八九式中戦車のしっぽがかわいいという話。

 おれはおとこのなのにロボットの魅力がいまいちわかんないんだけど。
 それをそのまんま放言すると傷付くひとがけっこーいるんだなということに最近気がつきましたがそれはともかくとして八九式中戦車のしっぽがカワイイという話をしたいと思います。


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 この部分。尻尾。カワイイ。なぜ八九式がアヒルさんチームなのか説明不要な可愛らしさ。
 八九式というと、ガルパンを鈍色(というとても大事な色!)に彩る数多くの登場車両のなかでもたぶんブッチギリに最弱な戦車だろうけど。このかわいらしいパーツははっきゅんが最弱であることもまた象徴してたりする(はず。

 正式には尾体(尾橇)と呼ばれる部位だそうで、塹壕を乗り越えやすくするための引っかかりとして付けられたのが主な目的だそうな。
 塹壕ってのは戦場において即席籠城というか、弾丸を避けたり、それそのものを障害物にする為などに掘られる溝のことね。
 塹壕越えの為に付けられた部分ってことは、戦車の誕生そのものに密接な関わりを持つ部位ということ。第一次世界大戦にまでさかのぼるお話になってきますが順を追ってお話をしていきますと。

 戦争の歴史は兵器の歴史。新たな兵器が生まれることでそれの対策としてまた新たな戦術や兵器が生まれて戦場を塗り替えしあうイタチごっこ。
 で。一次大戦をまずでっかく塗り替えたのは、大戦直前に大量生産が可能になった機関銃という存在だった。コイツがまず戦場を穴ぼこだらけにする。
 弾痕で穴ぼこという意味でもあるけれど、当たれば即死な弾幕を途切れなく張れるマシンガンなんぞという兵器のせいで、その射線から逃れるためにもとにかく塹壕を掘らなきゃならなくなった。
 今も昔も塹壕は防衛の基本ではあるけれど、ことに一次大戦は塹壕の戦争で、モグラの戦争なんて記述をどっかで読んだ気がするほどの勢い。
 元々塹壕は弾丸だけでなく、騎馬の突撃なども防ぐ障害物みたいな意味合いもあったみたいだけど、それを乗り越えようとしたらマシンガンの雨が降ってくるのだから相性は最悪だ。
 人だろうが馬だろうが人海戦術なんて無意味にダカダカダカダカと音が鳴れ鳴ればパタパタパタパタと人が死ぬ死ぬ死ぬ。
 生身じゃ攻略なんてもうどうやったって無理。
 だから、機関銃をはじける鋼板を、塹壕だの鉄条網だのをもりもり乗り越えて進める無限軌道に乗っけて突き進める兵器が生み出された。
 それが菱形戦車ことマークⅠちゃん。

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 このフォルムでオスとメスが存在するってのがまたかわいいんだけどその話はおいといて。幾たびかの改修を経る必要はあったり、搭乗員の苦難だとかを置いとけば対塹壕戦において相当な効力を発揮したらしい。その威容は各国に影響を与えて同時進行的に開発が進む。その結果、「先陣切って要所に突き進むなら大砲があった方がよくね?」だの「敗走する敵を追うために騎馬と同等の速度がほしい」だの「指揮官のっけるなら回転砲塔があれば万全じゃね?」などの用兵上のニーズに十分応えうるポテンシャルを有していた戦車という兵器は、ただの塹壕突破兵器に留まらず、戦場の主役そのものへと変容していく。

 というのが一次大戦付近のお話。ガルパンの登場車両は主に二次大戦なのでそこの話をしなきゃなりません。
 で。機関銃の脅威が鉄の装甲と大砲とをエンジンに乗っけて突き進む「戦車というバケモノ」を生んだように、歴史の必然はこのバケモノを退治すべく兵器も産み落とします。
 しかしてそれもまた戦車だった。

 二次大戦下において、戦車の役割や性能は対戦車という形でシェイプアップされていく。
 高速で移動できて、盾にもなり、陣容を破壊し敵兵を蹴散らし攻撃の先鞭ともなれる戦車はいうなれば防衛においても侵攻においても戦場の主役といえた。過言を承知でいうと、戦術や戦略という言葉はどうやって戦車を動かしてどうやって戦車を倒しどうやって戦車を活かすかという意味に取って代わられる部分さえあった。そうなるともう戦車誕生当初の目的であった「塹壕突破兵器」てのは二次的三次的な役目となっていた。
 それもまあ当然の話ではある。戦争は人類の技術を猛烈に加速させるお祭り騒ぎでもある。
 一次大戦で求められた役割なんてのは、それはもう恐ろしい勢いで古ぼけて化石じみた概念になるのも当たり前なのである。

 ということでまとめると。塹壕突破用のパーツなんか持ってる八九式ちゃんはその化石じみた概念ということである(わー。
 正確に言うと八九式中戦車ちゃんのあの尻尾はそのくらいの勢いでとっくに廃れた戦術を未だに引きずってる極めて前時代的な遺物のようなパーツであって。
 あの尻尾ひとつで、八九式がどれだけ時代遅れな戦車なのかそのものを象徴しているといえるのである。
 マジカワイイ。

 尻尾てのは人類も進化のさなかになくしたものだよな。尾てい骨。
 ついでに、オタマジャクシがカエルとして成熟するとしっぽがなくなったりするし、未だにしっぽを引きずってるのはそれこそ進化できてないというイメージそのままなのがなんだか面白いところだけど。

 史実においてもあんまし意味なかったらしいねあの尻尾。荷物置きとしては便利だったって話があるけど。
 そんなマジカワイイ尻尾だけど、プラウダ戦での「おっとっとぉ」てシーンではまさかの活躍をみせたよね。

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 そりがひしゃげてるのがおわかり頂けるでしょうか。健気さに涙出るね。

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 そしてマウスから降りるときのがりがりがりっぷりとか。さすがガルパンガルパンはさすがだとしか言いようがありません。