存在のようにみえる。
 しかし、そこに差し伸べられ包む手は、神林しおりを現実に引き戻し、物語から引きはがし、その暖かさでもってしおりと文学との結合を融解させる手である。
 一時的にではあれ純粋な文学少女となっていた神林しおりの純潔が侵された瞬間でもある。

 その後の、表紙について熱く語るしおりに理解を示さないさわ子という構図もなんだか示唆的だ。

 読書というのは常に個的な体験であって、本を読んでいる最中の人々は常に孤独だ。
 純粋な読書というものは孤独でなければできない。
 例えば読書会のような感想の交換もまた豊かな体験ではあるけれど、そうして自分以外の感想とまざりあった感想は、純粋ではなくなるとも言える。
 無論その純粋に価値があるかどうかは別問題として。
「バスが来たよ!」という、帰路を指す一言でエピソードが終えられるのもなんだか象徴的ではないか。

 理解し合えないこと。共有の出来ないもの。そうした根本的とも言えるものを描いた様に思えるこのエピソードは、
 確かに冷たく寂しい出来事ではあるけれど、孤独というものがもつ価値もまた噛みしめねばならない。

・要するに純潔が汚されたエロいシーンだよねといいたい。


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ちくま文庫の表紙っていいよねー。と思いつつきょとんとしてた私を納得させるオチ。
 緩急もあって今巻で一番笑ったシーンになるかも。